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2人の後ろで様子を伺っていた紗良がコウジに声をかける。

「あの……どうして私の後をつけたりなんかしたんですか……?」

するとコウジは観念したように謝罪した。

「……す、すまねぇ!悪気は無かったんだ……!」

そう言ってその場で土下座すると、事の経緯を説明し始めた。
その日コウジは街で見かけた紗良に一目惚れし、しかし話しかける勇気がなかなか出ず、ついつい後を追ってしまったのだという。
しかし紗良に見つかってしまい、玉砕覚悟で告白しようとした所でカルマと学秀が現れたというわけだ。
ちなみに『覚悟決めろ』というのは、告白する覚悟を決めろと自分に言い聞かせるために言ったらしい。
本当に悪気はなかったようなので、許してあげることにした。

「もう二度とストーカーみたいなことしないって、約束してくれますか?」

紗良は土下座するコウジの前に屈んでそう問いかけた。

「もう絶対にしない。約束するよ……」

それを聞いて、紗良は安心したように優しく微笑んで頷いた。
その笑顔にコウジがますます惚れてしまった事など紗良は知らない。

「ちゃんと謝ってくれたし、悪気はなかったみたいだし……許してあげてもいいよね?」

紗良は振り向いてカルマと学秀に視線を送る。

「……紗良がそう言うんなら良いけど。ほんと、甘いよねー」

カルマは少し不服そうだ。

「仕方ないな。今回は紗良に免じて見逃すが、もしまた今回みたいなことがあったら……解ってるね?」

学秀はコウジに念を押すようにそう言った。

「わ、分かってる、二度とこんなことしないよ。ただ、最後に一つだけ……」

「?」

コウジは紗良を真っ直ぐに見つめるとこう言った。

「君のことが好きだ!俺と付き合っ……」

告白しようとして、思わず途中で言葉を失う。
紗良の後ろに立つカルマと学秀から凍てつくような視線を送られ、ゾクリと背中に悪寒が走った。
これ以上何か言おうものなら殺されそうだ。

「い、いや、やっぱ何でもないっす!!さ、さようならー!!!」

震える声でそう言うと、コウジは逃げるように走り去って行った。

「あ、あれ?行っちゃった……」

紗良はコウジの去って行った方向を唖然と見つめる。

「行っちゃったねー。じゃあ、俺らも帰ろっかー」

何事も無かったかのようにカルマは笑顔でそう言うと、紗良の手を引く。

「僕が家まで送っていくよ、紗良」

すかさず学秀も反対側から紗良の手を引く。

「いや、紗良は俺が送るから浅野クンは帰っていいよ」

「ふざけるな赤羽。君が一人で帰ればいいだろう」

紗良を挟んで言い争いを始める二人。

「さ、3人で仲良く帰ろうよ?ねっ?」

ストーカーの件は解決したが、今度は二人の仲を取り持つのに苦労することになる紗良だった。



ストーカーの時間 end
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