丸井くんの彼女2


金髪ですんごい盛った髪とど派手メイクに、ホットパンツからすらり伸びた長い足と高いヒールが印象的。
な割には言葉使いやお箸の持ち方がキレイで、礼儀正しいし料理も上手。
ベンチで昼にパン食べようとしてたら偶然会って一緒にランチしたけど、小鷹さんはお弁当と水筒持参で、聞いたら自分で毎日作ってるって。
彩りキレイですんごく美味しそうだったからついじーっと見ちゃったら、『食べる?』と言ってくれた。
小鷹さんの弁当とオレの昼ごはんのパンを交換してくれて、いただいたお弁当はすんごく美味しかった。
以前付き合っていた彼女に料理作ってもらったこともあったんだけど、彼女の手作り料理よりも、冷えた小鷹さんのお弁当のほうが印象深いくらい、美味しかったんだよね。

丸井くんと小鷹さん。
料理上手なカップルだな〜って思ったんだ。

(丸井くんは男友達には腕をふるうけど、彼女には料理やケーキは作らないらしいのが不思議)


どんなに小鷹さんがいい子でも、相手が丸井くんだから正直続くとは思えなかったけど、やっぱり別れてたんだ。
幸せそうに、嬉しそうに丸井くんのこと話してたんだけどな……

丸井くんも、どうしてこんなに早く別れちゃうんだろう?
そりゃ、人の付き合いのことだから口出すなんてしないし、丸井くんはかっこいいし面倒みてくれるし、料理作ってくれてケーキも焼くし。
落ち込んでたら慰めてくれて、飲みにいけばどんどん会話をリードしていつのまに店の人とも仲良くなるし、男連中の間でも人気あるし、サイコーな友達なんだけどなぁ。

どうして女の子に対して……というか、自分の彼女にはそっけないんだろう。

いや、これじゃ語弊があるのか。
誰かと付き合うからって、丸井くんが変わるわけじゃない。
明るくて面倒見がよくて、かっこよくて、話が面白くて、、、、と、彼女たちが惚れた丸井くんはそのままだ。
だから、彼女たちは丸井くんとのデートはとても楽しかった、と思い出話をしみじみ語ってた。

ただ、圧倒的に二人でいる時間が少なくて、一緒にいる努力をしないし彼女を優先しない。
彼女との時間を過ごさなくても平気で、丸井くんから『会いたい』と言ってくれることも無くて、彼女たちだけが丸井くんを好きみたいだと。
一緒にいれば優しくて明るいし、夜はそれなりに過ごすんだけど、毎回彼女たちから誘わないとデートにもならない。
ただ好きだったときは付き合えるだけでいいと思っていても、いざお付き合いをすると丸井くんのそんなところに耐えられなくなって、……で、別れになるんだ。


なんで丸井くんは彼女と一緒にいたいって思わないのかな。

丸井くんが彼女と長続きしないのは高校時代からのことだし、仁王やジャッカルも『とっかえひっかえだった』と言っていた。
でも、高校時代はそれでも彼女と一緒にイベント過ごしたり、休みはデートしていた気がするんだよね。

今みたいに自分から誘わず電話せずメールせず、バイトと男友達優先!な人でも無かったんだけど……



「ま、いいや。この話は終わり!」


…丸井くんが始めたんでしょ。
まぁ、こうやって話し出して、自分のタイミングで切り上げるのはいつものことだけど。



「なージロくん、今度の日曜さ、打ちにいかねぇ?」

「バイトは?」

「オーナーの仕入れに店長とシェフもついていくから店休になった」

「じゃ、跡部んとこ行く?」

「ATOBEジム?豪勢だな〜」

「今、越前が日本にいるからさ。連絡してみる〜」


越前は十代のプロテニスプレイヤーとして世界を転々としているんだけど、跡部んとこがスポンサーの一つとしてサポートしてるんだよね。
オレは趣味の一環としてテニスを続けていて、たまに跡部のジムで打つこともある。
(跡部が自由に使わせてくれてるんだC)
それで、たまたまジムでランニングマシーン使ってたら、入ってきた越前と目が合ったってわけ。
オレは越前だと気づかなかったんだけど、あっちは覚えていたみたい。

