正解のあるわたしたち


結局、米をもう一度加えて真ちゃんにとぎなおしてもらった。真ちゃんはたどたどしくも米を研ぐのに成功し、とりあえず来週の調理実習での仕事を1つ確保できた。

ちなみに今回の食材は全部真ちゃんが買ったものである。私と高尾くんは3人で割り勘しようと言ったが、真ちゃんが自分の練習用に買うのだからと譲らなかった。
真ちゃんはラッキーアイテムへの散財っぷりから見ても分かる通りお金持ちである。なので真ちゃんが失敗してもやり直せるように、食材は本来必要な量の倍ほど買っている。

「真ちゃんに包丁は使わせれないから、野菜と鶏肉は私らで先切っちゃおか。」

「おう。」

高尾くんにピーマンを渡して私は玉ねぎを切る。鼻の奥がツンとするがここは我慢だ。真ちゃんは黙って私の手元を見ている。

「つか名字ちゃんって料理出来んの?」

「まあ一通りは出来るかな、味とかは普通だけど。」

「……名字の料理はうまいのだよ。」

「…は?」

「ブッフォww突然のデレwwww」

「ちょ、え、は、待って、今真ちゃんなんて言った!真ちゃん私の料理のこと美味しいって思ってんの!??とりあえずもっかい言って!!もっかい言って真ちゃん!!!!」

「包丁持ったままこっちを向くな危ないのだよ!!」

まじか!確かに真ちゃんには何回か手料理を食べてもらったことあるけど美味しいと思ってくれてたんだ!!うおおおおテンション上がってきた!ダダダダと今までの三倍速で玉ねぎを切る。

「よっしゃ次は鶏肉切るよ!」

「名字ちゃん切るのはっや!」

「真ちゃんパワー!」

鶏肉も普段の倍速以上で切った。今の私なら3分クッキングで大活躍出来るだろう。
高尾くんもピーマンを切り終わり、次は炒める作業だ。これは真ちゃんにやらせてみる。

「真ちゃんフライパンに油入れて。」

「…っ、」

「ちょ!入れすぎ入れすぎ!」

力んだ様子でドボボボと油を注ぐ真ちゃんを慌ててとめる。フライパンには天ぷらが出来るぐらいの量の油が溜まっていた。

「難しいのだよ。」

「こういう時は、1回小皿に油を入れてキッチンペーパーに吸わせるんだよ。そしてキッチンペーパーを箸でつまんでフライパンを軽くなでる。ほら、やってみて。」

「なるほど…。」

「すげえな、主婦の知恵って感じ。」

やり方を説明して真ちゃんにやらせてみる。真ちゃんは恐る恐るといった感じだったが、無事油を引くことが出来た。

その後も丁寧に一つ一つ説明することにより、野菜と鶏肉を炒めてご飯を加えるところまで成功し、チキンライスが完成した。米炊きとチキンライス作りが出来れば調理実習での役割は充分果たせるだろう。そう判断した私たちは、残りの工程を2人で済ませ、無事に3人前のオムライスを作り上げた。

「いえーい!完成!」

「なんかやり遂げた感半端ねえ。」

「よし食べよう!」

机に3人分の食器とオムライスを並べ、いただきますと手を合わせて食べる。うん、ちゃんとオムライスの味だ。

「自分で作ったライス部分の味はどう?」

「なかなかなのだよ。」

オムライスを食べる真ちゃんは心なしか笑っているように見えた。やっぱり自分で作った分思い入れもあるのだろう。嬉しそうに食べる真ちゃんを見て私もなんだか嬉しくなる。
あとは、来週の調理実習でいい結果を聞くのを待つだけだ。



そして1週間後。調理実習で真ちゃんは無事に自分の役割を果たせたらしい。高尾くんから報告を聞いた私は思わず笑顔になった。


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