いつもお世話になっています
まつり達と別れてユエが向かった先は理事長室。荷解きが一段落つき次第来るようにと早乙女に言われていた。
コンコン…
「入ってマース」
(いつも可笑しい気がする…その返事…)
重厚な扉を開け、部屋の中にいた人物は…
現役アイドルでありながら、シャイニング事務所取締役を勤める、日向龍也。
同じく現役公認女装アイドル月宮林檎。
そして謎に包まれた早乙女学園理事長兼シャイニング事務所社長、シャイニング早乙女。
「Ms.月村ー待ってマシター!!」
「ユエちゃーん!会いたかったわー!」
「よう。久しぶりだな」
ユエが小さい頃からの付き合いである面々に、ユエは顔が綻ぶ。
「寮の部屋はどうだったかしら?」
『すごくいい部屋!広かった!同室の人も優しいよ!』
嬉しそうにスケッチブックを見せるユエに、林檎と龍也まで頬が弛む。
「まぁお前の部屋は林檎が気合い入れて吟味してたからな…」
「当たり前よ!ユエちゃんのお部屋だもの!!」
案内された理事長室のソファに腰掛け、話が一段落着いた所でさて、と早乙女は真剣な顔つきになった。
「今日呼んだのはお前の学園生活についてだ」
「ユエちゃんは私が担任するAクラスよ!よろしくね♪」
と、林檎は可愛らしくウインクする。
そう。龍也と林檎は現役アイドルでありながら、学園で教師を勤めていたりする。
「本来お前程の実力なら余裕でSクラスだ。ネット限定でだが歌手活動をしていたぐらいだからな」
「ユエちゃん凄かったものね…ネット上の配信のみなのに、売上げはシャイニング事務所上位層に食い込んでいたから。トップシンガーだった千夏(チナツ)さん…お母さんに負けたくないっていって、yueっていう名前と曲だけであの人気だもの」
「まぁ声が出ない事で配慮だな」
ね、と言って林檎はユエの肩を抱く。
『そうなんだね。りんちゃん、龍さん、シャイニーさんありがとう』
ユエの花の様な笑顔を見て、3人とも拘った甲斐があったと安心する。
「とういうわけで!!Ms.月村!!ミーの学園で青春を楽しんじゃってクダサーイ!!音楽のこともジャンジャン勉強するべし!!」
『はい!がんばります!』
…ユエが退出した後…
「ねぇシャイニー、ユエちゃんに言わなくて良かったの?声が戻れば即刻デビューさせる気だってこと…」
「ミーが言った所で彼女は承諾しませんヨー…頑固な所は母親譲りだからな」
ユエの母親と親しい中だった早乙女は、彼女の姿を懐かしむように目を細める。
「それに…アイツの行方もまだ分かっていないからな…」
早乙女のその言葉を聞いた瞬間、林檎の表情が変わる。それまでの可愛らしい"女の子"の表情は消え去り、浮かぶのは"男"の顔だった。
「あの子ね…ユエちゃんがあの子のこと大切に想うのは分かるけど…俺はユエちゃんを傷付けるだけの存在なら許さないよ」
「林檎…お前…」
林檎の想いに気付いたのか、龍也は難しい顔をする。
「大丈夫。学園にいるときはちゃんと"先生"と"生徒"だから」
そう呟き林檎は切なく笑うのだった。
異なる想いを抱きながらも、3人ともユエを大切に想うのは同じ…。
(大切なアノ子)
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