まるで子どものように


目が覚めると、目の前には真っ白の天井が広がっていた。あたりを見回せばここが保健室ということに気づく。私はベットの上で寝ていた。横には呆れ顔をした真ちゃんがパイプ椅子に座っている。
…あれ? もしかしてさっきの夢だった?

「起きたか。」

「…真ちゃん。」

「…全く、何故倒れるのか理解に苦「あっこれはもしかして夢じゃなかった?」

真ちゃんの頬がかなり赤くなっているのを見て、さっきの昼休みの出来事が現実だったということに気がつく。
壁にかけられた時計を見ると今は5時間目の途中で。あの真面目な真ちゃんが授業をサボって私が起きるまで待っていてくれたことに気づいて、ついニヤニヤが止まらなくなった。真ちゃん優しい。

「真ちゃん、」

私はそんなにやけ顔のまま真ちゃんに声をかける。ふてくされ顔をしつつも、なんだと反応してくれる真ちゃんが愛おしくてたまらなかった。

「ありがとう。」

これが今の私の率直な気持ちだった。
あのツンデレな真ちゃんが嫉妬してくれたことが嬉しい。そばにいてもいいと言ってくれたことが嬉しい。好きと言ってくれたことが嬉しい。ほんともう、幸せでどうにかなりそうだった。

「私も好きだよ、真ちゃんのことが。」

「…。」

「大好き。」

「…。」

「愛してる。」

「…やかましい。」

最近言えてなかった愛の言葉を順番に言っていけば、真ちゃんは照れたようにそっぽを向いた。そのあまりの可愛らしさに思わず枕を地面に叩きつけたくなる。真ちゃんマジ天使。

「まあでも、」

「ん?」

真ちゃんが何かを言おうとしたその瞬間、授業終了のチャイムが鳴った。それでも真ちゃんはなかなか続きを言おうとしなくて。私はそんな真ちゃんを辛抱強く待つことにした。
やっと口を開いたのは、チャイムが鳴り終わってしばらくしてからだった。


「……付き合ってやらんこともないのだよ。」


蚊の鳴くような小さな声で言われたそれは、私を撃ち殺すには十分な威力だった。…付き合うってあれだよね、男女のあれだよね。
はい死んだ、私死んだ、もう無理だ、死んだ。もはやこの世に未練はない。

私は思わず布団を投げ捨てて真ちゃんへと飛びついた。そんな私を真ちゃんは慌てて受け止め、そのおかげで私は無事真ちゃんの腕の中へとダイブ出来た。

「真ちゃん!大好き!」

「な、おい、貴様…!」

「私こそ付き合ってください!ってか結婚してください!!」

「声がでかい!」

私は真ちゃんに抱きついたまま叫ぶ。真ちゃんは声で拒みつつも私を突き放すなんてことはしなかった。その優しさに再び胸がキュンとする。

その瞬間保健室の扉が開いて、見るとそこには高尾くんがいた。

「なっ、高尾?!」

「名字ちゃんの見舞いにきたんだけど…あれ? もしかしてお取り込み中?」

戸惑ったように笑う高尾くんに向けて、私は全力で返事をした。

「うん!!」

「違う!離れろ!!」

「痛い!」

「…マジでどういう状況?」

頭を押されて真ちゃんの胸から体を離される。真ちゃんの顔を見ればそれはもう耳まで真っ赤で。そんな照れ屋なところも愛しくて仕方なかった。

ああ、もう、幸せだ!!


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