まるいくんとジロ君のとある1日4



果たしてジローは……見つかった。



江戸清にダッシュした切原だが、そこに可愛い人の姿はなく。
店員にジローの特徴を言い、『ああ、その子なら、パンダまん!!て叫んで走って行っちゃったよ』で、次のパンダまんの店にいった。
そして、

『ああ、その子ならフカヒレまんがー』

『ああ、たまに来る金髪のふわふわした子でしょ?
いっつもは赤い髪のよく食べる子と来るんだけどねぇ。
甘栗だ−っ!!って、走ってー』

『ああ、ジローくんだよね。さっききたよ。でも、ブン太くんと一緒じゃなかったからー』


…と、延々とジローの軌跡を辿り、ようやく後姿を見つけ、捕まえた。



『ジローさんっ!!』

『へっ?』

『やっと見つけたっす!』

『…あかや?なんでここにいんの?…あ、もしかして?』

『丸井先輩も一緒ッス』

『本当ーっ!?…わぁぁぁ〜、よかったよぉ〜』



(役得だぜ…)



満面の笑顔で、切原に抱きついた。


そのままジローの手を引いて、カフェへ向かい歩いていたら、、、
(嫌がらず手を繋いだまま隣を歩いてくれた)






「おいコラッ、赤也、てめぇ!!ジロ君に何してやがるッッ!!」




エッグタルトを取りにいったはずなのに、何故か甘栗の袋と、ソフトクリームを食べているガム先輩と再会した。



(聘珍樓行ったのか……つーかこの二人。ていうかジローさん、見事に丸井先輩のルート辿ったな)



「まるいく〜ん、やっと会えたしぃ!!」

「ジロくん!!」

「まるいくんっ!!」


切原と繋いでいる手をバッサリぶった切って、往来もなんのその、丸井はジローをガシっと抱きしめた。


「…あんたたち、ここは天下の往来ですよ。アホ目立ちしてるっつーの」

「うるせぃ」

「…ちょっと恥ずかしいC」

「ほら、仁王先輩も待ってますし」

「におくんも一緒?」

「あそこのカフェにいるッス」

「……あ、ほんとだ」



ジローが見上げた先に、おなじみカフェの窓から手をふる仁王の姿が見えた。
両手をあげてぶんぶん振り返すと、今度は投げキッスをしてきた。
面白がって、こちらも投げキッス!で返そうとしたら、丸井がジローの手を掴みー



「ジロくん、手ぇさげろい」

「え?」

「仁王に愛想ふんの禁止」

「ただの挨拶だしぃ」

「挨拶禁止」

「におくんが先に手ふってくれたから、返しただけだよ?」

「でも禁止。キス禁止」

「キスじゃないしぃ〜」

「しようとした」

「…もぉ〜」

「心狭すぎッスよ、丸井先輩。だいたいキスっつっても、単に仁王先輩が投げキッスしてただー」

「ワカメはだまってろい」


「…は?
………なんですって?!」


「もじゃがいーのかよ。あん?」

「んだと!?あんた、俺が今日どんだけあんたらのために動いてやったとー」

「たのんでねーなぁ」

「!!こんの…」

「ちょーっと、ストップ!すとっぷだしぃ」


言い合いを始めようとした丸井と切原をさえぎり、双方に軽くでこピンをくらわせた。



「まるいくん。言いすぎ」

「…」

「ごめんね?あかや」

「…いえ、ジローさんが謝ることじゃねぇし」

「ほら、まるいくん?」

「…ジロくん」

「うん。あかやのおかげで会えたんだC」

「……偶然だろい」

「こーら!」

「………ごめん」

「オレにじゃなくて、あかやに…ね?」

「……俺以外の男と手ぇ繋いじゃだめだろい」

「え?……あ、ごめん」
(跡部とかガックンとか、タッキーとか、よくやるんだけど…)


「ジロ君限定で心狭いの、知ってるだろぃ」

「うん… (オレだけってことないと思うけど……ケーキとか、ラーメンとか、お菓子とか、そっち方面も限りなく心狭いC)」

「…あかやと手繋いでた」

「あ、うん…」

「ジロ君」

「…はい」

「仁王にキスしようとした」

「…キスじゃなー」

「キスしようとした」

「……ごめんなさい」

「浮気禁止」

「…してないしぃ」

「罰として、今日は俺がいいって言うまで、チューって言ったらキスすること」

「ほぇ?」

「チュってすること」

「…えぇぇ?」

「『えぇ〜』じゃない!」

「……外でじゃないよね?」

「外はかんべんしてやる」

「ちゅーって…」

「ジロ君?」

「うぅ……」

「ジロ君がちゅーしてくんないと、今日のモヤモヤが…」

「まるいくー」

「だいたい携帯も繋がんねぇし」

「うっ…
(電車の中で充電しようとしたら、コンビニで買うのスッカリ忘れてたしぃ)」

「休憩中に連絡するっつってたのに、音沙汰無しだし」

「うぅぅ」
(それは…だって、充電がー)


