流転奇譚 | ナノ






「君はよくやるね、強制的なまでに彼女を頷かせたけどそれはインター塾生として学ばさせるためじゃない要するに“保護”だろう?素直にそう言えばいいものを…。」

強引に緋沙奈を自らの部署に来るように手招いたが、匡が考え無しにそのようなことをするはずがない。

緋沙奈に真意を告げなかったがあそこまで強引に迫ったのは彼女を守るために他ならなかったのであり、緋沙奈を思ってのことだった。


「…陰陽省の連中にとってヒナはどうあっても手元に置きたいと考えるだろうからな。ただでさえ土御門家の者であるだけで重要視されるのに、白龍を式神に下しているとなれば奴らが関与しない道理がない。…私欲の為に利用されるのが目に見えている。」

「そうならないために君自らが彼女を引き入れた…かな?」

「まぁな。多少強引でもヒナを守るためなら致し方ないことだ、少なくともこれで陰陽省内でのヒナの身の安全は保障される。陰陽省の連中も俺の部署には手出しはできない。」

第一に考えるのは緋沙奈の身の安全だ。
自分の部署にいれば緋沙奈の身の安全は約束されたも同然。

匡の部署は他の部署とは異質で匡を含め5人だけの少数で構成されている。

しかしその分、陰陽術に長け身体能力の高い高度の術者が揃っており最小の部署でありながら最も優れる部署でもある。
年齢層も20代後半までの者と若く匡自らが人選したこともあり信頼できる者達だけが揃い心配することは何もないだろう。

「先手を打つなら早い方がいいからな。」

緋沙奈に今日までの期間を設けたのも午後から執り行われる就任式にてこの旨を告げるためだった。

無論、匡に向けられるのは非難の声だろう。しかしそれでも陰陽省の幹部であろうとも事実を撤回することは出来ない。

匡の背後に篝という神の存在があることで匡と匡の部署は守られている。
篝が匡を支持する限り侵害することは決して出来ない。

それほどまでに篝の後ろ盾は強力であり、それを知っているからこそ匡は篝を支援者に選んだのだ。

緋沙奈を守る為の地位と、数年前の緋沙奈を拉致し傷を負わせた者達をこの手で捕らえる為に上層部から抑制されない権威が欲しくて篝と取引をした。

緋沙奈を守ること、それは匡にとって最も強い思いであるが同時に“固執した保護欲”でもあった。




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