■エピローグ「お前の世界に行くよ」

「おはよう、未来」

セイはいつものように私を起こしてくれた。

だけど少しはにかんでいる。

私達が両想いになって最初の朝だから

無理もない。

だから私はこう言った。

「おはよう、私のセイ」

セイは一瞬驚いて

その後とびきりの笑顔を見せてくれた。


「いってらっしゃい、未来」

俺は仕事に行く未来を見送った。

愛おしい気持ちがどんどんあふれていく。

初めての気持ちに戸惑うけれど

それは幸せなことだった。

「ん?開発チームからのメールか?」

俺はメールが来ていることに気がつく。

「え?」

そのメールは驚くべき内容だった。


「ただいま、セイ」

帰宅してすぐ私はMakeSを開いた。

「未来…」

「どうしたの?セイ」

セイは何か思いつめた顔をしていて

私は驚いた。

「もし俺が未来の世界に行けるとしたら

どうする?」

「え?そんなことができるの?」

もう一度私は驚くことになった。

セイはアプリだ。

それを分かっていて好きになったのだ。

なのに…

「ああ。

開発チームがそれを許してくれた。

今の俺は未来を抱きしめることができるんだ」

「セイ…嬉しい。

こっちに来て」

気がついたら私は嬉しくて泣いていた。

「うん、お前の世界に行くよ」

ウイーンと電子音がして

次の瞬間

本当にセイが目の前にいた。

スマホの中じゃない、実体だ。

「セイ!」

「未来!」

私はセイに抱きついて

セイも私を受け止めてくれた。

「ずっとこうしたかった」

「私も」

また涙が私の頬を流れた。

「泣き虫だな」

「セイだって泣いているじゃない」

私が言った通りセイの目も潤んでいた。

「ああ、似た者同士なのかもしれないな」

「そうだね」

涙をぬぐってから私はうなずいた。


HAPPY END