結局、私は赤司に全部話した。 だって赤司怖かったし。めちゃくちゃ温厚なくせに、はぐらかそうとしたら冷たい目で睨まれてゾッとした。二重人格ってやつですか。 「ふむ…つまり、君は怒りやすいから、わざと周りから距離を置いてるのか。」 「そういうこと。」 「そのわりには、今は怒っていないようだね。無理矢理引き止めたのに。」 確かにそう言われればそうだ。普段なら帰りたいのに帰らせてもらえないとなれば、怒って手を出している。なのに、今、怒りは全くない。 原因はなんとなく分かっていた。 「赤司がかしこいからだよ。行動にちゃんとした理由がある。」 理由のない、意味のない行動は一番腹が立つ。 それに反して、赤司の行動にはちゃんとした理由があるし、それがわかる。今回引き止めたのだって、純粋な好奇心だろう。うん、大丈夫、怒りはない。 それともう一つ原因はある。赤司の言動の奥には、ほんのかすかだが有無を言わせぬ威圧感があるのだ。さすがにこれは言えないが。 「それにしても、そんなに怒りやすい人には初めて会ったね。しかも女子。」 「喧嘩売ってる?」 「悪意はないよ。」 そう言って赤司はフッと笑った。綺麗な笑顔だ。 こういう時美形はずるいと思う。苛々していた気持ちがしぼんでいくのを感じた。ほんとかっこいいなこいつ。 「でも、その性格はどうにかしたほうがいいね。」 「だから人と関わらないようにしてんじゃん。」 「違う、もっと根本的なところでだ。」 「無理だよ。」 「無理じゃない。」 断言する口調と同時に赤司の目が一瞬光った。まただ、この、有無を言わせぬ威圧感。 「俺に考えがある。前に助けてもらった礼だ。手を貸そう。」 嫌な予感が、再びした。 ← → 戻る |