その目を教えたのは誰だ


今はホームルームの時間。来月文化祭があるのでそれについてクラスみんなで話し合っている。
どうやらうちのクラスは劇をするらしい。へえ。

私は、みんなが声を荒らげて各々やりたい劇を上げているのには参加せず、ただぼんやりと見ていた。
劇か…人前に出るのは好きじゃないし小道具とかになれたらいいな。細かい作業は割と好きだ。

ふと赤司の方を見れば、次々と劇の候補が書かれている黒板を黙って見ていた。うん、赤司もあまりこういうのには興味無さそう。むしろ積極的に劇に参加する赤司とか見てみたいわ。

そうこうしてるうちに、劇はロミオとジュリエットに決まった。まあ、定番なやつだ。
何故か選択肢にあがってたオカマシンデレラよりはマシだ。てかあれ候補に出したの誰だよ。

「ロミオ役やりたいひとー。」

ずっと教卓でみんなの意見をまとめていた文化委員の子がそう言うが、誰も手を上げなかった。さっきまでとはうって変わり教室がシーンとする。うわあ、文化委員も大変だな。

「じゃあ推薦で…。」

文化委員の子がそういった瞬間、教室が騒がしくなった。具体的にいえば、手を上げる女子たちの声で騒がしくなった。

てか推薦って、そんなの…、

「じゃあ、ロミオ役は赤司くんでいいですか?」

女子たちの熱い推薦により、ロミオ役はもちろん赤司になった。
そりゃそうだろう。顔いいし性格いいしモテるし、逆にこいつ以外の誰が推薦されんだって感じだ。ザ王子様って人間だもんな。

赤司がロミオ役とに決まった瞬間、赤司の顔がほんの少しだけゆがんだ。他の人は誰も気づいていないだろうけど、もう半年近くそばに居たんだ、すぐにわかる。あいつロミオ役かなり嫌がってる。どんまい。

それでも、人当たりのいい赤司は文化委員の子に対して、俺でいいならと言って引き受けた。その謙虚な対応に何人もの女子が頬を染める。あいつ大人の対応できすぎだろ、精神年齢いくつだ。

「じゃあジュリエット役やりたい人…、」

そう言った瞬間、再び教室が騒がしくなった。さっきと同じで女子たちが勢いよく手を挙げている。うん、これだけ立候補者がいれば推薦とかしなくても大丈夫そうだ。

その様子を肘をついて眺めていると、ふと流し目で私の方を見てきた赤司と目が合った。その目がお前も出ろと訴えていたが、ささっと視線を外してスルーする。すぐに私をめんどくさい流れに巻き込もうとするのよくない。こっち見んな前向け前。

そもそも、赤司が王子様役な時点で立候補する女子はたくさんいるわけで、私が出るなんてことは無理な話なのだ。

結局、ジュリエット役は投票によりクラスで一番可愛い子に決まった。まあ美男美女で妥当だ。見栄えもすごくいい。

ちなみに私は無事に小道具になることが出来た。赤司からの鋭い視線は見て見ぬふりだ。なんでそんな私推しなの。



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