流転奇譚 | ナノ






「主命において其の名を命ず、名を“天狐”よ、授けられし真名は“彩葉”血の盟約に従いて我が声に応えよ!・・・とまぁ、召喚術はこのようになりますね。」


始業式も終わりを告げ、各教室に戻るとホームルームが始まりそのホームルームも終えると今季初の授業が行われていた。

科目は“召喚術”
陰陽師が使役する式神を顕現させることが主な授業内容だが、式神として配下に下す為に術式を学び、式神に下すための知恵と式神として下すだけの力を高める授業でもある。

式神として下っている存在は主に反旗を翻すことはなく個人差はあれども協力的だ。
しかし、それは式神が格下だと認めているからだ。
主が己よりも劣り仕える必要がないと判断した場合は式神に殺される危険性もある。

そうならない為に定期的に召喚試験を行い、教師の監視下のもとで式神を使いこなす術を学ぶのだ。
幸いにして召喚術の担当教師は召喚術の専門家と呼ばれる“天斬家”の当主でもある“天斬匡”なのだから授業中に危険が垣間見えることはほぼないだろう。

まずは復習として正式召喚法で自身の式神を召喚して手本を見せると金色の毛並をと九つの尻尾を持つ人2人は容易に乗れそうなくらいに体長のある狐が顕現した。

種族は天狐と呼ばれる狐で元々は緋沙奈の式神である洸劉と同じ白狐と呼ばれる善狐で、1000年の時を生きたことで神通力と神格を得た存在である。

天狐“彩葉(いろは)”は控える匡の傍らからすっと立ち上がると瞬きひとつすると金色の光が生じ、眩い金色の光が収まったと思うとそこには天狐ではなく女性がその場にいた。

見た目は25、6歳だろうか?
高貴な気品を纏いながらもひだまりのように暖かい優しい面差しで、その容姿は金色の長髪に緋色の瞳をもち、巫女装束にも似た着物を身に纏っていた。

姿形は異なれども、金色の髪や瞳の輝きがさっきまでの天狐が人の姿に転じたのだと汲み取れた。

「正式召喚法はさきほどの私のように本来の姿のまま召喚する術式です。ですが式神は主の声に応える存在なのでよほど強制的に召喚するという意でもない限り必要としませんが高位な妖を、龍神などといった神の眷属である存在を呼びだす場合は必要な術式なのです。」

「それ以外にも儀式や格式を重んじる場においては利用される召喚術ですから皆さんも復習を兼ねて実践してみましょう。でははじめ!」

正式召喚法を用いて無事に己の式神を召喚出来た時点で今日の授業は終了だと匡は言い、生徒各々が匡に倣って一斉に詠唱を唱え始めた。




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