心臓の発熱する音を聞いた


は?来てくれ?

一瞬言葉の意味が理解出来ずに固まっていたが、赤司は無言で私の腕を掴んで思いっきり引っ張った。その勢いに思わず立ち上がる。
ヘルプの意味を込めてさつきちゃんを見れば、さつきちゃんは桃色になった頬を両手で挟んでいた。え、ちょ、ま、違うからさつきちゃん!

「行くぞ。」

「は?ちょっと待っ……!」

赤司が急に走り出したので必然的に私も走る。ちょっと待って、と反論したかったが赤司の足はとにかく速くて、私は足がもつれないように走るのに精一杯だった。

私がいた所とゴールは割と遠い距離にあったのに、あっという間にゴールテープを破る。
1の旗を持った体育委員が赤司に旗を渡していた。一方私は乱れた息を整えるのに必死だ。

「協力ありがとう、名字。」

「はっ…協、力っていう、か、そっち、が!勝手に、ひっ…ぱっていった、んじゃん!」

喋るのも息絶え絶えという私に比べて赤司は涼しい顔をしている。化け物かこいつは。なんであんだけの距離全力疾走しといて息一つ乱れてないんだ。心肺機能どうなってんだ。
色々言いたいことはあったけれど、とりあえずゆっくり深呼吸をして荒れた呼吸を整える。1つ、聞きたいことがあった。

「はあ、あのさ、…紙になんて書いてたの。」

「これだよ。」

ピラリ。紙が目の前に差し出される。

そこには『仲のいい異性』と書かれていた。


「……。」

「少し考えてみたが、中学に入って一番親しくしているのは名字だと思ってね。」

「………あっそ。」

赤司にとって私は、借りを借りたから返すために関わっている人間、だと思っていた。

仲のいい異性か、うん、結構嬉しい。



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