まるいくんとジロ君のとある1日3




「先パーイ!こっちっス」
「あれ?赤也じゃん」



とき同じく、こちらすでに中華街に到着している立海組。

仲良く肩を並べて歩く仁王・丸井の視線の先に見えるは、中華まんの袋を3つ持っている中等部の後輩だ。



「おまえ、何してンだ?」
「え、何って…」
「ご苦労さん、赤也」
「え、仁王が呼んだのか?ってか、パシらせたのかよ」
「持つべきモンは、先輩想いの舎弟やの」
「誰か舎弟なんスか!」
「お!角煮まんじゃん!」
「あ、ちょっと、丸井先輩!取る前に、400円!仁王先輩もっス」
「あん?お前、金とる気かよ」
「あんた…どこのチンピラっすか。後輩からたかろーとするなんて」
「お前が自主的に買ってきたんだろぃ」
「だぁれが自主的に買うかー!!ってか、仁王先輩!!お代!ついでにおつかい代ももらいたいくらいっスよ!!」
「プリ。ふっ…後輩は先輩のためにパシるもんぜよ」
「うわ…真顔でサイテー発言ッス」


ずん!と仁王の前に手のひらを向けた切原。
さぁさぁ代金をよこせッッ!ついでにパシらせた手間賃も欲しいくらいだ!!


…とでもいいたげな切原だったが、目の前の仁王ではなく、隣の赤髪先輩が手のひらに1000円のせてきた。


「おつりは無いっスよ」
「200円はお駄賃とでも思っとけ」
「?仁王先輩の分込みっスか?え、オゴリ?」
「……あぁ」
「へ!?」


意外である。
このガム先輩が今まで、他人に食べ物をおごったことがあっただろうか?

いやいや、自分が入学した際に確かラーメンをおごってもらったことはあるが…

それにしても、ケーキやクッキー等のお菓子を作ってくることはしょっちゅうあったとしても、中華まんとはいえ他人に奢るなんて。


でぶん太先輩が、金髪のふわふわした可愛い他校生以外に奢った姿をほぼ見たことが無いゆえ。



「(仁王先輩l。丸井先輩、熱でもあるんスか?)」
「(ブンちゃんは今、大事な時期なんじゃ)」
「(なんスかそれ…意味わかんねーし)」




じつはカクカクシカジカってなわけでー






「ジローさんスか」
「連絡がとれんらしいの〜」
「この前は確か、携帯家に忘れてたんスよね?」
「その前は部室に置きっぱなし」
「でもって水没させたこともありましたね。充電切れに気づかないことも多いし」
「メールで返信ない時は、たいがい寝てるか充電切れやの」
「そうそう。この前もメールしてたら、ずっとすぐ返信きてたのにパッタリこなくなって。
後で聞いたら充電切れて充電器が見つかんなかったって言ってましたね〜」
「この前も、上映前にマナーモードに切り替えてたら、芥川は携帯自体を忘れとったの」
「映画行ったんスか?二人で?」
「ふっ…。ヤボなことを聞いたらいかん」
「デートっすか」
「そうとも言う」
「何見たんスか?」
「ドラゴンボールZ 神と神」
「え、あれ行ったんスか!?いいなぁ〜」
「芥川が試写会のチケット持ってたおかげでの」
「へぇ〜。俺誘ってくれればいーのに」
「試写会ハガキは2人までだから無理な話やき」



「おまえら…」


角煮まんを食べ終えた両手がわなわな震える。


「赤也!お前、なにジロ君とメールしてんだよっ!」
「へ?」
「勝手にメル友になってんじゃねぇ!」
「いや、俺いま、ジローさんにジョジョ借りてるし」
「俺抜きで会ったのかよ!?」
「そりゃ、たまに会いますけど。俺もいま、ジローさんにCAPETA10冊貸してますし。
…って、睨まないでくださいよ。しょーがないじゃないッスか。
先輩、漫画もってねーし。俺いっぱい持ってるし。ジローさん漫画好きだし」
「俺に貸せ!」
「は?」
「俺からジロくんに貸す!」
「はぁあー?!なぁに言ってんスか!!俺の漫画本だっての!」
「うるせぃ!彼氏不在の間に勝手に会ってンじゃねーよ!」
「あんた、どこのジャイアン…」


