ジロたんBirthDay2013*仁王雅治の計画3




到着した弘前駅は、運よく快晴!


狭いベッドでぎゅっと抱きしめられながら寝たため、体がちょっと筋肉痛?のように節々が痛かったけど、電車を降りて軽くストレッチしたら幾分身軽になった。
仁王の計画通りにロッカーに荷物を預けて、駅の人に聞きながら銭湯でひとっぷろ。
風呂上りに隣のカフェでモーニングを楽しんで、これから花見に行くのだと告げたら、カフェのおばさんが『かっこいいからサービス』と、サンドイッチを作ってくれた。

これでお昼のお弁当が出来たね!

笑顔の慈郎にきゅんとしたらしく、カフェのお姉さんまでもがお土産と称して自家製りんごパイを包んでくれて、デザートもバッチリ用意できた。
さらに水筒にお茶まで入れてくれようとしたので、さすがにそれは!と断り、帰りに寄れたら寄りますと約束し、バス停に向かった。


弘前公園の桜は見事に咲き誇り、大勢の観光客よろしく満開の桃色を楽しんだ。


登下校で毎日見ていたはずの桜をこれっぽっちも思い出せなかった仁王だが、眼前に広がる桜並木に圧倒され、学校の通り道の並木も、もっとちゃんと見とけばよかったな…と反省。
対する芥川は、しっかりと今年の桜を堪能してきたようで、『代々木も綺麗だったけど、こっちはもっとすげぇー!』と満面の笑顔。
(代々木公園でピクニックをしたらしい)
やれ、新宿御苑、上野公園、井の頭公園、洗足池公園、昭和記念公園…いったいどれだけ花見をしたんだか。
次から次へと今年見に行った公園の名が出てきては、あそこはこうだった、ああだったと楽しそうに話す。
知らぬ間にそんな休みを過ごしていたのかと、そういえば一度も一緒に行ってないことを今さらながら思ったが…
決まって最後に『でも、ここの桜が今までで一番すごい!キレイ!!』と喜ぶものだから、なにやらくすぐったい気分になる。



はしゃぐ彼を尻目に、仁王自身も見事な桜を満喫しながら携帯カメラでこっそりと芥川と桜のショットをおさめていく。

いつの間に仲良くなるのか、同じく観光に来ている子供たちに囲まれて遊びだしたり。
→子供たちの親御さんにお礼を言われ、フルーツやお菓子をいただいた。

バトミントンで遊んでいる近所の中学生に交じって見事なシャトルさばきを披露したり。
→いつのまに『ジロー』と呼ばれ、次々と対戦を申し込まれ、バトミントン部のエースにも勝利したことにより軽くアイドル扱いされていた。

迷子の小さな男の子を肩車して、大声でお母さんの名を呼び、迷子センターに預ける前に両親を見つけたり。
→両親にはたいそう感謝され、聞けば近所で食事処を営んでいるらしく、是非夕飯食べにきてくれと誘われた。
旅館を予約しているので、やんわりと断ると、『明日の昼にでも!』
是が非でもと言ってくれたが、明日も観光に出かけるからーと告げればどうしてそうなったのか『弁当』を作ってくれることになったらしい。
(明日は旅館でたらまず弘前駅まで出てきて、弁当を受け取ってからお出かけだな…と決まった)

風に飛ばされた手ぬぐいを拾えば、持ち主である地元のおばあちゃんと遭遇し、弘前の桜や歴史についてこんこんと語られ、それに付き合っていたり。
→ばばの長話に付き合ってくれてありがとう、とこれから孫宅へ向かうための土産から丸まるリンゴをパイで包んだ人気菓子『気○なるリンゴ』をくれた。
(お孫さんのお土産でしょ?と遠慮したが、いいからもらってくれというので、素直にもらってみた)



その他にも、仁王がトイレにいっている間、桜に背を預けてうとうと眠っていた彼の周りに次々と集まるお供えものの数々…。

顔見知りになったバトミントン部の地元中学生らからのものもあれば、そのほかの観光客からも置かれていたらしい。
リンゴジュース、缶ジュース、ポテトチップス、ポッキー、リンゴパイ、コンビニのおにぎり、りんご(生)、バナナ…


