流転奇譚 | ナノ






「ともかく、話はこういうことだからよろしくね。あぁ、この件においては君の担任にも話しておくから心配はないよ。」

匡の強制的なまでの勧誘に同意する他なく、こうして匡の部署にインターン塾生として配属されることを余儀なくされいずれまた陰陽省の部署に来てもらうと匡は告げたが、緋沙奈は匡の所属する部署について詳しいことを知らずにいた。

匡が陰陽省に所属する国家陰陽師であることは知っているが、実際のところどのような活動をしているのか直接匡に尋ねたことがなかった。

匡の部署にこれから配属されるというのだから、知る権利はあるだろう。


「あぁ、そうだね。当日にうちの部署云々言っても仕方ないな。うちの部署はね・・・「反勢力鎮圧及び妖調伏を専門とする部署さ、陰陽師を生業とする警察みたいなものかな。」

「・・・え、誰?」

匡の言葉を遮り、平然と言葉が紡がれたことに匡は何を勝手に姿を見せているとばかりに不快そうに眉間に皺を寄せ、突如顕れた存在に緋沙奈は困惑していた。

外見は匡より少し上程度だろうか?
首にかかる程度しかない金髪に身軽ないで立ちの青年が部屋の壁に背を預け、ふわりと微笑んでいる。

「はじめまして土御門のお嬢さん?私は篝(かがり)、匡の支援者であり匡の部署に憑く神さ。」

「神さま・・・?」

「・・・篝が神だというのは本当だよヒナ、君は塾生だから知らないのも当然だが陰陽省に存在する部署の全てに支援者という形で神が必ず存在するんだ。」

陰陽省は神の存在の下で成り立っているのだと、初めて聞いた話だ。
神という存在を信じていないことは決してない、実際に緋沙奈の式神に下った千鎖も龍神であり神格を得た神であるのだから神という存在は認めている。

ただ、神というのは滅多なことが無い限り干渉をしない存在だと思っていた。
それがまさか陰陽省は神の存在の下で成り立っていたとは驚く他ない。

「“神降ろし”を知ってるよね?神の託宣を聞くために自身の身に神を乗り移す術式の一種だけど、陰陽省は太古からそれを続けていたんだがとある神を神降ろししたところ、その神は神降ろしをしなくとも助力を与えると持ちかけてきた。当時の陰陽師の長は神の意に承諾し、数多の神は陰陽師に目にみえる形で助力を与えた・・・各部署の長を選定し選定後は部署の長の支援者となることでね。」

神のきまぐれでしかなかった、その事実に人間は気付いていたが神降ろしをするよりももっと身近で効率良く神に助力を求められるならば異論などなく受け入れた。

今では各部署の長を背後におわす神が選定し選定した長に支援者となることで助力を与えており、匡もまた篝によって次期部署の総帥に選定されたのだ。

「つまり俺達は神さまにいいように遊ばれているわけだ。」

「失礼だなあ、私は君を選んだだけじゃないか。実際に私達は選定こそしてもそれ以上のことはしないし、あくまで支援者だよ助力はしても君に託宣と称して命じたりしないだろうに。・・・まぁ、それよりかの御仁が人間の少女に式神に下ったことの方が気になるね・・・ねぇ“白龍王殿?”」

匡の嫌味にも似た言葉を悪い冗談だと篝は笑い、次第にその瞳は小柄な少年の形に戻った千鎖を映していた。

「・・・ふん、貴様には関わりのないことであろうよ。」


“白龍王”と久しくきく名称にぴくりと眉を動かすが、嫌悪と不快が入り混じったように悪態を放ち、神は数多存在しておれども篝という同胞に二度と顔を合わせたくなかった感情であったためか、傍らに緋沙奈にいる配慮をしながらも抑え込められない殺気が全身から滲みでていたが篝は気にすることなく笑うばかりだった。



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