「…は?」 それは突然だった。 私のクラスでアクシデントが起きた。団対抗リレーに出る子が、その直前にあった騎馬戦で落ちて足を痛めたのだ。その子は陸上部であり、痛めた足でリレーに出ると、来週あるらしい試合に影響してしまうので、リレーには棄権するらしい。まあ別にそれに対しての不満はない。体育大会より部活を優先するのは当たり前だと思う。 「だからさ!うちのクラスで、もう徒競走とリレーに出た子らの次に足速いの名字さんじゃん!代役で出てほしいの!」 問題はこれだ。 棄権した者がいる場合、同じクラスの者に限り代役をたてることが出来るという規則がある。これは分かる。 そして、徒競走と部活対抗リレーに一度出た者は団対抗リレーに出られないという規則がある。これが分からない。別に速い子が何回走ってもいいだろう。この規則決めた奴ちょっと出てこい、殴らせろ。一体誰が得するんだこんな規則。 「いや、ごめんね、私リレーはちょっと…。」 「そんなこと言わずに!ね!ね!」 「ほんとさ、駄目なんだって…。」 「お願い!」 もう、ああ?と言う感じである。殴りかからない私を誰か褒めてほしい。だから顔が怖くなっているのは少し目をつぶってもらおう。 さっきからずっとこのやりとりを5分を続けている。長いししつこい。嫌なものは嫌なのにしつこい。私じゃないといけないわけじゃないのだから、違う子に頼んでほしい。 「俺も名字が出ることに賛成だね。」 「は?」 「あ、赤司くん!」 こいつは突然なんなんだ。てかお前今なんて言った。どこからかいきなり現れた赤司を私は思いっきり睨む、が当の本人は涼しい顔をしてどこ吹く風である。畜生。 「名字は俺が説得しておくから、 君はもう応援席に戻っていいよ。」 「う、うん!ありがとう赤司くん!」 もう一度言おう。は? 私をずっと説得しようとしていた女の子はテントの下に走っていく。赤司は改めて私の方を見た。 「名字、」 「出ないから絶対。他の子あたって。」 「うちの団は今、2位だ。このクラスの団対抗リレーに出られる女子のうち一番足が速いのはお前だろう。」 なんで知ってるの。赤司の目が私の目を射抜くように見ていて、目を逸らしたいのに逸らせない。私はバスケ部に勧誘された日のことを思い出していた。そうだ、あの時もこいつはこんな目をしていて、そして私は、 「1位を目指すためにはお前が出る必要がある。」 バスケ部の勧誘を断ることが出来なかったのだ。 「名字、出てくれ。」 勘弁してくれ本当に。 赤司相手だと怒ることも断ることも出来やしないんだから。 ← → 戻る |