やさしく秘めたこわいこと


今日は私が部誌当番の日だ。
日誌を書き終え部室を締めれば外はもう真っ暗だった。ちなみに今日はさつきちゃんが用事で先に帰って、私1人だ。

あとは職員室に鍵を返すだけ、と思い職員室に向かえば見慣れた赤髪がいた。

「あ、赤司じゃん。」

「随分遅くまで残っているんだな。」

「日誌当番だったんだよね。赤司は?」

「監督と少し話していてね。」

「なんかあったの?」

「今度、1年生が1軍にあがってくるんだ。」

もう遅いから送っていこう、そう言って赤司は歩き出した。私もそれに続いて歩く。
赤司はポケットから携帯を取り出してどこかに連絡をした。あ、あのふかふかな車で送ってくれるんだ。ラッキー。夜遅くまでいてよかった。

「なんかいつも送ってもらってる気がする。ありがとうね。」

「気にしないで良いよ。」

「てかさっきの話? 1年で1軍ってそんなことあるんだね。」

赤司たちじゃあるまいし。赤司とか緑間とかこいつらは完全に規格外だ。
よっぽどバスケうまいんだろうね〜、と続ければ、そうでもないよ、と赤司は言った。ん? 知り合い?

「どんな人か知ってるの?」

「ああ、俺が推薦した。」

だからさっき監督と話してたのか。
てか推薦して実際に1軍に呼べるって赤司すごくない? 立場強すぎる。

「面白いやつだよ。必ず戦力になる。」

「赤司がそこまで言うならそうなんだろうね。」

「実際に来るのは年が明けた後だ。楽しみにするといい。」

そんな楽しみにするほどの人なんだ。ムキムキマッチョのゴリラみたいなやつでも来んのかな。それだとやばいな。

「てかそっか、もうテスト前だもんね。」

「調子はどうだ。」

「まあまあ頑張ってるよ。」

「勉強会でまた緑間でも呼ぼうか。」

「いや勘弁だわ…。」

赤司とするならまだしも緑間がいる空間は本当に謎。しかもそんなに仲良くなったわけでもないし。
一緒に勉強しているとはいえほとんど喋んないしな。たまに話しかけられたと思えば嫌味が多いし。あいつほんとしばいてやろうか。

なんてことを考えていたらあっという間に正門についた。そこには見慣れた赤司の高級車が待っている。

そして、そのまま家へと送ってもらった。乗り心地は相変わらず最高だ。



そしてこのやりとりから3日後。テスト週間に入り部活が休みになった。授業も終わり帰る準備をしていたら、いつのまにか目の前に赤司がいた。
あっ、なんかこれデジャヴだな。

「よし、名字、勉強会をするぞ。」

「えっ。ほんとにするの。」

てっきり冗談かと思ってたわ〜。
そう思ったけどまあ赤司の言うことに逆らえるわけもなく。私は前の人の机を借りて、自分の机と向かい合わせにくっつける。
相変わらずいきなりの決定とはいえ、私はそこそこ乗り気だった。むしろ勉強を教えてもらえるから、ありがたいぐらい。

赤司が目の前に座り、私も自分の席についた。さて、今日は英語でもしようかな。そう思ったその時、

「やっほ〜赤ちん〜。」

ガララララと教室の扉が開き、聞いたことのある声が聞こえた。
あっ、これもデジャヴだ。

てかなんで、……紫原?

扉を見れば紫髪の大男、紫原がいた。いやなんで来たの? そう思ったのはあちらも同じなようで、目が合った瞬間驚いたようにまばたきをした。

「なんでマネージャーもいんの?」

「友達だからな。」

「へぇ〜…。」

紫原が何か言いたげな顔で私の方を見てくる。ん? なんだこいつ。

そう思ったのもつかの間。私はすぐに、あの、文化祭で赤司の劇を見に行った時のことを思い出した。
……あっ、やばい。そうだ。そういえば紫原には私と赤司の関係を疑われていたんだった。
確かに友達とはいえ、放課後に2人で教室に残ってたらさらに疑うよね…。


結局、その後紫原は何も言わなかったが、勉強会の間ずっと意味深な視線を向けられ続けた。いややりづらいわ。


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