「さつきちゃんって黒子のこと好きなの?」 「そうなの!」 「まじか」 頬を染めてそういうさつきちゃんに驚きが隠せない。え、突然どうした。今まで全然そんな素振りなかったじゃん。この短い期間に一体なにがあったの。 「テツくんってね、すごいギャップがあって優しくてかっこいいの〜」 「名前呼び…」 前まではたしか黒子くん、と呼んでいたはずだ。男子を名前で呼ぶさつきちゃんが急に大人になったように思える。しかも好きな男子を下の名前で呼ぶってさつきちゃん結構押せ押せ系だな。もし私に好きな人が出来たとしても恥ずかしくて名前では呼べない気がする。まず好きな人自体が無縁な話なのだけど。まあでも、とりあえず 「恋するさつきちゃん可愛いね」 「も〜名前ちゃんったら! 名前ちゃんも恋してるんでしょ?」 「え? してないけど」 急に私の話になって素で驚いてしまった。私が恋してるだなんて、そんな心当たりがない。 「あれ? 名前ちゃんが赤司くんのことを恋愛的に好きらしいって話を聞いたんだけど」 「え? それ私の話?」 「うん」 「違うけど…?」 なんだその話。恋愛的に好きってなんていうガセ話が流れてるんだ。もちろん私は赤司のことは好きだ。ただそれは友達としてなのだ。てかこのくだりの話何回してるんだろう。もう背中に、私は赤司とは友達です!って書いた紙を貼って行動したい。 「なんでそんな話がまわるのかなあ…」 「この間の借り物競争で赤司くん連れて行ってたよね」 「うん、連れていった」 「あれのお題が『好きな人』だったんじゃないの?」 「え!?!?」 好きな人!? なにそれ!! 思わず変な声が出てしまった。可愛く首を傾げるさつきちゃんに違う違うと全力で首を振って答える。いやいやいやいや本当に違うんだ。まじで誰だそんな話をした人。こうやって信じる人もいるんだからそんな大嘘をつくのはやめてほしい。 「いや違うそんなんじゃなかった」 「そうなの?」 「そうだよ」 「じゃあ、本当のお題はなんだったの?」 「怖い人」 「えっ」 しばらくして、影でヒソヒソと、あいつ度胸あるな…と噂されるのが聞こえるようになった。だから話が回るのが早すぎるってば。 ← → 戻る |