ジロたんBirthDay2013*仁王雅治の計画2





「すっげぇ〜見てみて仁王!!座席、広いね〜」



−2泊3日で温泉に行こう


一文メールに、にすぐさまノってくれた恋人と、笑顔で送り出してくれた彼の家族に感謝感謝。
5日の夕方には戻ってくる、と誕生日当日の夜は家族で過ごせるよう配慮して、5月2日の夜・上野駅集合となった。

奇跡的にとれた温泉旅館は、目的地の花見場所から離れたところにあるが、ちゃんと送迎の予約を入れて花見後の最寄駅まできてくれる手はずも整っている。

全てはあの手この手を使い、宿を押さえてくれた姉(とその先輩)に感謝だ。

どうやって予約を入れたのかは知らないが、秘境の旅館は1部屋が広い作りかつ各部屋にテーマ別に露天風呂を設け、大浴場に行かずとも楽しめる工夫を凝らしている。
また、お忍びでやってくる著名人も数多くいるらしく、完全プライベートが保たれ、大学生と中学生に見えようが、男同士だろうが、好奇心の目で見られることも無い(らしい)。
仁王としては『男同士ですが何か?』の精神で、特に気にすることも無いのだが。
大事な恋人があれこれ言われたりするのは歓迎できるものではない。
(といっても、かの彼もそういう視線に臆するタイプでは無さそうだが)



「寝台が満席だったのが残念じゃけぇ」

「えぇ〜?ここでも十分だよ〜ねっ転がれるし」


布団も枕も無いから心配したが、いつも持っているらしい毛布をごそごそとかばんから出して、平気!と笑う彼が愛しい。


宿は押さえたのでいざ移動手段!
と探してみたが、あいにくいい時間帯の新幹線は満席で、空路は本数も少ないためかようやく空きが見つかっても3日の夜に到着する便しかなかった。
5日の帰りは早めに現地を出ないといけないので、3日は何としても午前中…せめて、昼には到着したい。
鈍行を乗り継いでいくとしても、1日かかってしまうな…と悩んだところに、宿を見つけてくれた姉からの『寝台は?』の一言。

すぐさま調べた『寝台特急あけぼの』は、前日の5月2日夜に上野駅を出発〜新潟・山形・秋田経由で弘前に翌朝着、と見事に希望と一致する時間帯。
さらに、直前にキャンセルが出たようで、奇跡的に2名分押さえられた。
寝台から毛布、スリッパ、枕…と全てのアメニティを排除したクラスで、通路からはカーテンで見えないようには出来るけれど、声は駄々漏れな『ゴロンとシート』である。
通常の寝台より安いため、繁忙期にもなるとこちらの方が先に埋まるらしいのだが、予約状況を聞きに緑の窓口に行った際、『ちょうど2席キャンセルが出ましてね〜』と予約できた唯一の席だ。


室内を覗いてみると、…なるほど、寝具を一切無くした寝台、ともいえる。
上下にベッドが配置されていて、寝っ転がれるがシートだけがある状況。
温かい季節になったので何もなくても大丈夫といえば平気だが、まだまだ夜は肌寒い…というか、一枚くらい何かかけていたいところだ。


「どっちがいい?上?下??」


どうやら寝台のベッドを指しているらしい。
キラキラした目で上のベッドを見ている。
そうか。
上で寝たいんだな。


「好きな方にしんしゃい」


どうせ上がいいんだろ?と続けると、満面の笑顔で上のベッドによじ登った。


おやすみ〜!

続いた声に、寝るには早くないか?と携帯を見たが、時刻は21時半をまわったところ。
まもなく彼の就寝時間にも入るというもの。
まぁ、やることもないし。


下のベッドにごろんと仰向けになり、まぶたを閉じる。
あいにく眠気はちっとも襲ってはこないが、あと約12時間もおつきあいする寝室だ。
話し相手…にはなりそうもない、すぐさま夢の中にいくであろう恋人を、自分が眠くなるまで付き合わせるのもなんだし。
誰かに電話して時間をつぶそうとも思ったが、声が駄々漏れでは他の客にも迷惑だし、今にも寝るであろう彼を起こしてしまう。
(ちょっとやそっとで起きないタイプではあるけれど)

なんてあれこれ考えていたら、上から顔がにょきっと出てきた。


「ねぇねぇ、仁王。寒くない?だいじょうぶ?」


見ると、自前の毛布をかぶってこちらをのぞく彼の姿。


「芥川は平気か?」

「毛布あるから暖かいし、だいじょうぶ」

「風邪ひかんようちゃんとかけて寝んしゃい」

「そっちは?」

「別に寒くはない」

「そっか…」

「眠いんか?」

「ちょっとね」

「寝てたらあっとういう間に着くし、もう寝る時間じゃろ?」

「うん」

「ほら、俺は大丈夫だから。寝ときんしゃい」

「うん。…おやすみ」

「おやすみ」



彼が寝やすいように電気を消してあげた。
じっと目をとじていれば、じきに睡魔がやってくるだろうと横になり、明日の予定を一からおさらいする。
着いたら、まずロッカーに荷物預けて、朝ごはん食べに行って。
姉ちゃんに教えてもらった、モーニングが美味しいカフェに行って、隣にあるらしい銭湯で軽く朝風呂でもあびるとして。
それから、バスで今回のメイン・桜が満開の公園まで移動して。
お昼に弁当を買ってから行ったほうがいいか、それとも屋台で何か買おうか…どっちが喜ぶかな?