『ジローさんでしょ?』

声かけてくれて、一緒にコートで打ち合った。
さすがにプロだしいくつか大会で優勝もしていて、若手では一番台頭してきている選手だから敵うはずも無いんだけど、それでもすんごく楽しかったし、あっちも面白そうに相手してくれた。

それが切欠でアドレス交換したら、越前が日本に帰国するたびに連絡くれるようになったんだよね。
だいたいが跡部のジムで会って、一緒に打つんだけどさ。
普段は海外の大学に行っている跡部がたまに帰国すると、偶然越前が日本にいることもあって、そういうときは跡部もラケット握ったりする。



「越前…って、あの青学の?」

「今はプロだけどね」

「連絡取り合ってンのか?」

「あれ、知らなかったっけ」


2年ほどになる、プロになった越前との奇妙な交流を伝えると、………あれ?無言??


「……会って、何してんだ」

「なにって、テニスだよ?」

「打つだけ?」

「うん。あっちも忙しいし」


調整を跡部のジムでやってるときにオレとちょっと打つだけだし、その後は……そりゃ、一緒にご飯たべにいったこともあるけど、あっちは取材や何やらで結構忙しい身。
拠点が海外だから、たまに日本に帰国するとテニスでのプレー以外の仕事が殺到していて大変だと言っていた。



「さっすがプロだし、プレーはぜーんぜん敵わないけどさ。楽しいよ?」

「…だろーな」

「じゃ、メールしてみるね」


早速越前にメール!
が、携帯をいじっている手元をじっと見つめる丸井くんの視線が少し気になる……けど、丸井くんも強い人と打つの好きだし。
同じくプロテニスの道に進んだ後輩・切原の最近の活躍も嬉しそうに話すし、あっちが帰国したときは一緒にテニスしてご飯食べるもんねぇ。
オレらの周りだと、越前なんてかなりのレアキャラだし、一緒に打つ機会なんてそうそうないでしょ。
てっきり喜ぶかなーと思ったんだけど、意外に食いつきわるい?

あーだこーだ考えている間に、すぐに返信がきた。


「越前、オッケーだって」

「日曜、何時?」

「ん〜っとねぇ、オフだから、何時でもいいみたい」

「せっかくのオフ、俺らとテニスでいーのかよ」

「あはは、そうだね〜。ま、あっちがいいって言うから、いーんじゃない?」

「ふぅん」

「せっかくだから他にも誘おっか」


跡部はー…イギリスだから無理だしぃ。
不二くんや菊丸くんがいいかな〜?そういえば越前の先輩だしね。
大学でもテニス部で汗流してる宍戸も、きっと喜んで打ちたがるだろうし。
学生時代に大会で対戦した、日吉や千石?も誘えばきっと楽しいよねぇ。

あ、でも。
みんな越前と打ちたがるだろうから、次々に挑戦申し込まれてあっちが面倒くさがるかも。
想像できてちょっと笑えた。



「なージロくん」

「うん?」

「日曜、テニスした後って、どーすんの」

「どうするって」

「夕飯食う?」

「あぁ、そーだね。みんなでご飯でもいく?」

「皆…か」

「丸井くん、どーしたの」


さっきから、そのちょっとした『間』が気になる。

前もみんなでテニスして、ご飯たべてワイワイして、楽しかったじゃん。
丸井くんも大勢での飲み会やご飯会、大好きなのに。


「ん……何でもねぇ」

「そう?」

「あぁ」

「じゃ、適当に誘っとくね」

「おう」



視線をテレビに戻して、チャンネルを変えてザッピングしだして『いつもの丸井くん』になった。
なんだろう。
ま、いいか。


不二くんに菊丸くん、宍戸、と数人にメールを送って、返事を待つことにして、今夜は丸井くんの相手をつとめましょーかね。
携帯を充電器にさし、グラスにウーロン茶をそそいで、ソファに座っている丸井くんの隣に腰掛けた。
カチャカチャと何度もチャンネル変えてるのを見る限りは、特に見たい番組も無さそうだし。
レコーダーの電源をオンにして、録画した映画を再生させた。
丸井くんも前に興味もっていたヤツだから、大人しく観るでしょ。





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