2.朝食会場の挙動不審な男 「あそこのテーブル、席空いてるわよん?」 「なんやいきなり」 「さっきからずーっとあそこ見てるし。隣、座ればええやん?」 「と、となり…」 「今度はどっちに用事なん?」 「は?」 「跡部きゅん?それとも侑士くん?」 「別に侑士に用事なんてあれへん。跡部も―」 「あー、ほなまた芥川くんやねぇ」 「っ!」 「…あらん、本当に芥川くんなん?」 「べ、別に、あ、あああ、あくた、がわ」 「何をそんなにどもることがあんねん」 「だ、だれも、…なんもない、何もない」 「……最近、なんかあったん?」 ある一角を凝視している挙動不審な四天宝寺生。 『怪しい人物』に加えて『挙動不審な男』か。どちらも共通点は、金髪の氷帝生? ―優雅なナイフさばきでフレンチトーストをカットしながら、フレッシュフルーツ、紅茶、ヨーグルトと順番に口に運ぶ帝王様。 ―秋鮭のグリル、白米、味噌汁、青菜のおひたし、ひじきの煮物、豆と根菜の炊き合わせ、と和食プレートな忍足侑士。 ―その二人と同じテーブルで、パンケーキをカットせずにそのままフォークをぶっさして、少しお行儀が悪いが端からかじりついている芥川慈郎。 この中で謙也が声をかけるとすれば従兄弟だろうが、いつもなら会えば『侑士、おはようさん』と声をかける彼が立ち止まり、従兄弟が座るテーブルの一角をじっと眺めている。その視線の先は、従兄弟というよりもその隣の金髪……? 「なぁ、朝ごはんまだやろ?」 「…ん?あぁ、今きたばかりやしな」 「侑士くんのとこ、1つ空いてるからそこお邪魔すれば?」 「な、なんでわざわざ侑士んトコ行かなアカンの」 「…よく一緒のテーブルで食事しとるやん」 「そ、それは、たまたま侑士んとこが空いてたり、侑士が隣きたりで―」 「今、侑士くんの隣、『たまたま』あいとるで」 「あ、あぁ、えっと…せ、せやなぁ〜」 「……おっかしいわねぇ。何やの?」 「あーあーっと、何でもあれへん、早よメシ食わな!あ、白石んとこあいてるから、そこ行く」 「あ、ちょっと」 「小春も、ユウジが呼んでる!ほら、あそこ、早よ行けや」 「…まぁ、ええけど」 踵を返し、そそくさとチームメートの白石と財前が座っているテーブル席へと向かいだした謙也の後姿を眺め、またも何だかなぁと思いつつ、ラブルスの片割れのテーブルへと向かう小春の朝だった。 >>大浴場前のヘンタイ >>目次 |