ラブとライクの平行線


赤司の歌が上手すぎてもはや引いてる。なう。

かれこれカラオケに来て一時間ぐらい、お互いに色々歌ってるけど赤司の歌唱力が半端ない。もともと良い声してるけど、歌うとその良さがより強調されている。しかも声だけじゃなく音程も完璧だ。採点機能に興味を持った赤司のために途中から採点を入れているけど、赤司は90点後半を連発している。初めて来てこの点数ってすごいな。こいつ一体何個才能持ってんだ。童謡ばかり歌っているのがもったいないぐらいだ。

「…そろそろレパートリーがなくなってきた」

赤司はそう言って国歌を予約した。童謡の次は国歌? まあ締めの曲としてはちょうど良いのか? 分からない。

「それ歌ったらカラオケ出よっか」

「せっかく来たのに、あまり歌えなくてすまないね」

「いやいや、来た価値はあったよ」

赤司が真面目な顔で童謡を歌う姿が見れたしね。という言葉は口に出さずに飲み込む。あまりにもシュールすぎて何回も笑いそうになった。歌上手いから余計にギャップがすごいわ。

それにしても赤司、最近の曲とか、ランキングに乗ってるようなメジャーな曲を歌えるようになったら良いのに。童謡ももちろん良いけど普通の曲を赤司の歌声で聞いてみたい。…明日から学校で、赤司に最近の曲を何曲か聞かせてみようかな。

そんなことを考えていたら、国歌のイントロが流れ出した。

「赤司、カラオケで国歌を歌う時は起立しないと駄目なんだよ」

「そうなのか」

赤司が素直にその場で立つの見てつい吹き出してしまい、めちゃくちゃ睨まれた。




その次の日から私は頑張った。

頑張ったと言ってもお昼休みにおすすめの曲を何曲か赤司に聞かせただけだ。学校への音楽プレイヤーの持ち込みは禁止されているが、まあ暗黙の了解というところがある。赤司には特に何も言われてないから大丈夫…のはず。

「そうだね、もう歌えそうだ」

「はっや」

驚くべきは赤司の記憶力だった。2.3回聞いただけでこんなことを言うのだ。記憶力バケモノか。

そんなことを2週間ぐらい続けた。その結果、赤司の歌えるだろうと自分で言った曲の数はすごく増えた。まあ本当に歌えるかどうかはわからないけど。



そして再び、カラオケへとやって来たのだ。

「赤司、自信の程は?」

「まあ普通かな」

カラオケのソファに座った状態で、目を閉じ微笑む赤司。いやその顔は自信満々でしょ。
早速覚えた曲を何曲か入れて、赤司はマイクを持つ。曲が流れ始めた。



「…………これはやばい」

「なにがだい?」

本当にやばい。自分の心臓が高鳴るのを感じる。殺人的だ。殺人的な歌の上手さだ。とんでもないものを聞いてしまった。

赤司が一曲目に選んだのはゆったりとしたバラードの曲だ。ありがちな、恋愛について述べていく歌詞。普段聞いている時は良い曲だなあと思うぐらいなのだけど、赤司が歌うのを聞くと衝撃が走った。声が良すぎて、ほんとこれだけで女の子を落とせる。赤司のことを赤司様と呼ぶ人がいるのも少しわかる気がした。童謡ですら歌が上手すぎると感じたのだ。それがこんな、最近の流行りの曲なんて歌った日には、そりゃもう。

「かっこよすぎる」

「そう言われると照れるな」

照れを全く感じない顔をして赤司はそう言う。てか、いや本当にこれやばいから。これは全人類がときめく。文化祭のロミジュリの台詞でもなかなかにドキドキしたが、今はそれを超える勢いだ。もしかしたら私は、タダでさえモテる赤司を更にモテるようにアップデートしてしまったのではないか。

「赤司はやっぱりなんでもできるなあ」

「そうでもないよ。俺ひとりじゃカラオケに来ようなんて思いつかない。歌を教えてくれたのだって名字だ」

「ちょっと曲を聞いてもらっただけだけどね」

「…名字はいつも俺の知らないことを教えてくれる」

「そんな大げさな」

赤司の大きな目が私を見つめる。その目はキラキラと輝いて見えた。

「おかげで楽しいよ」

「なら良かった」

もうすぐ一年生が終わる。中学に入って一年間、色々あったけど私も赤司のおかげで楽しかった。…と思う。


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