馬鹿みたいだねと笑う


時が流れるのは早いもので、もう1年最後の試験期間に入ってしまった。

もはや恒例となった赤司との勉強会だが前回と違うところが一つある。紫原が来なくなったのだ。赤司いわく飽きたと言っていたらしい。自由だな。
ちなみに緑間は来ている。が以前と異なり案外静かに勉強している。私が赤司に質問をしたり問題が解けずに悩んでいるときには小言を飛ばされるがもはや慣れたものだ。緑間からの軽いジャブとして受け止めている。

「ねえ赤司、ここ教えて」

「たまには緑間に聞くと良い」

「断るのだよ」

「即答かよ」

緑間はノートから顔をあげることなくピシャリと言い切る。なんというか俺に聞くなオーラがすごい。いや別に私が直接聞いたわけではないけど…。
しかし赤司はそんな様子の緑間にはお構い無しと言ったふうに話を続ける。

「緑間、人に教えることにより自らの知識も増すというだろう」

「…ふむ」

「俺は実際名字に説明している時、自分の勉強にもなっていると感じているよ」

「一理あるな。…おい、どの問題がわからないのだ、見せてみろ」

「え、まじで」

何故か緑間が勉強を教えてくれる流れになった。てか赤司に言われたとはいえ緑間さすがにちょろ過ぎないか。
私がこれ、と指さした問題を見た緑間は紙に書きながら説明をし始めた。教えてくれることはありがたいので、真剣に説明を聞く。……わかりやすい。

「…ということなのだよ。わかったか」

「うん。わかりやすかった」

「ふん」

偉そうにしている緑間を見ながら、久々に平和な勉強会だなあと思った。





「掲示板を一緒に見に行かないか」

テストが終わり数日後。朝練が終わったあと赤司にそう声をかけられた。掲示板? と一瞬はてなが浮かんだが、すぐにテストの順位発表のことだと察する。

「テストの順位が出るの、今日なの?」

「ああ、出ているらしい」

「へえ。一緒に見に行くのは良いけど、赤司絶対一番じゃん」

「俺のじゃなくて名字の結果を見に行きたいんだ」

赤司の顔はいたって真剣だった。てか自分が一番ってことは否定しないんだ赤司。まあ当たり前に一番なんだろうけど。

「名字は今回いつも以上に頑張っていただろう」

「まあね」

掲示板への道を赤司と一緒に歩きながら、私はテスト期間のことを思い出す。今回は一年生の内容全てが試験範囲だったのでいつも以上に力を入れて勉強した。幸いにも赤司が後ろの席に常にいるという、質問する側にとっては神席のおかげでわからない問題はすぐに解決できた。てか私赤司に質問しまくってたな。うるさかったろうにごめん赤司。

「結構自信あるよ、今回」

「良いことだね」

「緑間も超えてたりして!」

「それは緑間の反応が面白そうだ」

口角をあげて赤司が微笑む。私も想像してみたが、確かにもし私が緑間より良い順位なら大変なことになりそうだ。緑間が。
まあ緑間の方が余裕で賢いしそれはないな、と思っていたら掲示板の前に着いた。人だかりができているが、順位の名前は大きく書かれているのである程度の距離があっても読める。



1位赤司征十郎
2位緑間真太郎
2位名字名前



「まじか」

緑間に勝ってはいなかったけど並んでた。え、すごくない? 私ついに二番目になった。赤司に教えてもらったパワー半端ないな。あと一応緑間も。

「努力の成果が出たね」

「中学入っていちばん感動してる」

「そんなにかい?」

「名字!!」

まさかの結果に感動してたら突然自分の名前が叫ばれたのを聞いた。もう声だけでわかる。

「緑間…」

「お前、どんな手を使ったのだよ!」

「第一声それかよ」

人混みをかき分けて緑頭の長身男がこちらへと進んでくる。なんかすごい怒ってる…。

「まさか貴様に並ばれるとは…不覚なのだよ…」

「そんな悔しがる?」

「次は…負けん!」

「いや負けてなくない? てか赤司笑いすぎ」

赤司は右手で顔をおおって小刻みに震えている。顔は見えないけどわかる。なんでこいつこんな笑ってんだ。初めて見たわ。

「ふ…、仲が良さそうで何よりだよ」

「仲良くないのだよ!!」

「声でっか! 目立ってる目立ってる」

赤司の声は震えてるし緑間は怒って震えてるしなんだこれ。周りの目がみんなこっちを向いていて痛い。とりあえず二人とも落ち着いてほしい。


結局、「私の成績は緑間に教えてもらったから良くなっただけで、緑間の方が賢いよ」と伝えたら緑間は落ち着いた。私の対応大人すぎるでしょ。褒めて欲しい。

赤司はいつのまにかいつもの顔に戻っていた。でも、これから先どれだけ澄ました顔しても、この赤司の爆笑を私は忘れないからな。一生覚えとこ。


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