飽くことはないのだろうね


「……いやいやいや、ちょっと待ってよ赤司さん。」

「?どうしたんだい。」

どうしたもこうしたもないわ。私は目の前の高級車を見ながら心の中で頭を抱えた。

そう、昨日のメールにより今日私は赤司とラーメン屋に行く約束をしていた。練習が終わり着替えて門で待ち合わせ、ここまでは良かった。のだが門を出ると何故かそこには高級車がいた。

今はちょうどほかの部活が終わる時間とかぶっていてて、門からたくさんの生徒が出てきている。つまりこの門前に止まっている高級車は滅茶苦茶注目を浴びていた。

「早く乗れ。」

「恥ずかしくない? これ。」

「1人だったら恥ずかしいけれど名字がいるからね。」

あっ赤司にも恥ずかしいって感情あるんだ。いやいや私赤司のことなんだと思ってるんだ。

「それに名字は今日傘を忘れたんだろう。」

「まあ……。」

今日の朝、急いでいて天気予報を見るのを忘れたのだが、部活中に降り出した雨を見て「あ、私傘忘れた」と言ったのを聞いてたらしい赤司は、なんとラーメン屋に行くためだけに高級車を手配したのだ。こいつ貴族か。

「別に私濡れてもいいんだけど。」

「女子を濡らすわけにはいかないだろ。」

「紳士か。」

そりゃあんた、赤司様とか呼ばれるって…。



まあ赤司に逆らえるわけもなく、結局高級車に乗ってラーメン屋まで来た。すごいふっかふかだった。人をダメにする車だあれは。

ラーメン屋に入って席に案内してもらう。さすがに2回目なので、店員の掛け声に赤司がビビることはなかった。残念、結構期待してたのに。
席についてメニューを開く。さて、何を頼もうかな。

「名字。」

「ん? なに?」

「あれを頼んだらどうだ。」

そう言って赤司が指さしたのは壁に貼られている1枚のポスター。そこにはでかでかと「大食いチャレンジ!特盛ラーメン30分以内に食べきれたら無料!!」と書かれていた。そしていかにも大盛りですといったラーメンの写真も一緒に貼られていて、その下には「量は5人前です」とも書かれている。………は?

「赤司、なんであれにしたらいいと思ったのか説明して。」

「あれが一番値段が高い。」

確かに、ポスターの中には「30分以内に食べきれなければ5000円いただきます」と書かれていた。…なるほど、昨日メールで一番高いやつ奢ってって言ったことをさしてるのか。こいつ案外根に持つな。

「あんなん女子が食べるものじゃないでしょ。」

「名字なら食べ切れる気がする。」

「喧嘩売ってんの?」

「まさか。」

赤司は至って真顔で、俺は醤油ラーメンにしようかなとメニューを見ながら呟いた。
くっそなんか赤司だんだんキャラが変わってきたな。キャラが変わったというか私への扱いが若干雑になってきた。まあ今更「そんな…赤司くんがこんな扱いしてくるなんて…」とか女子ぶるつもりはないけど。

「てか赤司、」

「なんだい。」

「もしあれ私が食べきれたら一番高いやつじゃないじゃん。」

「女子が5人前も食べれるわけないだろう。」

「どっちだよ。」

お前さっき私なら食べ切れそうとかぬかしてたじゃん。意見を統一してくれ赤司様。

「というわけであれはなしね。」

「いいじゃないか、試しに頼んでみたら。」

「なんでそんな押してくんの。」

「どんなのが来るか見てみたい。」

「自分で頼め!」

私の言葉をうけて赤司はくっくっと面白そうに笑った。なんだこいつ。

結局、私は普通に味噌ラーメンを頼んだ。滅茶苦茶美味しかった。
赤司は少し不満そうな顔をしていたが知ったことか。見たいなら自分で頼め。



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