駆け落ちるサイレン


「じゃあ今日はここまでとする。あとは各自、体を休めるように。」

「「「お疲れ様でした!!」」」

大坪主将のこの一言で練習は締めくくられた。
今日はゴールデンウィークの最終日ということで午後から体育館の調整がある。この連休の練習はとてもハードだったので体を休める目的にはもってこいだ。

「ごめん真ちゃん、今日先帰るね。」

今は正午だが、体育館が調整のために立ち入れなくなるのは3時だ。よってそれまでの居残り練は可能である。もちろん真ちゃんたちは居残り練をしようとしていた。ただ、いつもは私も一緒に残るが今日は別だ。

「珍しいな。なにか用事か。」

「うん。」

「おい名字。」

「宮地先輩、」

「さっさと片付けろ、置いてくぞ。」

「あ、はい!じゃあ真ちゃんまた明日!」

「待て!」

急いで帰る支度をしないと宮地先輩に怒られると思い、更衣室に向かおうとすれば、思いっきり真ちゃんに腕を掴まれた。真ちゃん握力やばい痛い。

「…宮地先輩と、どこか行くのか。」

「うん、みゆみゆのコンサート!」

そう、今日は夕方からみゆみゆの所属するグループのコンサートがあるのだ。倍率は凄く高かったがダメ元で応募したら奇跡的に当たった。神に感謝である。
当たったのはペアチケットだったので、他にみゆみゆ好きな人を知らなかった私は宮地先輩にメールで行けるかどうかを聞いてみた。するとわずか数秒後に、行く!!!!と返ってきたため一緒に行くことになったのである。ちなみにお礼として宮地先輩は今度なにか奢ってくれるらしい。楽しみ。

「…それは、宮地先輩と2人でか。」

「?そうだけど。」

「…そうか。」

「いたたたた!真ちゃん、腕!腕!」

ギリっと腕を掴む力が強くなった。真ちゃんの目は伏せられている。もしかして嫉妬?と一瞬思ったが、アイドルのコンサートだしそれはないだろう。

「…すまん。」

そう謝った真ちゃんは、珍しく感情の読めない顔をしていた。うん、やはり嫉妬ではなさそうだ。じゃあなんだ?
私は疑問に思いつつも、じゃあねと言って、宮地先輩を待たせている所へと走った。
今日の真ちゃんは不思議だ。


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