「遠征は辞退できたのに、連絡網チェックしてなかったから当日ドタバタって。
立海なら真田の制裁モンだぜぃ」

「――もう、わかった!わかったよ。
(なんで丸井くんが知ってんだ?…まさか、ガックン、メールでー)」


「ちゅー?」

「…はぁい」

「ほら、ちゅーは?」

「……ここは外だしぃ」

「チッ」




切原を置いてけぼりでぽんぽん交わされるアホな会話…

(俺、帰りてぇ…もうやだ、このバカっぷる…つーか、赤い方)



とりあえずジローの「ちゅー」OKで、丸井の気分は落ち着いたようだ。
ため息をついてあきれている切原に、とりあえずジローに言われるがまま謝罪を述べる。





「赤也……………わりぃ」


「……………いえ。まぁ。」


(ジローさんのことになると、極端にヤキモチやきになって、狭量になって、どーしょもないってことはわかってるけどよ…
……人前でやるなっつーんだよ。)



「ねぇ、まるいくん。それよりも、におくんが」

「え?」

「ほら、あれ…」


ジローの指差す先には……



「あぁん!?あいつ…ッ、おいコラ、仁王ーッ!!」

「すっごいねぇ〜3人前くらいあるのに」

「ジロくん、ちょっ、俺、先に行ってるから!!」

「は〜い」

「すぐ来てよ?」

「はいは〜い」

「赤也!手ぇ繋ぐんじゃねぇぞ!」

「…ハイハーイ」

「にぃおぉぉぉぉおーッッッ!!」





豆花が入っていたらしい桶の底をこちらに見せて、ニッコリ笑う仁王がいた。




「まるいくん以外であれ一人で食べきっちゃう人、初めて見たしぃ」

「仁王センパイ……これから焼肉らしーんスけどね」

「おなか減ってたんかね〜」

「…嫌がらせッスよ」

「あ、そっか。今日29日だから、におくんの肉の日か」

「知ってるんスか?」

「うん。中学ん時に、一緒にシュラスコ食い放題行ったんだよね〜」

「へ?」

「行ったっていうか、兄ちゃんがバイトしてる店で、家族で食いにいったんだけど、そこで会ったの」

「…仁王センパイと?」

「うん。におくんと、におくんのお母さんとお父さんと、姉ちゃんと弟とー」

「ジローさんの家族と?」

「オレんとこは母ちゃんと妹と3人。ちょっと混んでたから、大テーブルで一緒に食ったんだよねぇ」

「……そのこと、丸井先輩は」

「…そん時は付き合って無かったから」

「……ですよね」




まだ、友達だったあの頃は、『シュラスコ食い放題だとぉ?!』と羨ましがられたものだ。
(が、そのあたりから丸井以外と出かけたり、遊んだりすることを少しずつ気にされるようになったことが、お付き合いの切欠といえなくも無い)







「ただ……におくんの弟と、オレの妹が友達になっちゃって」

「……で?」

「たまぁに、オレん家きたり」

「もしや、仁王センパイ込みで?」

「におくんの弟、まだ小学生だから一人でオレん家こさせるわけにもいかないしぃ」

「……まさか、その逆もあったり?」

「……可愛い妹が、目うるうるさせて『遊びに行きたいぃ!』って言うから、しょーがないんだしぃ」

「そのこと、丸井先輩は」

「…言えるわけないC」

「………ですよね」

「あかや、内緒ね?」

「……聞かなかったことにします」

「におくんも、ぜーってぇ黙っててくれるって約束だし」

「(…面白がって黙ってンだな)」

「はぁ〜、内緒にしとくのもいっぱいいっぱいだしぃ」

「はぁ」

「そもそも隠し事、苦手なんだよね」

「…誰も知らないんスか?」

「岳人は家が隣だし、一緒になって遊ぶこともあるから知ってるー」

ついでに、家が近い宍戸も、たまに一緒になる。
チビたちを親にまかせて、岳人、宍戸、仁王と近所のコートで打つこともしばしば。
ついでに青学の桃城や越前も偶然一緒になったりして、わいわい楽しくやったりもする。
跡部のコート借りて、ついでに仁王だけでなく柳生や柳といった立海生も増えることもしばしば。


ー本当ならまるいくんも誘って、一緒に遊びたいんだけど…


そうなったらズルズルと仁王+弟の芥川家訪問もバレてしまうわけで。
最初は隠すつもりもなかったけど、、、


ーにおくんが、『ブン太には黙っておいたほうがいいぜよ』って言うしぃ



「えっ…と、それは、つまりー」



(でぶん太先輩以外は知ってるっつーことですか)



「ジャコと真田は来たこと無いけど、知ってるかも〜」

「幸村部長はあるんスか?」

「この前の日曜きた。跡部んトコのスポーツジムでダブルス大会やったの」

「へぇ〜誰きたんスか?」

「氷帝からは跡部と忍足、岳人と宍戸。青学は菊丸くんと不二、乾、中等部の越前もきた。
立海はにおくんと柳、柳生と幸村くんでしょ〜、あと山吹中だった千石と〜、忍足んとこ遊びにきてた謙也くんと白石くんに、金太郎くんもいたな〜」