ジロリと後輩を睨む丸井。
…この目は本気だ。。。。とかれこれ2年以上のお付き合いなので、赤髪先輩の本気度もわかるってもんだ。



「つーか仁王!」
「プリ」
「プリじゃねぇ!おまえ、いつジロ君と映画行ったんだよ!てか何で行ってんだよ!!聞いてねぇし!」
「言ってないからの」
「言えよ!つーか、なんで一緒に行ってんだよ!!」
「映画館の近くで偶然会ったからナリ」
「いつだよ!?」
「ブン太が家族で遊園地に行った日だったかのー」
「!!」



そう、あれは先月のこと。
小さい弟たちの要望で家族で遊園地にいった丸井家。
そして、たまたま一人、ウィンドウショッピングなのか通行人観察なのか、何なのか。
とりあえずブラブラしていた仁王雅治は、同じくブラブラしていた芥川慈郎とばったり会った。

聞けば、試写会のハガキを近所のお兄さんからもらったとのこと。
映画は普段寝てしまうからあまり見ないが、アニメだったので見に来た。
ハガキは2名様までokだが、あいにく隣人の幼馴染はスケボーに行ってしまい、別の幼馴染はストリートテニスに行ってしまった。
兄も妹も用事で不在。
その日に限って誰もつかまらず、脳裏に浮かんだ丸井ブン太は、、、そういえば家族で遊園地、弟’sが楽しみにしていると言っていたことを思い出した。


じゃ、まぁ。
一人でもいっか。


…と、ついた映画館の前で、バッタリ知り合いに会ったので、話の流れで一緒に見ることになったんだとか。



事細かに先月のデート内容を話す仁王に、米神をひくつかせつつ、、、


「ちょっと待て」
「なにかの」
「100歩譲って映画はわかった。もらった試写会ハガキに罪はねぇ」
「面白かったぜよ。映画見て一喜一憂するジロちゃんが」
「ヲイ…」
「天気も良くて、いい散歩日和だったナリ」
「それがおかしいだろ。映画はともかく、なんでその後、移動してんだよ!」
「ジロちゃんが休憩希望したからかの」
「そのへんでスタバでもタリーズでもなんでも入ればいいだろーが。
なんて自由が丘に移動してんだよ!!」
「行きたいセレクトショップがあったからじゃき」
「ジロくんをつきあわせんじゃねぇよ!」
「付き合ってくれると言ったのはジロちゃんぜよ」
「…そんで、なんでケーキショップなんだよ!お前、甘いのそんなに食わねぇだろ」
「ジロちゃんがモンサンクレール行きたいって言うから、つきあっただけナリ」
「モンサンクレール…」



(そ・れ・は、ジロ君じゃなくて、俺が行きたいところだろい!!
ていうか仁王が黙ってたのはともかく、ジロ君!!なんで言わねぇんだよ。
二人でデートだと!? 俺、聞いてねぇ!!)




男同士の友達で遊びにいくのは、まぁ、普通にあることなのだが…




丸井は、どこまでも狭量な男だった。(ジロくん限定)















その後は、というと…




切原が日日華の角煮マンをパシってくれたので、そこには行かずに済んだのだが、、、
江戸清の肉まんを食べて、
(3人仲良く完食!)

パンダまんを食べて、
(仁王は辞退)

試食をしまくって、
(切原と丸井。仁王は眺めてただけ)

杏仁豆腐で癒されて、
(切原と丸井)

仙草ゼリーでミネラルを摂取した気になって、
(切原はその見た目にパス!丸井はもちろんだが、珍しく仁王も食べた)

愛玉子でサッパリして、
(切原と仁王はパス!丸井のみたいらげた)

中華そば、海鮮焼きそば、おこげ、、、、、を我慢して。
(切原は食べたがっていたが、丸井が店に寄るのを許さず。仁王は肉コースが待っているため当然パス。
丸井は……

だって今夜は腕によりをかけてジロ君にご飯つくるんだ!

