星のようにきらきらと


あれから放課後。私は真ちゃんと二人乗りをして帰ることになった。

真ちゃんはずっと渋っていたが、私が眉を寄せて不機嫌な顔を作ると「………仕方ないのだよ。」と頷いた。本当つくづく私は悪女だ。ごめんね真ちゃん。

私は元々二人乗りにあこがれを持っていた。しかし、中学も高校も徒歩通学なのでその夢は叶わなかった。 そしていよいよ今日、その憧れを実行できるのだ。しかも大好きな大好きな真ちゃんと!嬉しいことこの上ない。今ならわくわくで空をも飛べる。なんなら舞う。

部活が終わり、私はこの間の練習試合の後に、学校の駐輪場に置いていた自分の自転車をとりにいく。真ちゃんは黙って私の後ろをついてきた。練習後の疲れた体に二人乗りは申し訳ない気もするが、駅までの短い距離なのでここは少し真ちゃんに頑張ってもらおうと思う。
とにかく私は真ちゃんと青春がしたいのだ。この機会を逃したら私は永遠に真ちゃんと二人乗りをできない気がする。今日こそ私は夢を叶える!

自転車を出して真ちゃんの長い脚に合うようにサドルを引き上げた。
私は荷台に跨り、サドルをバシバシ叩いて真ちゃんに乗るように促す。真ちゃんは渋々といった表情でサドルに腰をおろした。

「うっ…ひゃあ!真ちゃん背中広いね!かっこいい!」

「いいから黙ってつかまるのだよ。」

「え…やだ…なにその台詞死ぬほどかっこいい鼻血出そう。」

「出したら落とす。」

「冷たい!」

落とされたくない私は真ちゃんの広い背中にビタっとくっつく。真ちゃんはそれを確認して自転車を漕ぎ出した。オオオオオ進んでるめっちゃ安定してるやばい真ちゃんやばい。てかよくよく考えれば自転車を漕ぐ真ちゃんって超貴重だな。よっしゃ明日高尾くんにめちゃくちゃ自慢しよう。
真ちゃんもしかして二人乗り出来ないんじゃ…と乗る前に少し心配もしていたが、実際はそんなこともなく自転車はスイスイと進む。真ちゃんの背中が広いせいで前はほとんど見えないが、風がとても気持ち良かった。

「ほあー、真ちゃん二人乗りうまいね!」

「ふん、これぐらい余裕だ。」

「もしかして、ほかに誰かとやったことあったり?」

「…そんなことはない。」


お前が初めてだ。

少し小声でそう言った真ちゃんに私は殺されかける。初めてって!初めてって!なんていい響きなんだ!!!!!
あまりの萌え度にグゥオオオォと声にならない声で唸っていると、真ちゃんに気持ちが悪いのだよと一掃された。割と本気で振り落とされそうな雰囲気が真ちゃんから出ていたので、私は必死で声を殺す。落とされてたまるか。この時間を終わらせてたまるか。

部活後のため、もう日は沈んでいてあたりは真っ暗だ。漫画のように夕暮れの中の二人乗りとはいかなかったが、それでも私は充分満足だった。うん、気分は最高である。
元々閑散としている所なのであたりに人はいなかった。街灯に照らされてぼんやりと見える景色は、次々と後ろへ移っていく。

なんとなく、私は真ちゃんに言いたくなった。


「真ちゃん。」

「なんだ。」

「好きだよ。」

「…そうか。」

真ちゃんの顔は見えないけど、声は満更でもなさそうだった。

うん、やっぱり二人乗りはいい。



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