オマケ♪♪♪キリリク『0604』




後輩の口調が攻撃的なのはいつものことだし、それを宥めるのも、聞き流すのも慣れたものだけど。
こと、攻撃を受けているのが、惚れに惚れ込んでいる―といっても過言ではない、愛しのコイビトとなれば、話は別だ。


(…どうしたんでしょう、切原くん)

(止めたほうがいいんじゃねぇか?ブン太、目が据わってきてるぞ)

(ブン太に食ってかかるとは、珍しいの〜)

(仁王くん!面白がってないで、止めたまえ!)

(見守るのも先輩愛じゃけ、放っといてみんしゃい)

(なぁにが先輩愛ですか!)



「あのなぁ、ジロくんが漫画ゆっくり読むのは、俺らみたいに斜め読みで流してんじゃなく、端から端まで丁寧に背景も効果音も全部見てるからなんだよ!
お前、ジ○ジョのスタンド名全部言えンのかよ!」


(…これは、フォローなんでしょうか?)

(あー言ってるけど、ブン太もしょっちゅう漫画読むの遅いことはネタにしてんだよな)

(芥川は雑誌派じゃけん、単行本はじっくりと読むほうだと本人が言ってたがの)



「持久力の無さはだいぶ克服してきたし。っつーかお前、最近ジロくんと打ってねぇだろ?アイツが体力ないのは、
――ベッドの中だけだ!!」


(……切原くんに言うことですか?)

(ブン太……)

(赤也はわかってないから平気じゃろ。…真田もか)



「それに、寝顔はトップ3に入るアイツの可愛いところだ!!寝てていーんだよ!」



(……何のトップ3なんでしょうか)

(芥川の『可愛いところ』だろ…)

(これ、何回目になるんかの……もう、覚えたぜよ)


寝顔、笑顔、アノ時の顔


このことを話すたびに順位が入れ替わってはいるが。
ちなみに次点はテニスをやっているときのハツラツとした顔らしい。


「おい……何なんだ、これは」


怒涛のやりとりにすでについていけてない真田だが、さすがに時刻を見てまずいと感じる。
柳生が受け取った幸村からのメール、『準備しておくように』に取り掛かるどころか、買出しすらも終わっていない。

一箇所にかたまり、こそこそと話してる3人になんとかするよう視線を投げた。



「さて、いい加減に止めるとするか」

「…見守る先輩愛じゃないんですか?」

「こんなところで突っ立ってる場合じゃないしな。スーパーに行かねぇと」

「そういう事じゃけ」


つかつかと歩みより、仁王は切原を、ジャッカルは丸井を止めにはいる。


パシっ!


「痛ぇ!」

「いい加減にしんしゃい」

「仁王先輩は関係ないっしょ!!」

「黙らんと、幸村に報告するがえぇんか?」

「ーっ!!」


絶対的な王者の名前を出されたら、黙るしかない。


「ヤキモチやいても仕方ないぜよ」

「誰がやきもちなんてー」

「ブン太が芥川しか見えてないのは、わかるじゃろ」

「……」

「お前のことも、可愛い後輩なのは変わりない」

「え…」

「恋人は恋人、友達は友達」

「……」

「大事な先輩が取られた気持ち、か」

「!!」

「我慢しんしゃい。すぐに慣れる」

「……」



もやもやした気持ちは、いつか晴れるのだろうか?
世慣れた先輩の言うことだから、そうだろうと思える気もするけれど。



「芥川のことも、好いとったじゃろ」

「…別に」

「今度あったら話てみんしゃい」

「会わねぇし。だいたい、あの人きても丸井先輩しか見てねーじゃん」

「……なるほど、そこにも妬いてるんか」

「だから、誰がやきもち―」

「接したら変わる。ブン太の言う『可愛い』もあながち、あいつの惚れた欲目ばかりでもないけん」

「仁王先輩まで…」


彼の持つ、温かい雰囲気と、その笑顔に癒されるのは、実感したことがあるだろう?と告げれば、切原としても覚えがあるようで…視線を外し、下を向いた。




「ったく、何なんだよアイツは」

「落ち着けって」

「あいつだって散々ジロくんと遊んだのによ」

「…寂しいんだろ?」

「はぁ?」

「去年高等部にあがってから、あまり遊ばなくなったよな」

「しょーがねぇじゃん。中等部は校舎違うし、部活の時間も合わねぇだろい」

「中学ん時は昼飯食ってたりもしたけど、できなくなったし」

「普通、高等部の校舎まで昼飯食いに来ねぇよ」

「…そうじゃねぇよ。お前と赤也、仲よかっただろ?」

「ジャッカルもだろ」

「まぁな。でも、お前は芥川といるようになって、赤也よりあっちといるほうが増えただろ」

「そりゃ、そうだろい」

「あいつは寂しいんだよ」

「…なんだよ、それ」




「お前、何かと赤也気にかけてたし、面倒見て可愛がってただろ?」

「……」



「親しいお兄チャンが、取られたような気持ちなんだろーよ」

「……」



「わかってやれよ。な?」

「……」



そういえば、日曜や祝日、部活が珍しく休みの日は、後輩とよく遊んでいた。
ジャッカルや仁王がいることもあれば、二人のときもあったり。
生意気な後輩だけど、一つとはいえ年上の自分から見ると可愛いモンだし、3強に突っかかっていく姿を見て刺激ももらった。

