じわりじわりと来たものは


先輩に渡してもらおう作戦は無難に成功した。元々先輩たちは赤司に好意を持っているようだったし、赤司も人当たりのいい奴だ。何も問題はなかった。ただ、

「名字、」

「あ、虹村先輩。お疲れ様です。」

「お前赤司と喧嘩したの。」

「え、」

「お前ら普段仲いいじゃん。付き合ってんの?」

そう言われて、思わず目眩がした。まさか虹村先輩にもそういう認識をされていたとは。しかも付き合ってるのかとまで聞かれた。
つまり私たちは傍からみたらよほど親しげに見えているのだろう。そりゃ呼び出しも喰らうわ。この分だとほかにも同じことを思っている部員がいそうだ。

「いえ、赤司とは小学校が一緒なんです。」

「へー。」

これを言うのはもうこれで何度目だろうか。そしてきっとこれからも言う羽目になるだろう。面倒くさいにも程がある。

「そうそう、お前に頼みたいことがあるんだけどよ。」

「はい、なんでしょう。」

虹村先輩の頼み!
私は少しドキっとした。虹村先輩が直々に頼んでくるなんて、一体何の用だろう。私に出来ることならなんでもしたい。そういう気持ちだった。
が、

「灰崎の面倒、見てやってくんね?」

「…は?」

先輩、今なんて言いましたか。


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