世界は苺色に染まる


さっきは、宮地先輩が同じ委員会と聞いて思わず固まってしまったが、私と宮地先輩は1年と3年で仕事も別々だろうし、他にもバスケ部の人がいるだろうし、よくよく考えればそこまで大した問題ではなかった。
出会った時にきちんと挨拶をしたらそれで大丈夫だろう。よし、余裕だ。


という風に考えていた昼の自分を殴りたい。
余裕なんてことは、全くなかった。

まず、風紀委員にはバスケ部が私と宮地先輩しかいなかった。
風紀委員の仕事は週に一度、朝に門の横に立って登校する生徒の服装を検査するというものである。
しかしバスケ部には朝練があり、朝練がないのはテスト前のみである。つまり、私と宮地先輩はテスト前にしか委員の活動が出来ない。そして、一度の検査に参加する風紀委員は2名である。
このことがなにを意味するかは明白だった。

「バスケ部は3年の宮地と1年の名字だけだな。じゃあ2人でテスト前の当番に入ってくれ。」

風紀委員担当の先生はそう言った。
え…?2人?宮地先輩と2人?なんて地獄ですか。
呆然としている私を尻目にほかの人達の当番が決まって、委員会が終わった。宮地先輩に見つかる前に部活に行こうと思ったが、宮地先輩に呼び止められその考えは実行できずに終わる。チラリと宮地先輩の顔を見てみると、うおあああああ宮地先輩めっちゃ眉間にシワ寄ってる怖い。
しかめっ面のまま宮地先輩が口を開く。

「てめえ、なんでバスケ部なのに風紀委員に入ってんだ。」

格好いいからです。服装検査とかめちゃくちゃ格好いいと思ったからです。朝練のことはすっかり忘れてました。

なんてことはさすがに言えない。言ったら、今日こそ本気で轢かれるに決まってる。

「…先輩だって入ってるじゃないですか。」

「俺は内申のために入っただけだ。」

なるほど。確かに風紀委員は内申にいい影響を与えそうだ。
さっさと部活行くぞ、とだけいい宮地先輩は歩き出す。私は大人しく付いていくことにした。宮地先輩の突然のため息に反応してビクッとするあたり、私は本当にこの人が怖いんだなと思う。本当は、真ちゃんの我が儘をフォロー出来るように、仲良くならないといけないのに。

「基礎練間に合っかな…。」

「…!宮地先輩…それ…。」

「あ?」

時間を見る為に宮地先輩がポケットから取り出した携帯には、可愛らしい女の子がプリントされたストラップがついていた。そして、私はこの女の子のことをよく知っている。

「みゆみゆ…。」

「ああ、これか。」

「先輩、みゆみゆ好きなんですか。」

「…そーだけど。なんか文句あっか。」

「……私もなんです。」

「なにが。」

「私、みゆみゆ、すごく好きなんです!」

もう好きという言葉では表しきれないぐらい好きです。CDも買うし握手会も行くし総選挙も投票するしとにかく大ファンです。芸能人の中で一番可愛いと思うし芸能人の中で一番好きです。世界中で真ちゃんの次に位置づくぐらい好きです。きめ細かくて透明感に満ちた肌も大きくクリクリした目もスラリとした手足をはじめとした完璧なスタイルも凛として澄み渡る歌声も妹系と見せかけて意外としっかりしていてメンバーを引っ張るカリスマ性溢れる性格も!全部!好きです!!好きなんです!!!

こんな感じの内容を荒ぶる気持ちと一緒に伝えれば、宮地先輩はポカンとしていた。それを見て私は我に帰る。
やばい、興奮しすぎた。どうも私は真ちゃんといいみゆみゆといい、好きなことに対して周りが見えなさすぎる。宮地先輩はここまで好きではないかもしれないしむしろその可能性の方が高い。そうだとしたら絶対に引いてるし気持ち悪いと怒鳴られる。そして焼かれて埋められる。

しかし、宮地先輩はいつもの暴言を発することなく、突然私の手をとり勢い良く両手で握った。あまりの驚きに、宮地先輩の顔を思いっきり見てしまう。

「…………同士!!」

その目は輝きに満ちていた。


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