B.切原赤也の葛藤3
切原の後姿が完全に見えなくなってから…
「やれやれ。やっと行ったか」
「うじうじしてると、蹴りたくなるぜよ」
「おいおい。ま、確かに、らしくねーよな」
明日、結果を聞かねぇと。さて」
「？」
何やらごそごそと、膝の上に置いていたらしい携帯電話を持ち上げ、耳に当てた丸井は、というと。
「…どーだった？」
『……』
「ブン太？」
「へへ。どうなるかな〜と思って、電話かけといたんだよな〜」
「まさか…」
「ぴんぽ〜ん！…おーい、ジロ君？もしもーし」
『……はいはーい』
丸井の側に寄り、耳を近づけてみると、聞こえてきたのはよく知った友人の声。
「わりぃな、赤也には黙っててくれよ？」
『…盗み聞きしてたなんて、言えないＣ』
「人聞き悪いな。たまたま聞いたくらいにしとけ」
『…で、これから赤也、来るの？』
「おう。泊まらせてやって」
『わかった』
「で、どーなのよ」
『…ん』
「ジロ君、わかってんだろい？アイツが悶々してたこと」
『わかってるっていうか…』
「抵抗ねーだろ？」
たとえ、相手が今までの彼女たちのように、抱くのではないのだとしても。
『抵抗も葛藤も、最初に告白されたときに散々したよ』
「オッケーの時点で、その先のこともわかってただろ」
『まぁね。それはそうなんだけど』
「躊躇することあんのか？」
「普通あるぜよ」
『あはは、そだね、仁王。
それもそうなんだけど……赤也が』
「「うん？」」
『まー、なんていうかー』
「「言え」」
『オレとしてはそーいう事になっても、まぁ流れだし。
覚悟はしてるんだけど、赤也がー』
「「赤也が？？」」
『毎回、途中で止まるっていうか、躊躇？するというか。
まぁ、赤也も初めてって言うし。
いつもこうだと、赤也はそんなにしたくないのかな？って』
「「・・・・・」」
『赤也はこういうこと初めてで、それが男ってのも結構なものだと思うんだけど。
ただ、キスはすんごくしてくるけど、それ以上しようとはしないから、抵抗あるのかなーって』
「（完全に裏目じゃねぇか）」
「（見事に誤解されとるの…）」
『それとも、赤也の「付き合いたい」って、プラトニックなことなのかな、って』
「なぁ、ジロ君。それはー」
『うん、わかってる。丸井くんのおかげでね』
メールがきた直後に、いきなりかかってきた電話。
『いまから電話するけど、喋んないで聞いてて』
とだけ。
メールも電話も、どちらも仲の良い友人かつ、恋人の先輩・丸井からのもの。
よくわからないまま取った電話から聞こえてきたのは、送信者の丸井だけでなく、よく見知った仁王、そして……切原。
切々と語られる切原の恋心〜心境を経て、すとんと何かが心に落ちた。
あのヘンな間や、毎回止まる行為の謎。
「赤也、頼むな？」
『ん。だいじょーぶ』
「可愛い後輩じゃけ」
『あははっ、言っとくね』
「で、どっちがどっちなんだ？」
『…それ、聞くの？』
「当たり前だろい。言え」
『赤也が抱きたいっていうならそれでいいよ』
「赤也…良かったのう」
『でも、抱いて欲しいっていうならー』
「「へ？」」
『オレがちゃんとするＣ−』
「「……」」
『なーんてね。じゃあね！準備しなきゃ〜』
ガチャ。
ツー、ツー、
「予想外の切りかえしぜよ」
「ジロ君、そっちもイケんだな…」
「「ていうか準備って、何のー」」
とりあえず、これ以上の詮索はストップしよう。
明日、切原の表情で判断すればよいことだ。
まさかの結果が待っているかもしれなが…
話題を今春のドラマに切り替えて、残りのトレーを片付けることにした。
仁王のトレーには飲みかけのアイスコーヒーが残っているだけだったが…
友人の残りは、あとは切原のポテトと、ハンバーグサンドだけだ。
それくらいなら一瞬で平らげるだろう。
彼の完食に付き合うことにして。
先輩2名は、そこから10分店内で過ごし、仲良く帰路についた。
後輩の行く末を思案しつつ、、、いや、明日の結果をちょっとばかり楽しみにしつつ。
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