嫌よ嫌よも好きの憂い


待ちに待った入学式。私は家を出た瞬間、手で顔をおおった。

「し、真ちゃん…!学ランかっこよすぎか……!!」

「朝からなんだ。」

声を殺して叫ぶ私を、真ちゃんは蔑んだような目で見るが気にしない。むしろ学ランが似合いすぎている真ちゃんが悪い。
真ちゃんの学ラン姿はまさに暴力だった。視界の。帝光のブレザーも素敵だったが、やはり学ランは男子学生の魅力を最大限に引き出している。まして真ちゃんが着ているとなると、もはや魅力とかいう次元ではない気がする。とにかく格好いい。

そうこう悶絶していると、お互いの親が家から出てきたので、一緒に秀徳へと向かうことにする。
秀徳は家から電車で数駅乗ったところにある。門をくぐると桜が咲き乱れていた。うん、桜を背景に立つと真ちゃん、とても絵になる。
親とは一旦ここで別れ、私と真ちゃんはクラス分けの掲示を見に行った。

「えっ!嘘!!!」

「いきなり大声を出すな。」

これが叫ばずにいられるか。私と真ちゃんはクラスが別だった。しかも距離が一番遠い、端と端のクラス。

「なんでよりによって端と端なの…。絶望しかない。」

「大げさだ。」

「死活問題。」

「中学でも別のクラスになったことがあるだろう。」

「だって端と端だよ!?休み時間に真ちゃんの所へ行っても、移動に時間がかかるから少ししか話せない!!」

「来なくていいのだよ。」

「私が行きたいの。真ちゃんに会いたいの。真ちゃんも私がいないと寂しくない?」

「全く。」

「寂しくて泣いたりしない?」

「全く。」

「とか言いつつも?」

「しつこいぞ。」

「ごめんね愛してるよ。」

「本当にお前は腹立たしいな。大体、どうせ俺と同じ部活に入るのだろう。だから…」

「だから…?」

今までの声調から一転、急に言葉を濁す真ちゃん。不思議に思って真ちゃんを見上げると、一瞬私から目線をそらして、そして中指でカチャリと眼鏡をかけなおした。あ、この仕草好き。

「だから…、毎日たくさん会うことが出来るだろう。落ち込むな。」

一瞬思考が停止して、言葉の意味を理解して、そして私は真ちゃんの腰に頭を突撃させた。痛いのだよ!という声をスルーして額を学ランに押付ければ、真新しいの生地の匂いがした。

全く、真ちゃんのツンデレは相も変わらず破壊力抜群だ。

「…真ちゃん結婚しよう。」

「断る。」

「デレの後のツンも好きだよ。」

「死ね。」

自分の発した言葉の意味に気づいたらしい真ちゃんの頬は、少し赤くなっている。朝から貴重なデレが見られたし、案外クラスが遠くてもやっていけるかもしれない。そうだよ私は単純だよ。


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