オマケ♪♪キリリク『0604』





「なんだよ、ハレンチって」

「不純異性交遊にうつつを抜かすとは!」

「同性じゃがの」

「……仁王くん、黙っていたまえ」


免疫が無い立海の皇帝は、慣れない話題かつ少し生々しい話に、頬を染めて声を荒げた。
だが。
部活に関しては真田の怒号に従っている丸井も、オフ――というか、コイビトのことに関しては一歩も引く気はないらしく。


「付き合ってンならとーぜんじゃん」

「つ、つきあうなどと!」

「俺らコーコーセーよ?恋人いりゃ、ヤルことヤるっしょ」

「な!なにを…」

「ブン太、やめんしゃい。相手はおぼこぜよ」

「真田くんには刺激が強すぎます」

「これ以上は後が面倒くさくなるだろ(俺へのとばっちりが)。」



詐欺師は、このことが後の部活で『連帯責任』となり、真田に鬼メニューをかされることを嫌った。

当人の目の前で言うのもなんのその。紳士は純粋に思ったままを告げた。

ダブルスパートナーは……とばっちりで鉄拳制裁を受けていた中等部の頃とは違い、多少は言えるようになっていた。




「貴様ら……そろいもそろって、たるんどる!!」




これ以上ないくらい顔を真っ赤に染めて、怒髪、天を衝くとはこのことか。
いただけない発言をした3人を張本人以上に睨みつけ、さらに怒鳴ろうとしたところ、隣の後輩が割って入ってきたため風向きが変わった。



「芥川サンの、どこがそんなにいいんスか?」


純粋な疑問なんスけど、と続ける切原に、おや?と意外そうに後輩へ視線を向ける3人。
(注:紳士、詐欺師、苦労人なのは言うまでもない)


「なんだよ、急に」

「いっつも寝てばっかじゃないッスか、あの人」


切原赤也の思い描く芥川慈郎とは、まず他校・氷帝のシングルスプレーヤーということ。
中等部入学のときから気にかけてくれて、面倒をみてくれた一つ年上の先輩のコイビト。
いつも弟のように可愛がってくれて、一緒にゲームセンターにいったり、買い食いしたりと何かとかまってくれる先輩。
直接口に出して告げたことは無いけれど、慕っている先輩に違いなく。
多少どころかかなり傍若無人でジャイ○ンな人だけれど、食い物が絡まなければ優しくて頼りがいのある、いいお兄ちゃん的な存在だ。

そんな先輩にある日、コイビトができた。

それはいい。
他の先輩や同級生にだって、彼女くらいいる。
自分だって付き合っているヤツがいたこともある。

けれども。

なぜ、相手が他校のアイツなのだ。


「寝てんのも可愛いから、いいんだよ」

「カワイイって。男っスよ?」

「ああ゛?」



男女、男男、女女とか、そういうことは関係ない。
先輩の趣向にどうこういうつもりは無いし、そういうカップルに対して思うこともない。
本人たちが良ければいーじゃん、とリベラルな感覚なのは自覚している。


そういうことではない。


切原赤也の思い描く芥川慈郎。
中学時代、週一ペースで立海のテニスコートにあらわれ、フェンス越しに丸井へ声援を送っていた。
練習後は丸井とどこかへ行ったり、たまに自分もまじえてファーストフードや牛丼屋でご飯をたべて、ゲームセンターで遊ぶこともあった。
あの時は楽しかった………のは間違いない。


ただ、二人が『お付き合いはじめました』時から、徐々に何かが変わっていった。


「だいたい、いっつも『すぐ寝る』って文句言ってるじゃないッスか」

「あー?まぁ、すぐ寝るのは確かだけどよ」

「待ち合わせてんのに、寝ててこないって、どーなんスか」

「しょうがねーだろい。あいつはいい昼寝スポットがあると、本能で寝ちまうんだから」



彼らが親しい友人同士になる前は、学校と部活のない日の祝日やたまの日曜は、自分がこの先輩と遊んだり、公営テニスコートで打ち合ったりしていた。
『先輩』なので、親友や友人とはやっぱり違うのだが、それでも一緒に遊んだり、ご飯いったり、ゲームしたり。
そうやって過ごしてきた時間が、多少なりとも減ったのは事実。


もちろん、彼らが付き合いだしてからも変わらず誘ってくれたし、最初は一緒に出かけたりもしていた。
だが。
そういえばこの二人、つきあってんだよな。


意識したときから、もうだめだった。


邪魔するのも何だし、とガラにもなく遠慮していたら、やがて一緒に過ごす時間そのものが減っていった。
パートナーなジャッカルや、クラスメートの仁王には負けるかもしれないが、それ以外で一番先輩と仲が近いのは自分だ、とどこか持っていた独占欲?


