優しい檻にふたりぼっち


「…ごちそうさまでした。」

そう言って箸をおろす。期間限定と書かれていたラーメンを頼んだが、予想以上においしかった。隣ではとっくに食べ終わった灰崎が携帯をいじっている。行儀悪いぞお前。
赤司は、意外なことにラーメンを結構満足気な様子で食べていた。アイスといいこれといい、赤司はチープなご飯も美味しいと感じるみたいだ。やっぱりそこは中学生ということか。

赤司が食べ終わるまで待つかー、と思っていた矢先、隣で灰崎が急に立ち上がった。

「じゃ、俺帰るから。」

…は?
いやいやいや、赤司まだ食べてんじゃん。そう思ったが、当の本人と赤司はそういうのを気にしていないようだ。赤司はなんともないような顔でそうか、とだけ続けた。

「金よろしく。」

「ああ。」

え、なに、ナチュラルに赤司に奢らせてるし。じゃなくて。ここで灰崎が帰っちゃったら、

「待って、私も、」

「あ?てめえは残れよ。赤司1人になんだろうが。」

そう言って灰崎は、赤司からは見えない位置で私ににやっと笑いかけた。その笑顔を見て私は気づいてしまったのだ。…ほんとこいつ。
お先、と言って灰崎はそのまま本当に店を出ていってしまう。席に残ったのは、私と赤司の、2人。

「名字。」

「…なに。」

部活での最低限の会話以外で話すのは、久しぶりだ。食事の手を止めた赤司が、こちらを向いて話しかけてくる。

「君は最近、随分と俺を避けているようだね。」

……わお、ど直球なの、来たよ。


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