5
映画が終わって戻ってくる頃には、外は真っ暗になっていた。
「じゃあ、僕はこっちだから。紗良ちゃん、カルマ君、また明日」
「うん、また明日」
「じゃね〜渚君」
手を振って渚を見送り、紗良とカルマは再び歩き出す。
「今日は本当、楽しかったね」
「だね。なかなか面白かったでしょ? ソニックニンジャ」
「うん! まさかラストがあんな……。うぅ、また涙が出てきた」
「えっ、また泣いてんの? 紗良も殺せんせーも、あんなベタベタな展開でよく泣けるよね」
ハワイからの帰り道ずっと泣いていたにもかかわらず、再び泣き出した紗良にカルマは少々呆れつつも、ぽんぽんと頭を撫でる。
「だって、ヒロインとお兄さんの気持ちを考えたら……」
紗良は歩きながらハンカチで涙を拭っていると、ちょっとした地面の窪みに躓いてバランスを崩してしまい、転びそうになった。
「わっ……!」
とっさにカルマが紗良の体を支える。
「……あぶなっ。大丈夫?」
「ご、ごめん。ありがとうカルマ君」
「暗いんだから、足元気をつけなよ」
そう言うと、カルマはさり気なく紗良の手を握った。そしてそのまま歩き出す。
「カ、カルマ君……?」
紗良が驚いてカルマの顔を見上げると、カルマは紗良と目を合わせてニッと笑った。
「転ばないように、ね?」
「う、うん……」
先ほど転びそうになってしまった手前、そう言われると断れない。
幸い、夜道は暗いので赤い顔を誰かに見られることもないだろう。
少し恥ずかしいけれど、しっかりと繋がれた手から伝わる温かさに、どこか安心したような気持ちになるのだった。
しばらく歩くと、紗良の住むマンションの前に辿り着いた。
「……もうちょっと、ゆっくり歩けばよかったかな」
カルマがぽつりとそう呟く。
「え?」
一瞬、手を握る力が少しだけ強くなった気がした。
「いや、なんでもない。じゃあ、また明日ね」
「うん……また明日」
繋がれていた手がゆっくりと離され、紗良は少し名残惜しさを感じた。
カルマの後ろ姿を見送りながら、いつもより少し早い胸の鼓動を抑えるように、紗良ははぎゅっと胸の前で手を重ね合わせた。
(……まだ、この気持ちに確信は持てないけれど。たぶん、きっと……)
夜空を見上げると三日月が輝いていて、なんだかいつもよりも綺麗に見えた。
映画の時間 end
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