根こそぎ持っていかれた気がした。



「だいたい、いっつも練習見に来るけど、そんな気楽でいいのかよ」

「あん?」

「そんなんだからシングルスで負けるんスよ」

「この前の都大会個人戦のこと言ってンのか?それなら、お前も不二に負けただろーが」

「…中学の時だし、2年も前のことッス」

「仁王も全国決勝で負けたしなー」



「……引き合いに出すんじゃなか。2年前のことじゃろ」



芥川という人は、漫画好きでゲーム好きで、……趣味は合う。
中学時代、一緒に遊んでいるときも、ゲームセンターで白熱した対戦を繰り広げたし、コートで打ち合っているときも、楽しそうな彼とやっていると自分も純粋に、楽しんでテニスができた。
他校生だけど、先輩を通して仲良くなれて。
メールアドレスも交換したし、大会で会えば先輩がいなくても話をすることもあった。

ただ、メールを送っても全然返してくれない。
会うと人懐っこいのに、対照的にメールでは冷たい……ワケではないが、無視されている感が否めない。


少なくとも、好感を持っていたし、慕っている先輩とともに遊んでいるときは、確かに楽しかった。


二人が高等部に進み、自分は中学のままで。
立海では高等部との合同練習や試合も度々あるし、なんだかんだで高等部は同じ敷地内にあるため、先輩方と疎遠になることは無い。
だが、週一でフェンス越しに現れる彼を見なくなった。
思えば高等部のテニスコートに姿を見せているので、中等部のコートで見ないのは当たり前なのだが。

それでも、交流が減って少し寂しい気持ちもあったが、度々会う丸井から聞く話が、


―あいつはちっともこちらの気持ちをわかってない。
(たわいも無いことでケンカしたらしい)

―氷帝と違って立海は厳しい練習でクタクタだから、あいつがこっちに来るのが当然なのに云々。
(氷帝が練習オフの日に、芥川が見学に来なかった際に出た言葉。まるでジャイ○ンな台詞である)

―待ち合わせにこないし、寝坊するし、電車乗り過ごして全然違う方向に行ってて探し回ったせいで1日が終わった。
(そもそも見知らぬ駅に降り立つも『一人で戻れる』と冷静に言う芥川に、『いいや、迎えにいく!』と聞かなかったのは丸井らしいが)

―すぐへばる。これからって時に寝るし、そういうときはどんなに揺さぶっても絶対起きない。
(どんなときか切原はわかっていない)


当時、これら数々の話をともに聞いていたジャッカルはため息を零し、仁王は心頭滅却とばかりに目を閉じて黙っていた。


純粋なのか、お子様なのか。
切原は、その全てを額面通り受け取ってしまい…


慕っている先輩に、なんという仕打ち。


とばかりに、好意を持っていたはずの他校の彼に、文句の一つでも言ってやろうかと思ったんだとか、いないとか。


慕っているお兄チャンを取られた独占欲か。
仲が良かったのに疎遠になってしまったことから、好意を持っていた当時の気持ちが薄れたのか。
高等部のコートには顔を出すのに、中等部にはきてくれないことが面白くなかったのか。



「どうしたんだよ、急に。お前だってジロくんと仲いいだろ?」

「知らないッスよ」

「よく遊んだだろーが」

「別に。ただ丸井先輩の後ついてきてただけでしょ」

「あんだと?」

「漫画読むのも遅ぇし、ラリーしても体力ねぇし、いなくなったと思ったらどっかで寝てるし、ありえねぇし」

「…もう一回言ってみろ」





何やら可笑しな雰囲気になってきた。







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