よるべなく 寄る辺なく 夜辺泣く


入学式は無難に終わり次の日。
秀徳には約1週間の仮入部期間というものがあり、その間は新入生は自由に様々な部活に参加することが出来る。もちろん真ちゃんのように、特定のスポーツで推薦入学をした者は除くが。
その期間でいろいろな部活を体験して、自分の入る部活をじっくり選ぶためらしい。

もちろん私は、男バスにマネージャーとして仮入部する。初日の今日、バスケ部用の体育館に真ちゃんと顔を出すと、さすが強豪校だけあってそこにはたくさんの新入生がいた。

先輩たちの案内をうけて他の新入生と一緒に並ぶと、部活についての軽い説明があった。そこから選手とマネージャーは別行動だ。

マネージャー希望の子は他にも2人おり、違うクラスだが仲良くなれそうだ。
マネージャーといえば、1つ気になる点があった。

先輩マネージャーがいないのだ。

強豪校だしたくさんマネージャーがいるものかと思っていたから、少し驚いた。よっぽど仕事がキツイのかな?と思ったが主将の男の人に貰った仕事表を見ると、量は確かに多いが決してこなせない量ではなかった。
なんでだろうね、とマネージャー希望の子と顔を見合わせて首をひねる。

先輩マネージャーがいないのは不思議だが、それならそれでその分頑張るしかない。2人ともマネージャーは初めてらしく、名前ちゃん色々教えてね、と頼られて少し嬉しくなった。

だが先輩マネージャーがいない理由は、すぐに分かった。

「おい1年、早くドリンク用意しろ、轢くぞ。」

金髪高身長、加えて目つきと口が悪いこの人は宮地先輩というらしい。
幸い私はマネ経験者なので仕事にもまだ対応できたが、2人は初心者だ。
あの先輩が求めている速さで仕事は出来ない。
練習風景をちらりと見れば、あの先輩は別にマネージャーだけに厳しく言っているわけではなくて、後輩にも厳しいのは分かった。

でも女子にまで轢くとか焼くとか暴言を吐くのはどうかと思う。2人とも半泣きだ。慰めようとしたら私まで怒られた。
きっと先輩マネージャーたちもこの人が怖くて辞めたのだろう。私はそう確信した。

後に大坪主将の発言により、私のこの確信が正しかったことが分かるのだが、それはまた先の話。

とりあえず、私の宮地先輩への印象はかなり最悪だった。

結局、仮入部期間の1週間で残ったのは私だけだった。
実際私も宮地先輩の暴言に心が何度も折れたけど、真ちゃんの練習姿や3Pシュートを見てなんとか心を回復させていた。真ちゃんは偉大だ。


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