ということでパス)

ーまぁ、上記メニューを平らげても、夕飯は夕飯で食べれるのだが。
(大食い選手権にスカウトされたほどの立派な胃袋の持ち主のため)



  
「うっぷ……俺、もう食えねーっス。肉まん系と甘いもんばっかし」
「ブン太…どこまで行くんかの」
「海鮮焼きそばはダメで、デザートオンパレードはいいって、何なんスかね。。。」
「諦めんしゃい」
「はー、お茶したい。休憩したい。座りたい。胃を休ませたいっす」
「ブン太の胃が落ち着けば止まるぜよ」


「あとどーすっかな〜。
マンゴープリンと黒ゴマプリン、カスタード饅頭と牛乳寒天あたりいってみっか」


「…なんか、止まりそうにないんスけど」
「……プリ」


「赤也、お前もういいのか?」
「もう食えないですって」
「男だろい!」
「まんじゅうとプリンで腹たぷんたぷんっスよ」
「ブン太。ちょっと休憩せんか」
「あん?まだまだこれからだろい」
「…俺、どっか座りたい。つーか、なんか飲みたいっす」
「ん?そーか?しゃーねぇな」



じゃ、一息つくか。



と、何度か行ったことのあるカフェへ向かうことにした。
だって、そこにはタピオカ系のミルクティ数種類はさることながら、マンゴープリンも黒ゴマプリンもカスタード饅頭も牛乳寒天もあるから。




カフェの2階はイートインになっており、毎回座る角のテーブルに腰掛ける。
テニスバッグをおいて、メニューを眺める双眸は真剣そのもの。(約1名のみ)
対する切原と仁王はお茶のみと決めているためか、『今月のおすすめ茶葉』をチラ見し、ソッコーで決めたようだ。



『ご注文はお決まりでしょうか』



「凍頂ウーロン茶で。……あーもう、胃をスッキリさせたいっすよ。。。」
「桂花紅茶、ポットで」
「あ、凍頂ウーロンはホットの方で頼んます」
「珍しいの。ホット飲むとは」
「胃が落ち着かないっス。。。あったかいので消化させたい。丸井先輩は?」

「…う〜ん、やっぱり、、、

マンゴープリンと黒ゴマプリン、カスタード饅頭、牛乳寒天、豆花(大)の黒蜜きなこ、ココナッツプリンとー」


「まだ食うか……つーか、増えてるし」
「底なしの胃袋ぜよ」


「で、飲みモンはバブルミルクティ(特大)、タピオカおおめで極甘プラス!」


「うへぇ。極甘…」
「糖分過多じゃき」



『豆花(大・2〜3人前)は取皿お持ちしましょうか?
それとも、今回も一人でお召し上がりになられます?』



「あー、お前ら、食わねーよな?いらねぇだろい」
「この人だけ食うんで、俺らはいーっス…(今回『も』って…)」


『かしこまりました』


「あ!」


『「「??」」』


「やべっ…仙草ゼリーの店に、エッグタルト置いたままだ!」



試食をしまくっていた時に、『ジロ君へのおみやげ』と称し、エッグタルトをテイクアウトで購入していたのだが、、、
次に入った店で仙草ゼリー・愛玉子・杏仁豆腐を楽しんだ後、店にそのまま忘れてしまったらしく。


「ちょっと取りにいってくる!」
「…行ってらっしゃ〜い」
「おう!すぐ戻ってくるぜぃ!」


バタバタバタバター!!



あれだけ食べたのを微塵も感じさせない軽やかな足取りで、風のように去っていった丸井でぶん太…



『あのー、、、ご注文はそのままお持ちしてもよろしいでしょうか?
それとも、お戻りになってからのほうがいいですかねぇ』



きょとんとしているのは店員さんである。



「あー…いーっすよね?もってきてもらっても」
「そうじゃの。さっきん店も近くじゃったし」
「そのまま一緒に持ってきてくだサイ」


『かしこまりましたー』



店員さんはそのまま1階に戻っていった。




『あの赤い髪の子、やっぱりよく食べるわー。
この前きたときも、プリンだけで5種類以上食べてたのよねぇ。
そういえば今日は金髪の子と一緒じゃないのね』


バイト中のお姉さんの中で、丸井は常連ーとまではいかないが、特徴的なので顔を覚えている客だ。
赤髪と金髪の2人(たまに金髪じゃなく、日焼けした外国人の子とくることもある)、と容姿でも目立つのはもちろん、
何よりもオーダーの量で毎回目立っているため、ある意味カフェでは有名人なのである。



『せんぱーい、オーダー入りま〜す』
『あの子、今回は何品なの?』
『ふふ。今日は普通ですね。いつもの量に比べれば』
『一緒に来てた子は初めてかしらね』
『そうですね〜。見たことないかも』


と、カフェの店員さんに、そんな会話が交わされるほど。



ばたばたばたばたーっっ!!



