私どうして此処にいるの


今日は実力テストがあった。 そして部活は自主練だ。マネージャーは参加するも参加しないも自由だし、今日は部活には参加せずに家に帰ろうと思った。そして靴箱へ来たのだが。

「えぇ…」

靴箱を開けると靴の上に手紙が入っていた。シンプルな白い封筒。中を開けると、伝えたいことがあるので体育館横の倉庫に来てください、と書いてあった。一見ただのラブレターに見える。しかし手紙に書いてある文字は女子らしい丸文字だった。確実に女子からの呼び出しである。嫌な予感しかしない。
しかし無視すると余計にめんどくさいことになる気がする。とりあえず行ってみるか、と指定された場所に向かうことにした。


体育館横の倉庫についた。この辺りはあまり人が来ない場所だ。なので告白や呼び出しの場所としてよく使われる、と噂で聞いたことがある。まさか自分が呼び出される側になるとは思っていなかった。

倉庫の扉は開いていた。恐る恐る中を覗いてみるが、人の気配はしなかった。中は埃っぽく、今は使われていないであろう道具たちが収納されている。物置みたいだ。倉庫の前で少し待ってみたが、人が来る気配はなかった。仕方ない。中に入るしかないのか、と思った。

私は荷物を扉の前に置いて少しだけ中に入った。扉の横にある電気のスイッチを押す。時間差で電気がついた。倉庫内を見渡すがやはり人の気配はしない。ただの悪戯の手紙だったのかな、と思い倉庫から出ようとした。

「え?」

「ばーか」

後ろに人がいた。女子だった。どん、と肩を押されてよろける。いきなりのことで反応できなかった。
鈍い金属の音が聞こえた。扉が閉められる、と気づいた時にはもう遅くて。がちゃん、と音が響いて扉は閉じられた。咄嗟に扉に駆け寄って、扉を開けようとするが開かない。閉じ込められた、という言葉が頭の中を駆け巡った。
扉に耳を寄せるとクスクスと複数人の笑い声が聞こえた。やりすぎだって、良い気味じゃない?、なんて言って笑っている。そして足音ともに人の気配が去っていった。……嘘だろおい。

「はあ…」

警戒はしていたし怪しいとは思っていた。それでも足りなかった。落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせるように唱える。
私のことを押してきた女子、それは予想通りというかなんというか、同じ調理担当の女子だった。紫原のことをおそらく好きな女子だ。プール掃除の日から教室でもチラチラ見られてると思ったんだよ。あの野郎。

私はぐっと扉を引っ張る。しかし扉はびくともしなかった。扉は重い金属で出来ていて、鍵は確かかんぬきのようなタイプだったはず。古くて錆びているし思いっきり蹴ったり体当たりをすればもしかしたら鍵が外れるかもしれない。そう思って扉を蹴り飛ばしてみたが、けたたましい音が鳴るだけで開く気配はなかった。
私は諦めて倉庫の中を見渡した。電気がついているおかげで怖さはあまり感じない。物が雑多に積まれているが崩れてくる心配もなさそうだ。倉庫の奥の壁、その上の方に小窓がついていた。近づいて見てみると、小窓は手を伸ばせば届く高さにあった。くぐれば外に出れそうな大きさの窓だ。鍵を開けようとしたけど錆び付いていて開かなかった。詰んだ。

とりあえず、最悪の手段として、この窓を割れば外に出れる。見た感じガラスで出来ているし、倉庫の中にあるものを使えばすぐに叩き割れるだろう。ただ、いくら閉じ込められたとはいえ勝手に窓を割ればきっと騒ぎになるだろう。大事になるのは嫌だなと思った。

「はぁ…」

ため息しか出ない。窓を叩き割って騒ぎになれば、きっと赤司の耳にも話が入る。このことを赤司に知られたくないと思った。本当私、何回こういう状況に陥るんだよ。しかも今回の件に関しては赤司は全く関係ない。 巻き込みたくなかった。
それにしてもマネージャーってだけでこんな恨まれる? もしかして私が知らないだけでさつきちゃんもこういう目にあってるんだろうか。それだったら許せないな。もしさつきちゃんがこんな目にあってるなら相手をぶん殴ってやりたい。

私は扉に耳を寄せた。人の声はしない。鞄を倉庫の前に置いたのは失敗だった。携帯も鞄の中に入っているから連絡すら取れない。
いくら人通りが少ないとはいえ、今日は部活があるし誰か一人ぐらいは部活生が通るだろう。そしたらきっと私の鞄に気づくはずだ。その時に扉を叩けば、察して扉の鍵を開けてくれるはずだ。うん、そうしよう。私は扉にもたれかかるようにして、膝を抱えて座る。

この倉庫は実はバスケ部が使っている体育館から近い距離にあった。意外とバスケ部が見つけてくれるかもしれないな。赤司が気づく可能性ももちろんある。赤司には見つかりたくないけど、まあ見つかった時は見つかったときだ。

小窓から見える外は明るかった。最悪、夜になるまで誰も通らなかったら窓を割ろう。私は楽観的にそう考えた。こういうのはかっとなったら駄目だと去年散々学んだのだ。冷静に、落ち着いていこう。そう自分に言い聞かせて、私は膝を抱えなおした。


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