01
桜宮とのデート(仮)はもやもやしたけど楽しかったなぁ、と顔をニヤつかせながら先日の事を思い浮かべる。思えば映画で俺も泣いたの見られたかも……?!と顔を青ませる。
いやまぁそんなこんなで、実は今、部活の真っ最中だったりする。
何半田百面相してるの気持ち悪い。と隣から聞こえてきた。マックス後でぶっころす。
とりあえずせっかくの休憩だ、真夏で体温も上昇しとても疲れてるので今はほっとく。
ザクッザクッと誰かの足音が近づいてくる、それは俺の前で止まった。
「半田」
「ん……?」
俯けていた顔をのろのろと上げれば何やら真剣な顔つきの風丸がいた
「話しがある、ついて来てくれ」
普通ではない雰囲気だった。渋々それを了承し、風丸の後ろをついていく
「どうしたんだよ、風丸」
「単刀直入に聞く、お前は花子の事どう思ってるんだ?」
「は、なんだよいきなり……」
「俺は好きだ。」
「……。」
なにかと思えばいきなり桜宮をどう思ってるとか俺は好きだとか何だよ……。訳がわからなくて顔をしかめる
「もうすぐ花子が部活を見に来る」
風丸はすごく真剣な眼差しで俺を見る。やめろ、なんなんだよ、風丸は何が言いたいんだ……?
「帰りに、俺は花子に告白する」
それだけを言うと風丸は去って行った。
桜宮が、来る。帰りに風丸は…………。
はは、なんだ。元から俺の入る隙なんてなかったんじゃないか。
多分桜宮は、頷くんだろうな……。あいつらは幼なじみだし、すげー仲良いし、断る理由なんてないもんな
遊びに誘われたり、少し仲良くなったからって浮かれてた。ホント、ただの馬鹿じゃん俺……。なんでそんな事に気づかなかったんだろう。
自分のデコに手を起き、そのままグシャリと前髪を掴むと、はーっと溜息を吐きその場に座り込んだ。
悔しくて、悔しくて、自分が馬鹿で馬鹿で馬鹿すぎて、腹たった。血が出るんじゃないかと思う程唇を噛み締める。痛みなんて気にならなかった。
グランドで円堂が集合をかけている。気持ちを切り替えるように両頬をバチン!と叩くき、そのまま円堂の方に走って行った。
桜宮が来た後も気分は晴れなくて、避けた。チラッと風丸を見ると桜宮を熱い眼差しで見つめていた。それを見てまた一つ溜息を吐く。
マックスがどうかしたのかい?と声をかけてくれたが曖昧に受け流した。
この時桜宮が少し辛そうにこっちを見ていたなんて俺は知らない。
帰りには風丸が桜宮を誘っていた。その様子をチラッと見た時にばちり、と桜宮と目が会ったのだ。それすらもフイッと逸らす。横目で見えたのは桜宮の辛そうな顔。なんでお前がそんな顔するんだよ。
「は、半田……」
と小さく俺を呼ぶ声がしたけど無視を決め込んで帰路につこうと校門に向かった。
「半田……っ!」
その途中、何者かに腕を捕まれた。走ったのだろう、少し息を乱していた。声で誰だかわかったけどそれも無視をする。
「ねえ、半田ってば!なんで無視するの……?」
「…………。」
「ねえってば!!」
痺れを切らしたのか腕を離し俺の前にやってきてキッと俺を睨む。それを冷たい目で睨み返す
「なんだよ」
予想より低い声が出た。それに驚いたのか少し辛そうに目を見開いた。
「な、んで……無視するの……?」
「どうだっていいだろ?それより早く風丸のとこに帰れよ。」
「どうしてそこに風丸がでてくるの?今話してるのは半田──」
「うるさいな!もういいだろ?!俺に話しかけるなよ!!もう俺に関わるな!!!」
思ってもいないことを口にして叫んでしまった。もう後の祭りだ。桜宮は酷く傷付いた顔をしていた。それに胸が苦しくなる。
ドン、と桜宮を押し退けて帰り道を走って行く。
桜宮が辛そうな声で、俺をよんだ。泣いていた。今すぐ戻って涙を拭いてやって抱きしめてごめん、って謝りたかった。
でも、それは俺じゃなくて風丸の役目だから……。ごめん、ごめん桜宮……好き、だ……。ごめん。
「しんちゃん……?どうしたの?ケガしたの?」
「ふぇっ、転んじゃったの……」
「だいじょうぶ、わたしがなおしてあげる!」
「ほんとに……?」
「いたいのいたいのとんでけー!いたいのいたいのとんでけー!」
「うわぁ、ありがとう――ちゃん!」
「えへへ、またこまったらわたしがたすけてあげる!しんちゃんのいたみは、わたしのいたみ!」
「じゃあ――がこまったらボクがたすけてあげる!」
「「ゆーびきーりげーんまん!うっそつーいたらはーりせんぼんのーます!ゆーびきった!」」
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