夏休みは部活三昧の毎日だった。そして夏の大会で我が帝光中は見事優勝した。大会ではもちろんスタメンで出た3年の先輩方も凄かったが、1年の皆も凄かった。 そして3年生が引退し新しく虹村先輩が主将になった。決めたのは3年生と監督だが、個人的には虹村先輩を推していたのでかなり嬉しい。 そして2学期が始まり、部活も新しい体制になって心機一転頑張ろう。そう思っていたのだが、 「おいてめえ、赤司様に近づくなって言っただろ。」 これである。 ホームルームも終わり、さあ部活に行こうと思った矢先、クラスの女の子に、ちょっと来てくれない?と話しかけられた。その子は大人しげな子で、完全に油断していた。 ついていった先は裏庭で、そこにはつい数ヶ月前に私を呼び出してきた女子集団がいた。その瞬間大人しげであった子の表情が歪み、あっ、この子も仲間なのか、と察した。普段の大人しげな感じは演技なのかなんなのか、どっちにしても女子の二面性って怖いな。 「勉強教えてもらったんだって?そーいうの赤司様に迷惑かけてるって自覚ないの?」 「なんか灰崎くんともよく一緒にいるし。」 「調子乗ってるね。」 「てか緑間くんとも勉強したんだって?ブスのくせになにたぶらかしてんの?」 「まじうぜーわ。」 …これ、どこから突っ込めばいいんだ。 てか、赤司だけじゃなく灰崎と緑間もモテるんだ。確かにバスケ部顔面偏差値高いしな…てか赤司とはともかく緑間と勉強会したのも知ってるのか…情報網こわ…、じゃなくて。 どうしよう、この状況。 とりあえず、本当に頼むから手だけは出さないでくれ。願わくばこのまま適当にグチグチ言われるだけで終わってほしい。もし手を出されたら絶対に耐えきれない、琴線が。私が加害者待ったなしだ。 殴らないようぐっと拳を握り下をむいて、罵声に耐えていると、泣きそうになりながら堪えていると勘違いしたのか、目の前の女子たちは面白そうに笑い出した。あっ、そういうのやめて殺したくなるから。まじでやめて。 「おい。」 殴るな私頑張れ私殴ったら赤司にばれるぞと脳内で唱えていると、誰かから声がかけられた。私も女子たちも声の聞こえた方へと振り返る。するとそこには虹村先輩がいた。えっなんで。 黙って立つ虹村先輩は、いつもの眩しい笑顔でも部活中の真剣な顔でもなくて、とても怒った表情をしていた。眉間に皺が寄って目は鋭く光っていて…正直めちゃくちゃ怖い。女子たちも呼び出してきた時の威勢はどこに行ったのか、その顔を見て凄く怯えていた。 「…まじでうぜえ。」 虹村先輩がチッと舌打ちをしながらそう言えば、呼び出してきた女子たちは半泣きでその場を去った。…虹村先輩パワーやばいすごい。言葉だけでこの場を片付けた。覇気使いか。 助けてもらった感謝を込めて、ありがとうございますと礼をすれば、虹村先輩は苦虫をかみ潰したような顔で口を開いた。 「お前さ、こういうの初めてじゃねーだろ?」 「…え。あー、いえ。」 そんなことないです。そう言ってはぐらそうとしたが、真剣な目で見られることによりそれはかなわない。てか、なんで初めてじゃないって知ってるんですか。 「…まあ、言いたくねえのはわかるけど、」 「…。」 虹村先輩は私から目線をそらして、頭をガリガリとかいて続けた。 「言えよ。俺はキャプテンなんだから。」 「…はい。」 「それでよし。」 私が頷くのを確認すると、虹村先輩はいつものように眩しく笑った。 …駄目だ、かっこよすぎる。これがイケメンというやつか。 −−−−−−−−−− 「っていうの見たんだよねー。」 「そもそも、見てるだけでなく助けに行くのだよ、馬鹿め」 「えー、だって俺あのマネージャー全然知らねーし。」 「てか、俺、緑間が他人を助けるって発想持ってることにびっくりだわ。」 「喧嘩を売ってるのか青峰。」 「…。」 「赤ちんどーしたの?顔やばいよ。」 「…いや。」 −−−−−−−−−− 「なにあれ、1年で集まってミーティングでもしてるの?」 「雰囲気的に雑談してるだけじゃないかなあ。」 「なるほど。あの4人ほんと仲いいよね。」 「ほんとに!男の子同士仲が良くて、私入れなくて嫉妬しちゃう!」 「大丈夫、さつきちゃんはばっちりあの4人に入れてるよ。超仲良しじゃん。」 「そんなこと言ったら名前ちゃんだって赤司くんと仲いい…ってあれ?赤司くんこっち見て…。」 「え。…うっわ、ほんとだ赤司すごいこっち見てる!てかめっちゃ睨まれてない?顔やばこっわ!」 「確実に名前ちゃんのこと見てるね…。」 「私なにかしたかな…。」 ← → 戻る |