4/6小春Happy BirthDay!2014



4.練習中のヘタレ


『それではペアを組んでください。パートナーは自由です』

―よーしキテレツ、もう一回ペア組もうぜい。
―仕方ないですね。では丸井くん、行きますよ。
―ぶ、ブン太…
―桑原君、肩を落とさずに。一緒に組みましょうか。
―やぎゅー。お前がジャッカルと組んだら、俺はどうすればええんじゃ。
―仁王。お前はまだリハビリ中だろ、とっとと施設に戻れ。
―跡部の言う通りだよ。勝手に抜け出して、まったく……跡部、俺と組もうか。
―む?幸村、跡部と組むのか……ならば俺は…蓮二。
―すまない弦一郎。すでに貞治と組んでしまった。せっかくなので他校生と組むといい。
―じゃあ真田、僕とやらないか?
―えー不二、そっち行っちゃうの〜?俺どうしよー
―英二先輩は大石先輩と組むんじゃないんスか?
―大石くんはうちの南と組んだよ。てことでオモシロくん、俺と組まない?


丸井と木手、桑原と柳生、跡部に幸村、真田と不二、桃城に千石。
どんどんとペアが出来上がっている中で、平古場と甲斐、一氏と金色のように互いに意思疎通がバッチリな同校同士で組む二人も多数いる。青学と立海は『せっかくなので他校生と』というチャレンジ精神で、あえて他校生と組んでいる人たちが多いようだが、白石と財前、石田と遠山、特に深くは考えず近くにいた人で組んだら同校同士だった、と彼らは言うものの、大阪四天宝寺はほぼ同校で固まった。
残るは千歳と忍足(謙)なのだけど、九州からやってきた男は、同郷の親友のもとへと行ってしまい、千歳・橘ペアで出来上がっている。となれば、残る忍足(謙)は他校生と組むしかないのだが―


「ほら、謙也きゅん。はよ声かけてきなさいよ」
「…小春」
「どんどんペア増えてるで?早よせんと」
「あ、あぁ、せやな」
「さっきから同じとこチラチラ見とるやん」
「!な、何の話や」
「芥川クン」
「!!」
「一緒にペア、組みたいんやろ」
「お、俺は別に―」
「さっきからずーっと芥川くんのこと熱心に見つめて、『別に』はなぁ」
「誰があ、あ、あくたがわ、のこと見てるってぇ!?」
「言えてへんし。ああ、さっきから言うか、前からやな。最近ずーっと芥川くんに熱視線」
「ち、違う!」
「何が違うの。もう隠さんでええで?」
「お、俺はただ、ペア組む相手で―…っと、せや、侑士、侑士!あそこに侑士おるやん」
「……」
「侑士と組もう思って、探してただけやん」


確かに芥川の隣に忍足(侑)と向日ら氷帝メンバーはいるけれど『組もうと思っていた』というには随分と長いこと氷帝メンツの集まる一角を眺めていたものだ。いや、氷帝メンツというか謙也の視線はただ一人にのみ注がれていたし、その姿は最近よく目にしたものと同じなので誰を見ていたのかなんてわかりきっている。


「ほ〜ら、誘いに行きぃや、侑士クンでも芥川クンでもええから」
「あ、あ、芥川って」
「侑士くんでもええって。早よせんと」


徐々にペアが出来上がっているから、早くしないと組む相手がいなくなってしまう。
そういって謙也の背中を叩きながらも、暗に『貴方のお目当ての人、とられまっせ』と含ませる小春だけれど、当の謙也はじっと眺めるこだけで一歩踏み出すことすらできていない。
素直に認めてしまえば早いのかもしれないけど、核心をついた言葉をかけたらしどろもどろで否定してくるし、何もいっても『侑士が、侑士が』と従兄弟を盾に逃げてしまう。

