またひとつ色づいた


さて、どうしようか。誤魔化すべきか。正直に話すか。

正直に女の子に絡まれた話をすれば、私を1軍にあげた時みたいに赤司はなにか行動を起こしてくれるだろうか。少し興味があるが、何か恐ろしそうなことが起きそうな気もする。やはりここは、

「え、そうかな?」

誤魔化すしかない。
そう決めて口を開いた私を見て、赤司は1つため息をついた。え、なんなの。

「…名字。」

「なに。」

「お前は、わかりやすいよ。」

「…急にどうしたの。」

「避けてることも、今誤魔化そうとしていることも、凄くわかりやすい。」

バ レ て る。

いや、これは、赤司に隠し事をしようとした私が馬鹿だった。そんなこと出来るわけないじゃないか。相手はあの赤司なのだから。

「言いたいことがあるなら、正直に言え。」

どうしようどうしようどうしよう。
私は脳味噌をフル回転させて適切な返事を考える。赤司の言う通り正直に言えばいいのだろうが、それだと後々面倒くさいことになりそうだ。てかなる。かと言って、誤魔化すのも無理そうである。さあ、さあ、どうしよう。

「あの、えっ…と、」

「それとも、仲が良いと思っていたのは俺だけか?」

「っ!そんなこと、」

そう言った赤司は、ほんの少しだけ憂いのある表情になっていた。え、なに、待って、え、何それ。普段あんなに自信ありげなくせに、急にそんな顔するなんて、やめて、やめてよ。

そんな赤司を見た瞬間、私の口からは咄嗟に言葉が出た。


「そんなことない!私ら友達じゃん!」


漫画みたいな台詞だ。言ったのと同時に、そう思った。
よくよく顧みれば、凄く恥ずかしいことを大きな声で言ってしまった気がする。そう思った瞬間顔がカッと熱くなった。いやいやいや、何を言っているんだ私は。今はそういうことを言っているんじゃないだろう。見当違いにも程あるぞ。大体、私ら友達じゃんってなに。友達って宣言してなるものじゃないし、本当に何言ってんだ私。赤司だってこんなこと急に言われて、引くに決まって

「…そうか。」

小さくそう呟いた赤司は、私の見間違いでなければ、満足気な顔をしていた。

…あれ?


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