一番星にはなれなくても


昼休みにに真ちゃんのクラスに行くのは、もはや日課みたいなものだ。
流石に距離的に休み時間に行くのは無理なので、お昼ご飯を一緒に食べる約束をしたのである。
まあ真ちゃんには、なんで昼食もお前と一緒に食わねばならんのだよ、とか言われたけどスルーだ。どうせ真ちゃん一人なんだからいいじゃないか。

真ちゃんのクラスの扉を開けて教室に入る。あ、緑間くんの女の子だー、と誰かが言っているのが聞こえた。
お、おお、真ちゃんの女の子、なんていい響きなんだろう、まるで彼女みたいだ。真ちゃんの彼女になりたい。
いつも真ちゃんが座っている席を見ると、違う男の子がいた。あれ?

「今日席替えしたんだよー、緑間くんはあっち。」

さっき私を真ちゃんの女の子扱いした声と同じ声が、指をさして教えてくれた。いい人だ。
真ちゃんの席に行くと、真ちゃんの前の席の男の子が、後ろを向いて真ちゃんの机の上にお弁当箱を広げていた。真ちゃんはこれでもかというぐらい眉間にシワを寄せて、不愉快という顔をしている。
とりあえず私はポケットからハンカチを取り出して、噛み締めた。

「真ちゃん…!まさか私を捨てて、その男の人と…!!私とは遊びだったのね!」

「気持ちの悪いことを言うのはやめろ。あと、高尾。お前はどこか別の場所で食え。」

「いーじゃんいーじゃん!あ、名字さんだよね、俺も一緒でいい?」

高尾くんはそう言って人の良さそうな笑顔を浮かべた。
黒髪センター分け、どこかで見たことあると思ったらあの子だ。真ちゃんと一緒に居残り練習をしていた子だ。てことはバスケ部か。

「いいよー。でも、真ちゃんは渡さないから…!」

わざと昼ドラ風に言えば、高尾くんはブフォと吹き出した。真ちゃんの眉間のシワは一層深くなる。対照的だなこの2人。

「油断してると…足元すくっちゃうわよ!」

高尾くんのその台詞に、今度は私が吹き出す番だった。高尾くんも、自分で言ったことに対してゲラゲラ笑っている。ノリがいいのは嫌いじゃない。てか高尾くん演技力高い。
そろそろ、真ちゃんの顔が凶器になってきたので、私は大人しくお弁当を広げた。これ以上この昼ドラを続けたら、真ちゃんが確実にブチギレると判断したからだ。真ちゃんは怒ると怖い。

それにしても顔面凶器化しても相変わらず美しい顔してるなさすが真ちゃん好き好き大好き、なんて思って真ちゃんの顔を見つめてると思いっきり睨まれる。隣で高尾くんがまた吹き出した。

「どったの。」

「いやー、名字さんってマジで緑間のこと好きなのな。」

「愛してるからね。」

「緑間は?」

「毎日がストレスだ。」

すれ違いすぎだろ!と言って高尾くんがまた笑う。もう分かってきたぞ、この人ゲラだ。


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