『い、いらっしゃいませ〜』


「はぁ、はぁ、はぁ…」


『(あ、金髪フワフワちゃんだ。やっぱり待ち合わせだったのね)
お召し上がりでよろしいでしょうか?お連れー』

「ーあ、あの、…はぁ、はぁ、っ…」

『だ、大丈夫ですか?』


「あ、すんませ…はぁ、つっかれたー……」


『(お水出したほうがいいかしら。)』


「ふー。えーっと、ちょっと人探してるんですけど、
オレとおんなじくらいの背で、テニスバッグ持っててー」


『あ、いつも一緒にいらっしゃる方ですよね?赤い髪の』


「!そ、そうです!その人!!今日ここにきませんでした!?」


『さきほどご来店されてー』


「やったぁ!!見つけたしぃ〜!!」


『(C…?) …なんですけど、たったいま出ていかれてー』


「えぇぇええ!?もう出ちゃったのー?!うっそぉ…すれ違いだしぃぃ。。
お姉さん、ありがとー!また今度来きます〜!

まるいくん……江戸清だ、きっと!!」


『お連れ様もいらっしゃいますし、すぐ戻られるみたいですけどーって、あ!ちょっと!
ねぇ君、ちょっと待って!!』




ばたばたばたばたーっ!!



『……いっちゃった』




台風のように去っていった、金髪フワフワっこの後姿を見つめーって、一瞬で消えてしまったけれども。
ぽかんと、唖然とする店員さんだったが、すぐに聞こえてきた階段を下りてくる音に振り返ると、そこには赤髪大食いちゃんのお連れ様が。



「あれ?いま、ジローさんの声がしたのに」
「おらんの」



『(ジローさん…あの金髪フワフワちゃんのことかしら)』



「あの〜、すんません」
『はい』
「いま、ここにジローさん…あ、えーっと」
「お姉さん、今ここに誰かこんかったかの」

『……「まるいくん」、ですか?』

「え?あ、丸井先輩?じゃなくてー」
「芥川、きたようじゃの」
「へ?」


『ラケットささったオレンジのリュックに、茶色いブレザーで、金髪フワフワのー』


「ジローさんだ!!」
「じゃな。…が、いないぜよ」


『たった今、いらっしゃったんですけど…』



かくかくしかじかで。



こちらが説明する前に出て行ってしまったのだ、と軽く説明を受ける。
その場で切原はジローに電話をかけるが、やはり『電波の届かないところにおられるか電源がー』
で、繋がらない。

それならば!と仁王も丸井携帯を呼び出すが、こちらはなぜか2階から着信音が聞こえてくる。


置きっぱなしにしてったんかい。




『あ、でも出て行く前にー』




「…江戸清?」
「ブン太が行きそうなところ、で江戸清か」


「「・・・。」」


「俺、行ってみましょーかねぇ」
「…携帯持っていきんしゃい」
「了ー解っ!じゃ、ちゃちゃっと見てきますね。ついでに丸井先輩、呼んできます」
「おう」



ーしょーがねぇ。後輩のつとめっすね
(パシリじゃねーぞ?舎弟でもねーぞ!)



切原赤也、中学3年生。
すれ違っている、先輩と可愛いあの人のために。
行ってきます!!




『……皆さん戻ってきてからにー』
「いんや、たぶんすぐ来ますんで。出しちゃっていいです」
『気持ち遅めに持っていきますね』
「ありがとうございます」



一人になった仁王のみのテーブルに、あれだけの量が並んだらそれはそれで、注目の的だろう。

お姉さんの優しさに感謝しつつ、ゆっくりとした足取りで2階に戻る。
テーブルからは外の景色が見えるので、さて、誰から戻ってくるか眺めるとでもしようか。







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