自分としてはいくら恋人ができて、大事な人ができたとしても、後輩との関係は変わるものではない。
高等部に進学してきて、また同じテニス部の先輩・後輩となって。

部活後にファーストフードやファミレスで腹を満たしたり、遠征のバスで隣に座り、カードゲームに興じたりひたすら話するのも、変わりない。

…と思っていた。


つきあいはじめは、友情の延長のようなものだったから、祝日に遊ぶときにジャッカルや仁王、切原が交じることは多々あった。
それがやがて、誘ってもみな『二人っきりでどうぞ』と断られたりしているうちに、恋人と二人で過ごすのが定番になっていた。



「別に休みの日に赤也につきあえって言ってるワケじゃねぇけどよ」

「……ん」

「妬いてヘソ曲げてンだってことをよ」

「…十分わかった」

「あいつのこと、怒るなよ?」

「わーってるって」


ごめんな。
お兄チャン、ついつい何も変わらないって思ってたけど、お前は受け止め方が違ったんだな。



少しくすぐったい気持ちと、照れくささが入り混じる。



仁王のそばで下を向いている切原に近づくと、彼の一番のウィークポイント……といっていいものか。
うねうねした黒髪に手をおいて、ポンポンと数回たたき、顔をあげさせる。



「ほら、買出し行くぞ?」

「……」

「ジロくんは大事な大事なコイビトだ。それは変わんねぇ」

「……」

「でも、お前も大事な大事な後輩だ」

「……!」

「赤也。お前は俺らの舎弟だろい」

「……舎弟って何スか」

「ぐだぐだ考えてんじゃねーよ。お前は一番の後輩なんだから」

「いちばん…」

「おう。可愛い後輩だろ」


ニィっと笑みを浮かべ、ワカメヘアをごちゃごちゃにかき混ぜる。
最新の注意を払ってセットした髪をぐちゃぐちゃにされ、文句を言うが、いつもの調子になった先輩は、お構いなしとばかりに再度頭をぶったたく。


「痛いッス!」

「おめーは考えてもムダだろい」

「なんですって?!」

「先輩の言うこと聞いてりゃいーんだよ。ってことで、籠2個もってこい」


スーパーの入り口が見えてきたところで、後輩の背中を蹴飛ばした。


「痛ッ!ったく、横暴なのは変わんねぇし」

「あんだと?」

「なんでもねぇッス」

「おら、カートを引け!」

「引いてるっつーの」

「急がねぇと間に合わねーな。比呂志!」


後ろからついてきていた4人の中で、買い物リストをまとめているであろう同級生に声をかける。


「分担したほうがよさそうですね」


野菜担当、肉担当、ドリンク担当、その他担当……と、細かく分類し、買うものをそれぞれの携帯に、それこそLI○Eで飛ばして各自散った。



その他担当となった丸井の後ろを、カートを引く切原が着いていく。
(曰く、『その他担当』が一番細々していて、手で持つのはキツイから、とのこと)



「乳製品コーナーで生クリーム二つとってこい」

「丸井先輩はどーするんスか」

「フルーツ選別中だ」

「ケーキの?」

「おう……って、とっとと行け!」

「あーはいはい」



なんとなくいつもの調子に戻った二人を、ヤレヤレと見つめるほかの2年生たち。
これで、次に芥川が立海の練習を見に来るときに、何か変わるのだろうか。

多少はスッキリしたらしい切原が、氷帝の彼を攻撃することは……無い、と思いたいが。



10分で買い物を切り上た6人は、急いで幸村宅へ向かった。
到着して早々、キッチンでデザート作りを開始した丸井に、ミーティングのセットを担当するのは仁王。
バルコニーでバーベキューセットを組み立てるのは、真田と切原の師弟コンビだ。
柳生は幸村とメールで連絡を取りつつ、丸井のデザート作りや仁王の映像セッティング、さらにはバーベキュー、と雑用をこなしたらしい。


…が、急いで買いすぎたためか、若干の買い忘れが生じたようで。



「赤也。スーパー戻って、パプリカとマスタード買ってきんしゃい」

「えぇ〜!?無くてもいいッスよ、それ」

「ソーセージにはマスタードがつきもんだろい。ほら、行け!」

「15分以内に買ってこい」

「ちょっ、短っ!!」



『慕っている先輩』がキッチンから声をあげれば、『諭してくれた先輩』はミーティングの資料を見ながら、シッシッと手を振って促す。


「わかりましたよ!ったく」

「「15分以内な」」

「ハイハイ」



玄関で靴を履いて、出ようとしたところで柳生に2000円握らされる。
さらに、お釣りはお駄賃として取ってよしとの許可が出た。



15分どころか30分以上かかって戻ってきた際に、罰としてお使いを言い渡された二人の先輩により没収されるのだけれど。








(終わり)

>>目次

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この後、芥川サンとバッタリ会って突っかかるも、殺人的に可愛い笑顔と優しいニオイにすんなり棘が取れ、やられてしまったようです。>柳誕生日話本編
芥川サンに送るメールが返って来ない誤解も解けるかしら〜


キリバンリクエスト作品、ラッキーナンバー『0604』
柳誕生日番を踏まれた“めんたいこ”さんリクエスト話……のつもりです!>え。

【立海R陣にここぞとばかりにのろける丸井くん】

とのことで、ご希望内容に沿ってますでしょうかー!?って、R陣、足りない…!幸村くんと、参謀がおらんやんけ…!!>ジロくんと一緒にいた、ということで。

ノロけているというか、買い言葉的に言い合っているだけになっている…?いいや、そんな…!


このサイトにカウンタがつく前から来てくださっているそうで……ありがとうございます♪
ワテクシもブンジロ大好物です。公式カップリングですしー!!

このサイトにきていただいているブンジロスキーさまは、会話文のようなアホギャグをお好みかしらーなんて思いつつも、サクっとアホな話にしようと思ったら……確かにアホですが、ムダに長い…。

>無駄に長いのはいつものことでー



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