―素直になればええのにねぇ。

そんな小春のしみじみとした呟きはあいにく届かず、じっと一点を見つめる瞳は熱い想いが見え隠れしている気がする。
…といっても、謙也は必死に否定して従兄弟に用事があるだけだ、と眺めていたのは金髪ではなく隣の黒髪!というのだろうが。


「「あ」」


『えー、ヤダ』
『ヤダやあれへん。跡部は幸村、岳人は菊丸、宍戸は神尾。他の皆ペアになっとるやん』
『えー、だからって何で忍足と…別の人と組むC〜』
『組むC〜ってお前なぁ。優しい侑士クンが組もう言うてるん…だいたいお前が組みたいのどうせ跡部、不二、丸井あたりやろ?』
『ぶー、丸井くんは木手、不二は真田ともう組んでる』
『せやから俺が』
『えぇ〜、せっかくだから別のガッコーの人と組むもん』
『お前と組む奇特なヤツなんておらんっちゅーねん』
『そんなことねーもん。ばーか、忍足ばーか』
『またこの子は。馬鹿はアカン言うとるやん!アホにしなさい』
『あーほ、あーほ、忍足アホタリー』
『キィィィ!可愛い顔してアホ言うんじゃアリマセン!』
『きもい眼鏡して可愛いとかいうなアホー』
『こら、キモイも禁止!』
『ぶー、うるさいC〜』
『反抗期やなぁ〜』
『誰がだアホめがねー。ほら、あっち行くよ』
『はいはいってな〜』
『で、ペア組んだらどーすんだっけ』
『ほれ、あそこのサブコーチに言いにいかんと。忍足芥川組ってなー』
『んー、じゃあ言ってきて』
『アホ。お前も来いっちゅーねん。皆、ペア申告してコートに振り分けられてるやろ』
『あ、ほんとだー。じゃあ行く〜』
『よっしゃ、忍足芥川ペアなー』
『芥川忍足ペアねー』


数メートル先で繰り広げられた氷帝生の漫才……もとい、ペア決めやり取りの一部始終を見守ってしまった四天宝寺の二人。
一人は普段からダブルスを組んでいる片割れと早々にペアを組んだおり、移動先のコートの指示も受けているのであとは移動するだけなのだけど。


「侑士クンに取られちゃったわねん」
「…お、俺は別に…ゆ、侑士と―」
「ほんなら『侑士くん、取れれたなぁ』に変えよか?」
「………」
「別に皆、他校生と組んでるんやし、謙也くんが芥川クンにペア申し込んでも、おかしなことなんてあれへんやろ」
「も、申し込むて」
「『ダブルスの練習、一緒にやろう』て一声かけるだけやん」


同じ選抜合宿で汗を流す同級生同士、ここでは同校のチームメートは関係なく二人組みでの練習や少人数でグループを組む際も、学校関係なくそれぞれチームになることが多い。そのため、四天宝寺生が氷帝生を誘ってもおかしなところは無いし、現に白石が忍足侑士に声かけたり、日吉と財前、宍戸と遠山、なんていう組み合わせでトレーニングしていることもあったため、忍足謙也と芥川が組むのは十分ありえることだ。普段あまり話さない相手だとしても、正面から『ペア組もう』と言われれば芥川もすんなり承諾するだろう。

そう、一緒にやりたいのなら、自分から言うべきであって。


「ドンマイやで、謙也くん」
「……何やねん」


遠ざかっていく従兄弟と芥川の後姿を名残惜しそうに眺め、思いっきり落ち込んだ顔しているくせに。

―素直じゃないわねェ。


どういう想いかはさておき、仲良くなりたいのなら自分から歩み寄ればいいのに。
せっかく従兄弟が氷帝生なのだから、利用……といえば言葉がアレだけど、輪の中に入れてもらえばすんなり仲良くお話できそうなのに。そう思わずにはいられない小春くんだけど、今のところ謙也くんはどもりながらも絶対に肯定しないので、まだまだこんな状態が続くのかもしれない。





>>学習室のシャイボーイ   >>目次


[ 88/116 ]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -