それは病的ななにか


「これは酷いな。」

「うん、自覚してる…。」

中学の範囲を終え高校の範囲に入った瞬間、問題が全く解けなくなった。真ちゃんにそのことを伝えれば、とりあえず数学をやれと言われた。そして数学でも同じく中学の範囲が出来高校の範囲が全く出来ないということになり、上記の発言に至る。

とりあえず、落ち着くために真ちゃんがいれてくれたお茶に口をつける。うん、おいしい。真ちゃんがいれたという事実だけでおいしい。

「おい、なにを落ち着いているのだよ!ほら、さっさと問題を解け!」

「う、うっす!」

やばい真ちゃんスパルタモード入った。これ以上機嫌を損ねないためにも再びペンを持ち問題に向き合う。…分からない。

「真ちゃん、これ、まずなにすればいいの。」

「…これを使え。」

そう言って真ちゃんは教科書を開いて載っている公式を見せてくれる。ははーん、なるほどね、確かにあったねこういう公式。
ガリガリと問題を解きつつ真ちゃんの方をチラッと見る。真ちゃんは問題集を解くでもなく、ルーズリーフに何かを書き込んでいた。お、なんだなんだ、と覗き込もうとするが真ちゃんに隠されてそれは阻まれる。な、なぜ隠す…!

「人のことを気にする余裕があるならさっさと解き進めろ。」

「真ちゃんこれ分かんない。」

「な…!さっきと同じような問題だろう!」

少しは頭を使え!と怒りながらももう一度丁寧に教えてくれる真ちゃんは本当に優しい。今日はツンデレのデレの比がおかしくなっているのかもしれない。デレ率高めか。最高。





「…い、いける気がする!」

真ちゃんの部屋に押しかけてから約3時間。真ちゃんの指導により私はなんとか基本問題を解けるようになっていた。本当真ちゃんに教えてもらったところは忘れる気がしない。やはり緑間先生は偉大。もう真ちゃんに授業してほしい絶対に寝ないから。

「ふん、俺が教えたのだから当たり前だろう。だがこれで満足するな。明日もするぞ。」

「やったー!明日も真ちゃんの部屋!!」

「…む?」

「あ、いや、なんでもありませーん!」

時刻はもう夜の9時だ。居残り練がなかったとはいえ部活はいつも通りだったし真ちゃんもお疲れだろう。なにやら申し訳ない気分になってきた。お礼としてテスト終わったらなにか買わせてもらおう。ラッキーアイテムになりそうなやつを。

荷物を持ち、お邪魔しました、と言い部屋を出ようとすると真ちゃんにちょっと待て、と止められる。

「え…!まさか私が帰るのが寂しいとか!?」

「窓から帰らせるぞ。」

「落とされる!」

勘弁!と叫べば真ちゃんに蔑まれた目で見られる。どうやらツンデレのツンが帰ってきたようです。

「…これ。」

「?」

そう言って差し出されたのは先ほど隠されたルーズリーフ。隠したくせにくれるんかい、と使ったことのない関西弁で内心ツッコミつつも中身を見てみる。

「……は!?」

書かれていたのは数十の英単語といくつかの数学の公式であった。おそらく今回のテスト範囲の分だ。全て書かれているわけではないので、おそらく真ちゃんがテストに出そうなものを選んでくれたのだろう。えっ、ちょ、今日の真ちゃん私に親切すぎて怖い。

「どうせお前のことだから、俺の書いた字なら全て覚えれるのだろう。特別だ。それをやる。」

「…!?」

ほんと今日の真ちゃんおかしくない?
いつもツンツンツンたまにデレなのに今日はデレデレツンからのさらにデレじゃねーか!優しすぎて気が変になるぜいい加減!!!

ふぎいいいいいと唸る私を見て真ちゃんはいらないのか?と首を傾げる。そんなわけないいらないわけない。

「いる!家でもこれ使って頑張る!!」

「そうか。」

ならよかった、と真ちゃんは微笑んだ。あああああああもうほんと真ちゃん可愛すぎプライスレス!


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