「いや、退部はないよ。」 赤司の言葉に、私は項垂れていた頭を思いっきりあげた。 「…は?」 「監督や虹村先輩に伝えたのは別に退部を促す目的ではない。今回は灰崎にも非があるし、お前だけが退部になるということはないよ。」 「…まじかあ。」 退部はない、と言葉で張り詰めていた気が緩んで私は肺の奥から息を吐いた。安心のあまり少しだけ体の力が抜ける。良かった、私はまだ部活に居れるんだ。 「絶対退部だと思ってた。」 「安心してる様子から見るに、名字は随分バスケ部を好いているようだね。」 「あー…、そうなのかも。」 入るきっかけは強制的なものだったが、今や私はだいぶとバスケ部に愛着を持っていた。なにかを真剣に頑張っている人を支えるのはとてもやりがいがあるし、なによりバスケをするみんなはかっこいい。マネージャー業に対して嫌と思うことはなかった。 「とりあえず、反省文を書け。」 「うん。」 赤司に促されて私は書きかけの反省文を書き始める。先程よりかは幾分と落ち着いた気持ちで書き進めることが出来た。 それにしても、赤司がここにいるのはやはり私が反省文を書く見張りのためなのだろうか。だとしたら物凄く申し訳がない。夏に向けて日が長くなっているとはいえ部活が終わってしばらくたつ今、外はもう暗闇だった。 「ごめんね赤司。こんなことにこんな時間まで付き合わせて。」 「構わないよ。俺が自ら申し出たことだ。」 「は?」 「この間の体育大会に褒美をやると言っただろう。欲しいものを聞こうと思ってね。」 「あ、」 すっかり忘れていた。 ぶっちゃけ言うと1位をとれた喜びでもう褒美などは無くてもいいのだが、赤司の目を見る限り今更いらないとは言えなさそうだ。うん、どうしよう。 ← → 戻る |