不幸は認めてかぶるもの


「え!名前ちゃん、リレーに出るの?」

「…うん。」

結局、出ることになった。絶望しかないし赤司本当怖い。あの威圧感はもはや人間が持つ威圧感じゃない。もうあいつのことは魔王って呼ぼう、心の中で。
ちなみに私は第二走者だ。アンカーじゃないだけマシ、とポジティブに考えることにする。じゃないとやってらんない。

「じゃあ、私名前ちゃんのこと一番応援するね!」

「さつきちゃん…!」

頑張れ!と励ましてくれるさつきちゃんに、心底元気づけられる。さっきまで魔王赤司を相手していた落差もあって天使にしか見えない。
感動していると、放送がなった。

『団対抗リレーに出場する者は入場門に集合してください。』

来た。さつきちゃんの応援を背に受けて、私は入場門へと歩いていく。入場門の所には、同じクラスでリレーに出る子達が、すでに全員そろっていた。
「名字さん、頑張ろうね。」「もし駄目だっても誰も責めないよ。」「そうだよ、リラックスしていこう!」と、リレーに出るクラスの子たちが口々に私を励ましてくれる。どうやら私の周りにはいい人が多いようだ。本当恵まれている。

入場の音楽と共にまず女子が入場する。リレーは1年から行われるので出番は一番最初だ。
体育委員の誘導でスタートラインに立たされると途端に心音が激しくなる。クラスの子たちは気にしなくていいと言ってくれたが、私には1位をとらなきゃいけない理由があった。

先ほど、リレーに出場決定させられた後、赤司と交わした会話を思い出す。


「もしかして、これってあのジュースの勝負にも関係すんの?」

「ああ。部活対抗リレーと同じように、次の走者にバトンが渡った時点の順位だろうね。」

「は、マジか。ちょっと出場キャンセルしてくるわ。」

「それは許さない。」

「なんで無理やりリレーに出さされた上ジュースまで奢らなきゃいけないの!」

「1位をとればいい話だろう。」

「無茶言うな!大体私が出るメリットなさすぎだし。」

「そうか、じゃあ1位を取れたら何か褒美をあげようか。」

「…褒美?」

「なんでもいいよ。」

「…上等。」


ここまで来たら絶対1位をとって、赤司に滅茶苦茶に高い何かを奢らせてやる。どうせ赤司は金持ちなんだから、多少値が張るものでも買ってくれるだろう。
もう私は開き直っていた。

そして、スタートの銃声が聞こえた。


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