触れあうことに意味がある


「ってなわけで、どうしたらいいと思う。」

「なんで俺に聞くんだよ。」

私の向かい側に座っている灰崎は、眉間にしわを寄せながらそう言った。

ここは屋上。今は昼休みだが、灰崎がいるせいで他に人はいない。灰崎は不良として他の人に怖がられているから、こいつが来るとみんな屋上から出ていくのだ。
自分が来た瞬間みんなどこか行くなんて可哀想だと思ったが、当の本人は屋上を独り占めできてラッキーと言っていた。まあ本人がいいのならいいんだろう。

赤司を怒らせた翌日である今日。朝練でも教室でも赤司と目が合わず、これは本気でやばいと思った私は誰かに相談することにした。のだが。

「私だって好きであんたに相談してるわけじゃない。」

「じゃあ来んなよ。」

「だってさつきちゃんに話したら心配させちゃうし、他の女子に話すのもなんか違うし、男子だとあんたか赤司としかあんま話さないし。消去法であんたになった。」

「まじで帰れ。てか交友関係狭いな。」

「別にいいの。」

「さみしい奴。」

そう言って灰崎は屋上に寝転がった。制服汚れるよ、と言ったが無視される。
私は仕方なく、灰崎の肩付近に腰をおろした。こうでもしないと、このまま灰崎に会話を終わらされると思ったからだ。

まだ9月で暑い日が続くが、今日は曇っていてそこまで暑くはない。私はあまり屋上に来ないが、これは灰崎がよく屋上に来るのも分かる気がした。たまに吹く風が心地いい。

「結局お前赤司のこと好きなのかよ。」

「そういうんじゃない。選手とマネだし。」

「選手とマネだったら今のまんまでもいいだろ。」

「仲悪いのは駄目でしょ。」

「じゃあ付き合ったらいいじゃねーか、めんどくせ。」

「めんどくさい言うなし。」

灰崎は私がいる方と反対側に寝返りをうった。話聞く気ないなこいつ。普段面倒見てる分、ちょっとぐらい話に付き合ってくれてもいいでしょうが。

「付き合うとか、私らまだ中学生だよ?ないない。」

「中学生とかカンケーねえだろ。」

「あんたの女遊びが異常なだけでしょ。」

そう言うと、灰崎は顔だけをこちらに向けてきた。お。なんだ。話聞いてくれる気になったか。と思ったのだが、

「お前は…ねえな。」

「…は?」

「俺ブス専じゃねえし。」

「殺すぞ。」

「赤司の女になったら考えてやらなくもねえけど。」

「殺すぞ。」

私はものすごく脱力した気分になった。今更だけど、駄目だ、こいつ。


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