わたしだけの特等席


久しぶりにガチの喧嘩をしてから1週間。あれからずっと、ちくられて退学になるんじゃないかと内心ビクビクしていたが、今のところはなにもない。あの女子たちとはたまに廊下で会うが、いつも目が合った瞬間に全力でそらされる。
…これも赤司の力のおかげだろうか。あいつほんと化物だな。

あの後、私に対する赤司の態度はなにも変わらなかった。今までどおり、仲のいい友達のままだった。
教室で私が泣いたことにも赤司はなにも触れず、私も赤司の目のことにはなにも触れていない。
あの日、赤司の目がかすかに黄色みがかって見えたのだが、よくよく考えればあの時は夕方だったから夕日の色と間違えたのかもしれない。何と言ってもあの時の私は久々に暴れたせいで内心テンションがおかしくなっていて、記憶があやふやなのだ。

ちなみにあの後、部活に遅れてやってきた私に、虹村先輩はさわやかな笑顔で「おつかれさん」と言ってくれた。全てを知っているだろうに、そんなことを感じさせないぐらい眩しい笑顔だった。あれはイケメンだ。
そしてさつきちゃんには「なにかあったの?名前ちゃん、いつもと少し違うよね?」と聞かれた。すごく焦ったけど、なんとかはぐらかせた私を誰か褒めてほしい。女の勘って怖いな。





今日もいつも通りに部活が終わり、家に帰ってご飯を食べお風呂に入る。自分の部屋で髪を乾かしていると携帯の着信音が聞こえた。この音はメールだ。

画面を開くとメールは赤司からだった。えっ。

『夜にすまない。前に食べたラーメンが食べたい。都合の合う日に付き合ってくれないか。』

「おおう…。」

思わず変な声が来た。なんだこれ、どういう反応をするのが正解なんだこれ。いや、別にラーメン食べに行くのは構わないんだけども。赤司に誘われるなんて。しかもメールで。
そういえば、赤司とメールするなんてマネージャーやり始めてすぐにして以来だな。半年ぶりぐらいか。まあメールする必要なんてないぐらい直接話してるしな……。

『いいけど、なんで私? 1軍の1年は誘わないの?』

送信、と。
しばらくして、すぐに返信が来た。

『前に誘って行ったが騒がしくてね。それはそれで楽しかったけど、今回は静かに食べたい気分なんだ。』

へえ、もう行ったんだ。まあ1軍の1年って仲いいしなあ。ただし灰崎は除く。あいつほんとバスケうまいんだから不良やめるべきだと思う。

それにしても、静かに食べたい気分か。確かに私食べるとき一切喋らないけども。

『了解、部活のあとなら私いつでも暇だよ』

『なら明日でいいかな。』

「近っ。」

思ったよりもすぐだった。
てか赤司返信はやいな。ずっと携帯握り締めてるんだろうか。なにそれ面白い。まあ赤司から返信来た瞬間にメール返してる私も人のこと言えないんだけど。

『奢ってくれるならいいよ』

『随分と言うようになったね。』

『冗談です』

『灰崎の図々しさがうつったのかと思ったよ。』

『それは勘弁』

『まあ、俺から誘ったんだしラーメンぐらい奢ろう。』

『ほんと?じゃあ私一番値段高いやつで』

『やっぱり灰崎の図々しさがうつってるみたいだ。』

『ごめんなさい。てか、あいつと一緒扱いとか泣くわ』

『仲がいい割には酷い言い様だね。』

『あいつの方が私にひどいよ』

『今度しめようか。』

『ごめんやめたげて』

『冗談だよ。』

その文字を見て少し笑ってしまった。赤司ってメールだとなんというか、少し雰囲気が砕けるな。こっちの方がいいと思うよ私は。なんて本人には絶対言えないけど。

なんやかんやで淡々と30分ぐらいメールのやりとりが続いている。…そろそろ眠たくなってきた。
てか待って、よくよく考えればメールの内容半分以上灰崎についてじゃん。あいつ超人気者だな。おめでとう灰崎。今度お祝いしてあげよう。…駄目だ眠すぎて思考回路わけ分からなくなってきてる。寝よう。

『ごめん、すごい眠い。おやすみまた明日』

『おやすみ。』

赤司からの返信を確認して私はベットに入った。…明日はラーメンか。


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