そういえば学校でも、中庭や裏庭、屋上で寝ていて起きると、誰かが置いてくれているのかお菓子やジュースがポケットに入っていたり、そばに置かれていることがあると言っていた。


てっきり彼を知る生徒からの貢物で、あくまで氷帝内のことだと思っていたが…まさか、見知らぬ人ばかりの地でこのような光景を見るとは。



「本当、飽きないぜよ」


一緒にいると、次々とイベントが起こる。
誰もが彼といると、笑顔になって、構ってくるところが凄いと思うし、その存在は太陽のように皆を照らすものなのだな、と誇らしい気持ちにもなる。
たいした吸引力だ。


「ほら、起きんしゃい」

「…ん…おかえり」


パチっと目をあけてにこにこ笑顔の芥川慈郎。
周りに置かれた貢物の数々にびっくりしていたものの、慣れているらしくポケットに入れていたエコバッグにお菓子類を入れる。


「すごいな」

「不思議だよねぇ。外で寝てると、皆なんかくれるんだよねぇ」


お菓子をつめる芥川をじっと見つめていた小さな子供に、にこっと笑顔でポテトチップスを渡した。
ぱぁ〜っと笑顔になる子供にバイバイして、仁王とともに歩き出す。


「そろそろ行くか?」

「うん。いっぱい遊んだ!」

「「「あぁ〜、ジロちゃんだー!!」」」


先ほど一緒に遊んでいた子供たちにまた会ってしまった。
遊ぼうと誘われたが、そろそろ宿に行かないと、と告げる芥川に一斉に『えぇ〜』と残念がる。


「夜もすんごくキレイなんだよ?弘前の桜」

「夜もきなよ〜」

「あはは、ありがと。来れたらね〜」


芥川の手を引いて『また遊んでね?』とお願いする子供たちを、名残惜しみながら。


「ジロちゃん、ばいば〜い」

「うん、ばいばい!またね〜」

「まさくんも、ばいば〜い!」

「兄貴〜、楽しかったよー!」

「そりゃよかった。気をつけて帰りんしゃい」


芥川と遊んでいた子供たちだが、仁王が連れとわかると桜の木を背に腰掛けていた彼を引っ張り出してきて巻き込まれた。
サッカーボールを追いかけまわし、日本代表ごっこに付き合ってあげたし、プロレスごっこもつきあった。
一人一人持ち上げてブンブン回してやると、男の子たちはこぞって仁王にむらがり、頼れる兄貴的に次々プロレスを申し込まれた。
(対する芥川は女の子たちにつきあって遊んでいた)

そのおかげか、遊び終わる頃には『ジロくん、ジロちゃん』に対して、『兄貴、まさくん』になり、ずいぶん懐かれたものだと顔を見合わせ、笑ってしまった。




子供たちと別れ、夕暮れの桜並木を肩を並べ歩く。

急造の旅で、どうなることかと思ったけれど、家族の協力でなんとか間に合った。



到着した見知らぬ土地でも、出会った人たちは皆優しくて、いろいろくれて(芥川効果で)。
弘前公園の桜は満開で、キレイで、見事の一言に尽きる。


君が楽しんでくれて、喜んでくれてよかった。


今夜の旅館も、姉が太鼓判を押す素晴らしい宿だというし。
夜も楽しみだな…



思いを馳せて、いくぶん早歩きになりつつバス停へ向かう。
到着することには、宿からの迎えもくる頃だろう。


着いたらちょうど夕餉時だ。
最初に大浴場に入ってサッパリしたら、お部屋で夕食を楽しんで、その後は部屋の露天風呂に…一緒に入るとしようか。

明日は朝ゆっくりしてから出かけよう。
おっと、弘前駅で『お弁当』を受け取ることも忘れずに。



「仁王、ありがとう」


公園を出るときに、はにかんだような笑顔で呟いた彼に、温かい気持ちがわいてくる。
金色のふわふわした頭をポンと撫でてやると、気持ちよさそうに目をとじた。
思わずキスしたくなったけど、…夜までとっておこう。




「今夜は寝かせんぜよ」

「……バカ」



耳元で呟くと、顔を赤くした彼にぽかんと叩かれた。





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