流転奇譚 | ナノ






状況が状況なだけに緋沙奈は混乱するほかなかった。
なぜこういうことになるのだろう?たしか、インターン塾生の話で保留と言っただけなのになぜ壁側に追い込まれるはめになるのだろう?

そして何より匡の目が本気で、全く笑っておらず恐ろしいとさえ思わせる。


「そんなに解らせて欲しいならね・・・?」


不意に匡は壁を塞いでいない自由の利く右手を使いくいっと緋沙奈の顎を持ち上げた。
強制的に匡と顔を見合わせる体制になり、逸らすことが許されない。


「今ここで禁断の教師と生徒の関係築きあげようか?それ以前に俺と君は幼馴染みでもあるんだから問題ないよね?」


一気に自身の顔が青ざめ血の気が引いていくのが容易に感じ取れた。

これはもはや脅迫などではない、自分の望む回答をしなければ許さないとそれ以外の手段などいくらでも行使出来ると“尋問”そのものだ。


「わかりました!お受けします!匡さんの部署にはいりますから!!」


有無を言わせないというのは匡のためにあるような言葉ではないだろうか?
始めから緋沙奈が選ぶものはひとつしかなかった。

同意の声を必死にあげる緋沙奈をみて匡はようやくにこりと微笑んだ。


「よろしい、賢明な判断だね。・・・あぁ、でも俺としてはしもうしばらくこうしていたいなあ?」

「はいっ!?」

「だめなの?ヒナ?」

「だっ、だ・・・!」

『いいわけあるかあぁぁつ!!黙って隠形していれば付け上がりおって!!許さんぞ天斬匡!我が姫に何たる無礼を・・・って何をするか!放せッ!!』


しかし、匡がこれですんなりと解放してくれるほど甘いはずなかった。
表情こそは先ほどと異なり笑っているが、なおも今の体勢を続けようと試みる始末。

一難去ってまた一難とはこのことで緋沙奈はさらに息を呑むが、そこへ隠形をするのに耐えかねた千鎖が小さな龍の姿で顕現し匡に敵意を剥き出し怒声をあげた。

匡との大事な話だというから黙って控えていたがさすがに千鎖も我慢の限界だったようでしゃーっと匡を威嚇しはじめている。

だが匡が「何だ白龍か、相変わらず小さいなぁ。出会った時はあんな巨体だったのに。」と千鎖を意図も簡単につかみあげ観察し始めたのだから千鎖は必死の抵抗を試みるが匡は面白そうに笑うばかり。


しかし、それで緋沙奈は難を逃れることが出来たのだから結果は良かったのだろう。





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