「元四天宝寺もっすか…つーか、すごいメンツですね」

「ちょー楽しかった!」

「次あったら、ぜってぇ俺もよんでくださいよ?」

「よぶよぶ!来てきて!!」

「丸井先輩もぜって〜来たがりそうですけど」

「…そうなんだよね〜。オレも、まるいくんと一緒にダブルスやりたいし、まるいくん相手にダブルスもやりたいし。
やっぱり言おうかな〜って思うんだけど、うまく言えるか自信ない…」

「すぐカァーっとなっちまいそうですしね」

「だよねぇ」

「仁王先輩ならうまく言ってくれると思うんスけど」

「でも、におくんが黙ってたほうがいいって」

「あー……大丈夫ッスよ。仁王先輩に言っときますよ」

「…まじまじ?」

「まじッス」

「あかやっ!!ありがとッ!」




再び喜び全開で抱きついたジローにほんわかしつつも、ふと見上げると…




鬼の形相で、左手にでっかいパフェを持って、右手でスプーンを握っている丸井がこちらを凝視していた。
その隣では仁王がにやにやと、面白そうにイヤ〜な笑みを浮かべている。





(恐ぇ……っつーか、また追加注文してるし)









「ジローさん……カフェ、行きましょーか」

「うん!」




身の危険を感じた切原は…とりあえず、カフェ1階のショーケースでバナナクリームパイと、バナナベリーシェイクを購入し、貢物を揃えて2階にあがった。

2階のいつもの角席には、たくさんの……空の器たち。
視界に入った切原に怒りの鉄槌を下そうと腕をふりあげたが、無言で差し出された大好きなバナナパイと、大好きなバナナシェイク。

『わかってんじゃねぇか!』

嬉々として受け取り、満面の笑顔でフォークを使うまでもなく、素手でわしづかみ。


「うめぇ!」



「まるいくん……すんごいしぃ」

「相変わらずとんでもない量じゃの」

「胸焼けするッスよ…」



あっという間にバナナパイを平らげた丸井は、隣に座るジローの肩をだき寄せー


「ジロくん、ちゅー」

「は!?」


目が点になったジロー、面白がっている仁王、そして…


(なるほど、確かに『外』じゃねぇからか…)


「甘いモン食って満足したろい」

「うん、まるいくんがね」

「ジロくんも見つかって、安心したし」

「うん、ごめんね」

「ちゅーの約束もしたし」

「うん……って、あれ、外ではしないってー」

「ここ、中だろい」

「えぇっ?」



(まぁ、建物の中っちゃ中ですけど…)
(客は俺らしかおらんしの)
(でも、外っちゃ外ッスよ…)
(気にしちゃいかんぜよ)
(気にするッスよ……お茶してて隣のテーブルのカップルがいちゃいちゃチューしてるとか、いやっしょ)
(俺は気にならんき)
(俺は気になります!)



目が泳いでいるジローの頭をガシっと掴み、『ちゅー』と繰り返す。



「ちょ、ちょ、ちょーっと待った!」
「待たねぇ」


そのまま抱き寄せて、あと数センチ…


「あ、こら!」

「うるさい」

「ねぇ、ちょっ、まるいく…、んッ」

「大人しくしろぃ」

「だ、ダメだって…ッ!!」

「往生際が悪い」

「いやいやいやいや」

「いやじゃねぇ。オッケィっつったろ?」

「す、すとーっぷ!」

「…ジロ君、いいかげんにしねぇと」

「…………な、なに?」

「口ふさぐぞ」




「え、うぁっ、……んっ…」





ぶちゅーっと盛大に、だめだめ!言う口をふさいだ。



(におくんも、あかやも見てるしぃー!!)






暗転










「ねぇ、仁王センパイ。…帰ります?」

「…そうじゃの」











(終わり)


>目次



*******************

紅綿のあんまんが食べたい。。。もう何年も行ってないな〜。


うちの基本的なカプ、まるいくん×ジロ君+プリ+レッドです。
まるいくんはジロ君しか目に入ってなくて、ヤキモチやきで心が狭い。
におくんは面白がってかきまわし、あかやがフォローしてヤツ当たりされるという。
基本的にまるいくんがアホなのでー


立海は湘南とかそっちのほうでしょうか?中華街、遠いや〜ん。
ワテクシ的設定ですと、まぁ立海と横浜の中間くらいがまるいくんの家で、氷帝は自由が丘とかそのへんに。(調布とかそっちの気もしないでもない。)
まるいくんとの待ち合わせはたいがい横浜かその先あたりなので、比較的に氷帝から行きやすいことにしてみます。
青学は三鷹とか府中か調布か…とりあえず京王線にでもしておきましょうか。それとも田園都市線ですかね。
いやいや、ストリートテニスで青学、氷帝、不動峰が揃うくらいですから、3校とも近いエリアなんですかねー。
つつじヶ丘、調布、府中にしてみましょうかね、京王線で。
あ。そうすると氷帝から横浜まで1本で行けないわー。やっぱり氷帝は東横線沿線がいいなぁ。しばらくは東横線という設定にしておきます。


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