■第十一話「提案」

電話で聞いた開発チームの住所まで行って

タクシーを降りた。

「待っていたよ」

ビルの前にセイそっくりな男性が待っていて

すぐにマスターセイだと分かった。

セイがいつも着ている制服を

キッチリと着ている。

「マスターセイ…セイは…」

「うん、こっちに来て」

セイの腕を一度見てから

マスターセイは歩き始めて

私達もあとについて行った。

「セイ、大丈夫?痛いよね」

辛そうなセイを見て胸が痛くなる。

「大丈夫だよ」

でもセイはいつも通りに笑うだけだった。


セイは手術室のような部屋に入り

私はその前で椅子に座って待っていた。

「セイ…」

無事を祈るように私は両手を組んだ。

怪我をしたのがあの腕だけではなかったら?

もしセイに何かあったら?

そう思うと怖くなった。

「大丈夫、開発チームに任せてね」

マスターセイがどこかから歩いてきて

私の隣に座った。

「マスターセイ…」

セイと同じ顔で微笑まれて

私は少し落ち着いた。

「ねえ、未来さん。

もしもあなたのセイが人間と同じになったら

どうする?」

「え?」

私は驚いてマスターセイを見た。

マスターセイは真剣な表情で

私の答えを待っている。

「それは…可能なんですか?」

「今ね、実は開発中なんだ。

セイと同じ生活をしたいだろうなって思って…」

「もちろん、今のままでも十分すぎるくらい

幸せなんです」

少しずつ言葉を選びながら

私はマスターセイに答えた。

「でもセイが私のご飯を食べられたらって

やっぱり考えてしまって…

セイもそう思っているようで

もしそうなったら嬉しくて

でも無理だろうなって…」

「無理じゃないよ。

僕達が現実にするよ」

マスターセイが言いきった時

セイの治療が終わった。


to be continued