そして夜明けがやってくる


第一走者の子が私へ向かって走ってくる。走る距離は1人辺り100メートル。あっと言う間にバトンが私に手渡された。2位だった。

私は必死に走った。人が走るのを見てると短く感じた100メートルは、自分が走ると長く感じる。
目の前にいるのは1人だ。全力で足を動かせば少しずつ距離は狭まってくる。

この子を抜かせば、この子より前に出れば、

「っ、は!」

手を伸ばして第三走者の子にバトンを渡す。そして私は減速しながらコースを逸れた。

「……うわ。」

1位だった。バトンを渡す直前で前の子を抜かしたのだ。
足は疲れて力が入らないし肺は苦しいし脇腹は痛いし息はあがっている。でも、すごく嬉しい。ジュースや褒美もあるけど、それ以上に勝ったということが嬉しかった。
コースの方を見れば、第三走者の子からアンカーへとバトンが渡っていた。順位は1位のままだ。アンカーの子は陸上部の中でも足が速い子なので、順位を維持したままゴールテープを切る。白団の応援席から大きな歓声が聞こえた。




「名字さん、おつかれ!」

退場するとき、アンカーを走った子にそう声をかけられる。そっちもね、と返すとハイタッチを求められた。一応それに応えたが、なんだかむず痒い気持ちになった。苦手な体育会系のノリな筈なのに。

あれから、2年と3年の女子、そして男子の団対抗リレーが行われた。白団はすべてのリレーでかなりいい順位をとった。得点盤は閉会式の優勝発表のために隠されているが、なかなかの高得点が加わっただろう。優勝も充分狙えるはずだ。

テントに帰りすごかったよ!とさつきちゃんに褒められいい気分になっていると、こっちを見ていた赤司と目が合った。
さつきちゃんのおかげで気分の良い私は赤司に笑顔を向ける。すると赤司は少しだけ面食らった顔をしていた。それが珍しくて私はなんだか面白い気持ちになる。

初めての体育大会は、予想外のこともあったけどいいものだった。そして私にとって、少しなにかが変わった気がした。

ちなみに白団は優勝した。


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