満開の桜を背景に、笑顔の彼でも携帯写真におさめて。

協力してくれた姉と、自宅と、彼の家族のお土産は何がいいかな?
帰りに駅周辺で買うか、それとも温泉旅館のお土産店にしようか。
やっぱり食べ物がいいかな?
土地柄りんごがメインのお菓子類が多いけれど、彼の妹は小学生だし、お菓子よりも桜モチーフの小物やアクセサリーがいいだろうか?
自分の弟はー…まぁ、家の土産はお菓子でいいか。
(なんせ両親は恋人との旅行をOKしてくれただけでなく、父は母に内緒!とカンパもしてくれたことだし)

上野駅まで車で送ってくれた姉は、入り口で待っていた金髪の彼を見て、『やっぱり…』となにやらゴソゴソ呟いていたが、何も聞くことなく送り出してくれた。
しかも『ジロくんによろしくね』とご飯代(小遣い)までくれたり。

帰りの列車は予約できなかったけど、当日までキャンセルが出なければ、とりあえず鈍行でも何でも帰ってこれる、と楽観的に考えることにした。
いざとなったら仙台か、酒田まで出て、そこから乗り継いで帰ればいい。



到着〜帰りまでの予定、ルート、やることを羅列して、整理して…


と考えているうちに、やっとうとうとしだした仁王は、襲ってきた眠気に身を任せてゆっくりと就寝の床につこうとした。
…矢先に、上段でごそごそと聞こえたと思ったら、上で寝ている彼が降りてくる。


「芥川…?」

「…トイ…レ…」

寝ぼけているのか、呂律が若干まわっていないが。
場所だけはしっかり覚えているらしく、『い…てき…ま…す』とつぶやき、カーテンをあけて部屋を出て行った。

まぁ、すぐ戻ってくるだろう。



そのまままぶたを閉じて、力をぬいたら無音の室内が後押しするのか、眠気もちゃんとやってきた。

おやすみなさい。








数分後。
トイレから戻り室内に入ると、下段ベッドの端っこで丸まっている仁王の姿が目に入ってきて、上段に上がろうとした手が止まった。


(仁王、さむいのかな…)


寒くない、平気と言っていたが、普段は自分より寒がりだし、冬の間も薄着に見えてヒートテックを手放さない彼だ。
(お泊り時にいざこれから!という時、制服を脱いだ彼が全身下に着込んでいたときは、悪いが笑ってしまったほど)


毛布、かけてあげようかな…



でも、そうすると自分が寒い。


もっと広いベッドだったら一緒に寝るんだけれど、寝台列車のベッドはせまく、中学時代より横も縦も伸びた自分たちが2人寝るにはキツイものがある。
彼も自分も華奢な方ではあるけれど。。


さて、どうしたものか。


じっと横になっている仁王を見つめ、その隣のスペースを見て、いけるかどうか考える。
せまいスペースに潜りこんで…彼は『しょうがないな』と笑うだろうか?
上のベッドへ行け、とは言わないだろうけど。


どうしようかな…?

なんて考えても、自分も眠いっちゃ眠い。
それに、こんなことでぐるぐる考えていたら、彼はきっと笑って、両腕広げて迎えてくれるだろう。
『考えるなんて、らしくないぜよ』ていうに決まってるんだ!


そう思うことにして、上段ベッドから毛布を引き寄せて、下段ベッドの壁にピタっとついて寝ている彼にかけてあげた。
そのままその隣にもぐりこんで……うん、思ったよりは狭くない。
(確かに狭いけど、落ちるほどではない)


かけてあげた毛布の中に忍び込み、彼の隣にくっついてまぶたを閉じた。
途端にびくっと反応があり、丸くなっていた彼が起きたであろうことがわかったが。


「…芥川?」

「オヤスミ」

「狭くないか?」

「オレは平気だもん」

「そうか」


そっと腕を回し、引き寄せてくれる仁王に身を任せた。
潜り込んだ小柄な彼を抱きしめると、枕代わりにしいた左手で金糸の髪をなでてくれる。


「苦しかったら言いんしゃい」

「ん……あんがと」


クッと上あごを持ち上げられ、間近に迫ってきたのは彼の端整な顔。


「おやすみのチュー」

「んっ…」


あわせた唇はひんやり冷たくて、やっぱり寒かったのかな?と一瞬浮かんだ。
けれど、隙間から入ってきた舌で口内を犯され、思いっきり吸われると、気持ちよさと気恥ずかしさでいっぱいになる。


「あ…ンっ…」


『おやすみのチュー』にしては激しくないか?
と思わず両目を見開いて、抱きしめる彼に抗議するが・・・聞いちゃいない。
むしろ、空いている右手でわさわさとお尻を撫でてきて―


「痛っ」

「もう!」


怪しい動きをしていた右手をぎゅっと抓り、手を離させた。


「こんなとこで、ダメ」

「…さわりたいんじゃがの」


にやにやイヤらしい笑みを浮かべたため、彼の頬に両手をきゅっと添えて、軽くチュっと音をたてて口付けると、一言『おやすみ!』と告げて胸に頭を預けた。
くすくす笑いながら抱きしめる力が強まり、このままの状態だと苦しくなっちゃうかも…
なんて思いながらもそのまま眠りにつくことにした。

寝入った頃にイタズラをしてこないよう願いつつ。





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