「待たせたね、絢音。」
声の主はそう言って
自身が乗っていた大きな赤い精霊から飛び降りると優しく微笑んだ。
「ハ、オ…。」
少女は久しい再会に、零れ落ちてしまいそうな涙を堪えると
その名を呼んだ。


ああ、この日をどれだけ待ち焦がれたことか。
本当なら、今すぐ駆け寄って抱きしめたい。
でも彼女の中の何かがそれを拒むのだった。


「遅い!!それに、泣いてなんかない!!」
ハオはあからさまに意地を張り
そっぽを向く少女が可笑しくて微笑した。
「ハハ、君は相変わらず強がりだな。
そんなところもかわいいんだけどね。」


先ほどまであった数mの距離は
気が付けば2人の間に存在せず
抱き寄せられた肌から伝わる熱に
絢音の顔は耳まで紅に染められた。


「そんなこと言ったって、ダメなんだから…。」
「おや?ご立腹かい?」
そんな風にはとても見えないけど。
耳元で囁かれる低音にキュンと胸が締め付けられる。
そんな単純な自分が絢音は悔しくて仕方なかった。



「時間にルーズな男は嫌よ。」
相変わらずぶっきらぼうな言葉、でもハオは分かっていた。
彼女が素直になれないことなんて、いつものことだ。


「じゃあ、どうして僕の腕に抵抗すらしないんだい?」
「…っ」
ほら。


「それは…ハオの力が強すぎるからでしょ?」
「ふーん、なら離れてもいいんだ?」
「それは…!!」
「それは?」


答えを知りながらなお君の言葉を求めている僕は
意地悪かもしれない。
でも仕方ないじゃないか。
可愛すぎる君が悪いんだ。
「それは、ぃゃ…。」


消えそうな声だったがその言葉は確かに彼の耳に届き心に響いた。
ハオは赤らむ彼女を力いっぱい抱きしめ
奪う様に彼女の唇に口付けた。
久しぶりに口付けた唇は思っていたよりも柔らかく、温かい。



そうだ、君が悪いんだ。
たった一言で僕の心を乱す、君の言葉が。
たった一瞬で僕の心を奪う、君の笑顔が。
僕が抱きしめているはずなのに、決して僕を離してくれない君の心が…。


唇の隙間から漏れる吐息に、ハオは満たされた。
そして、名残惜しくも荒い息をする彼女の唇から自身の唇を離す。



「愛してるよ、絢音。君を永久に…。」
「あたしも…愛してる…。」



何にも満たされなかったこの心が
君の一言で君の存在で、こんなに満たされる。


だから来年も、再来年も、その先も必ず僕は君に会いに行く。
そしていつか君を奪いにやってくるよ。
例えそれが神に、G.Sに背くことになろうとも…。


「で、どうして遅くなったの?」
「ん?内緒。」
「えー!!もうハオなんてキライ!」
「嘘をつくのは頂けないな。
こんなに顔を赤くしてさ。」
「…っ///」



光り輝く天の川を前に、僕らの儚いほど短く、果てしなく長い時は流れる。



「ハオのバカ―!!」
「君になら何と言われようと褒め言葉に聞こえてしまうよ。」
「バカ―、アホー、おたんこなすー!!」


言える訳ないじゃないか。
―僕を待つ君が可愛すぎて、見とれていたなんて…



そして彼は深い藍の空に流れる星にを見て願うのだった。


この時が永久に続きますように、と。





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