「おはよう。」
いつもとなんら変わらない朝、でもその日は何かが違った。


くしごと


「おはようございます、ハオ様。」
「ああ、おはよう。」


適当に部下とあいさつを交わし、僕は足早に彼女を探す。
いつもなら1番に挨拶を交わしてくれる君がいない。
そう気づくのに大して時間は必要なかった。


また一人で何か悩んでいるんだろうか。


彼女のこととなると心がざわざわと煩くなる。
この気持ちは何なのかどうしてこんな気持ちになるのか、それは僕には分からない。


彼女は少し離れた岩の上に両膝を抱えて座っていた。


「おはよう。絢音」
岩の上に上りいつものように挨拶を交わすと、彼女はピクリとその小さな肩を震わせた。
「お、おはよ。」


帰ってきた言葉は何とも短く淡白な言葉だった。
相変わらず膝を抱え、視線をこちらに向けることもない。


絢音が僕を拒絶しているわけではないことは分かっている。
でも…


「隠し事は頂けないな。」
そういうと、絢芽の小さな肩が再びピクッと揺れた。
「僕に隠し事なんて出来ないこと、知っているだろう?」
僕には霊視能力があるんだからね。



すると絢音は少し間をおいてゆっくり話始めた。
「いやな夢を見たの。」
「どんな夢だい?」
僕は分かったうえであえて尋ねる。
君の口から聞きたい、そう思ったから。


「ハオがいなくなる夢。
とても、寂しかった。」
寂しかった、それは一緒に居たい、そういうことで間違いないんだよね?



「ひゃぁ!」
白く柔らかい頬に口づけをすると、絢音は面白いほど可愛い声をだし、顔を赤らめた。
驚いてこちらを見る絢音に優しく微笑み、優しく頭をなでる。


「僕はどこにも行かないよ。」


君を置いてどこかに行くなんて出来るわけがないじゃないか。


僕は膝を抱えたまま、恥ずかしそうに俯く絢音を優しく抱きしめる。
そして、もう1度優しく頬に口づけた…。






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